部屋の中の君へ
今日も彼女は窓際に立って外の風景を眺め続けている。手の届かない、外の世界を自分の方へ手繰り寄せようと……
僕はもう何年も、彼女をこの部屋の中に監禁している。
外の世界は危険が沢山だから、もしも彼女の身に何かあったら……、そう考えると、怖くて身が震えるような感覚に襲われる。
「君はこれを僕のエゴだと思うかい?」
問いかけても彼女をそれに応えることなく、窓の外を眺めて”ないて”いる。
「これはエゴではなく愛なんだ。誰よりも、何よりも君を愛しているから……」
それは彼女に対して、と云うよりも自分に云い聞かせるように、自分の行いを正当化するように口を出た言葉だった。
その言葉を聞いてか聞かずか、彼女は外の世界を求めて一層に激しく”なき”続ける。
この閉じられた部屋の中で彼女の目に映る外の風景は、桃色に染まる桜の木々は、照りつける夏の日差しは、山々を染める紅葉は、降り積もる白い雪は、まるで別世界の物のように思えることだろう。
僕はいたたまれなくなり、思わず目に涙を浮かべる。
すると、不意に彼女は悲しそうで、少し恨めしそうな瞳をこちらに向けた。
「にゃあ」