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さる武器屋の英雄伝  作者: 上雛 平次
第一章 下克上とは緩やかに行うものである
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第一話 出会い

改正内容は、文章中に誤った表現を見つけましたので、その修繕です。

内容自体に変化はありません。

 現時刻は朝十一時。

 木製のベッドに横たわる銀髪の、癖っ毛を気にしている青年――ハイル・ライクスは、眠たそうな目を擦りながら起床する。

「あれ、まだ朝? ふぅ、お休みなさい」

 誰に話しかけているのかも分からない様子で、寝ぼけたハイルは時計を見るなり、再び毛布にくるまるのだった。

「なんだって、こんな……」

 ハイルは弱虫で、泣き虫である。

 そして、武器屋の主人でもある。

 魔神との戦いに供え、全国民は前線に赴く騎士のために様々な技術を獲得していった。

 ありとあらゆる魔法を学ぶ者。

 様々な道具を使役する者。

 魔神の配下にいる魔獣を操る者。

 そして、武具や武器を造る者。

 この世にいる全ての民は、全ての民のために行動していた。

 しかし、ハイル・ライクス――彼だけは、違っていた。

 自分には才能が無いとふて寝をし、一向に武器を造ろうとしない。

 更に驚くことに、武器屋の主人の癖に武器をまともに造ることが出来ないのだ。

 造れる武器と言えば、包丁よりも割と切れ味の良い、魔物などと戦うよりも調理器具に使った方が喜ばれそうな武器ばかり。

 周囲からも、「やっぱりモンキーは何をしても駄目だな」、と言われる始末。

 自分の腕に自信を失ってしまったハイルは、そうして武器を造らなくなってから半年もの間、先代が残した名のある武器を鉄に変え、それを売って生活していた。

 最早、情けないを通り越して清々しさを覚えるハイル。

 だけど、店を閉じることは無かった。

 いつか、先代を超える武器屋になる。学び舎で書いた将来の夢の作文の一行目は、そう始まっているのだから。

 今はベッドで寝ているハイルだが、一応、開店は済ませてある。

 扉が開けば、この部屋まで、客が来たことを知らせるシステムを取り付けてあるのだ。

 けれど、このハイルが経営する『モンキー武器屋』の他にも、武器屋は沢山ある。

 どうして、この国の王様は歩いて百歩もしない位置に同じ店を出すことを許したのだろう。モンキー武器屋は一世代前までは、王直々に武器を買いに来る程の名店であった。

 それが、今ではどうだ。

 百二十七代と続いたモンキー武器屋も、百二十七代目にして人気はガタ落ち。噂では、「猿でも扱える武器を安く提供してくれるお店」などと呼ばれている。

「在庫整理でもするかな」

 いつの間にか、昼になっていた。


 この木造建築二階建てのモンキー武器屋。二階にはキッチンや寝室、風呂場といった生活基盤が敷かれていて、一階は武器を造るための工場と販売所になっている。

 階段を降りて、販売所を見るが、商品は埃を被るばかりで売れる気配が無い。溜め息を一つついて、ハイルは工場へと入る。こちらは、大して埃は被っていなかった。

 そう、先代の武器を溶かすためにこの工場は使っていたのだ。

 両親は、物心ついたときにはいなかった。

 百二十六代目の親父。

 親父も、俺と同じく才能の無い部類の人間であった。

 夢を求める等と言って、武器造りなど覚える間も無く、母親を連れて旅立ってしまった。

 だから、その息子であるハイルが武器屋になるのは当たり前のことで、百二十五代目のお爺さんが一生懸命に教えてくれたのだ。

 だけど、駄目だった。

 ハイルの造る武器は、見た目は間違いなく武器なのだ。なのに、どんなに武器を造れど、すぐに折れてしまう出来なのだ。

 観賞用と呼べば良いのか、とにかく、実戦向きの武器は造れなかった。

 造れたこともある。十数年教わっていたわけだから、一つも造れないなんてことは無かった。

 それは、ハイルの部屋の棚に飾ってある短剣――つまり、ショートソードである。

 その剣を握り、城の近辺に這っていたスライムを五、六匹程狩った事があるが、壊れなかったのだ。他の武器は、触れただけで折れるか溶けるかしたのに、ハイルの造ったショートソードだけは折れなかった。

 今も、売ることなく残している。

 お爺さんの話に戻り、二年ほど前に他界し、ハイルはこのモンキー武器屋の百二十七代目の主人となった。

「鉄……いや、金属全般が無くなりそうだな」

 工場に隣接された部屋は、倉庫になっている。普段は、ここに鉄や器具など、武器造りに必要となるものを置いていた。

 どんよりとした暗い雰囲気が充満している。ハイルは窓を開き、深呼吸をした。

 正直に言えば、武器屋など継ぎたく無いと考えていたハイル。

 もっとやりたいことがあったのに、どうして武器屋なんだと怒りたかったが、怒るべき相手はここにはいない。

「また、武器でも溶かすか」

 その時である。

 鈴が、鳴った。

「!!」

 反応速度が早かった。

 壁に添えられた在庫表の紙に、「全て尽きそう」と荒い字で書くと、販売所に急いだ。

「い、いらっしゃいませ!」

 半年振りのお客様だった。

 が、すぐに明るい表情に靄がかかる。

 客の服装だ。

 貧しい外装と、貧しい容姿。全てが貧しいと思わせるのもある種の才能では無いのだろうかと皮肉たっぷりの感想を抱くハイル。

 しかし、目は透き通るような青で、泣きそうな顔でありながらも、ハイルを逃すことは無かった。

 本当に綺麗な瞳であった。

 あと、流れるような黒髪にも、惹かれた。

 そう言えば、お客様だけではなく、他人と話すのも久しぶりのような気がする。

 最近は、闘争が肥大化し、国民間でも張り詰めた雰囲気を漂わせていた。

 ふと、少女が手に、光る何かを握り締めていることに気が付く。

「だ、第十三地区十等騎士、リーナ・ミュード。だ、だけど、今だけは強盗なのです! こ、この店で一番優れている剣を……」

 その、明らかに成っていない扱い。姿勢。

 ――ハイルは跳躍し、少女の背後に回る。

 他にも、腕の筋肉から、多少の経験はあるにしても、実戦経験は無い素人であることが分かる。

 ――埃が舞い、少女は煙たそうに咳き込んだ。

 だから、制圧はいとも簡単に行えた。

「え、え?」

 驚いて、目を見開くリーナと名乗っていた少女。

 手に握られていた果物ナイフを奪い、空いている片方の手で少女の手を捻り上げる。

 この程度で折れる程、華奢な体では無いと思っているが、少々やり過ぎてしまったのかもしれない。

「う、痛い! 痛いよぉ! うぇええん!!」

 泣き出してしまった。

お初にお目にかかります。上雛平次うえひなへいじと申します。

OVL文庫大賞応募作にするために、急ピッチでの投稿になってしまい、駄文が目立ちますが、ご了承ください。


一日一ページの更新を目標に活動して参りたいと思います。感想や意見があれば、どしどしお願いします。

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