最終話「真相」
「だ、第一……実験……体?」
オレは氏神の元へ歩み寄る。
「そうだ。オレがこのV世界に初めてやってきた人間だ」
「どういう事だよ? お前、この世界は始めてじゃなかったのかよ!?」
「ここに来てから父さんとの思い出がどんどん溢れかえってきてさ。お前がこの世界を説明してくれた時、分かったんだ」
「まさか、あの出来事がこんなところで起こってたなんてな……。変わりすぎてたから全然気づかなかった」
氏神の顔は今だハテナで詰まっている。
「オレの父さんはこの世界のプログラマーだったんだ。今はどこにいるのか分からないけどな……」
「っ!?」
「で、プログラマーの息子のオレが、この世界に連れて来られたんだ。実験として。小三だと、自我はちゃんとしてるけど無垢だから、大人よりも実験しやすいって理由でな。……でも当時はそんな事全然思わなかった。そんなの、V世界に転送されてたなんて、小三で誰が考えるかよ? それで、その後何度もV世界にやってこさされたんだ。真実を知らなかったから、割と楽しめてたんだぜ」
そこまで説明すると、氏神が口を開いた。
「んなの……信じられっかよ……」
「まぁ信じなくても良い──」
しかし、オレの言葉をさえぎって氏神が続けた。
「と、思ったけど、だめだ。そうだといろんな事が辻褄が合う気がする……」
どういうことだ?
「あたしの親父もプログラマーだった。この世界のな」
ど、同業者……だと?
「だけど重大なミスをしちまって……今このV世界にデータとして凍結されてる」
「何だって? でもそれとこれとがどういう──」
オレの言葉をさえぎって発せられた、氏神の言葉にオレは驚愕する。
「だからァ、お前の親父さんもこの世界にいるんじゃねぇかって言いたいんだよ!!」
「!!」
「ここに来て親父さんの事がよみがえった──てのは、お前がここに来たら記憶がよみがえるよう予め設定されてたとして、でももしそれが政府に都合の悪い事だとしたら……さっきの化け物はバグでも欠陥でもなかった!!」
「真にお前を狙ってたんだ!!」
「え……?」
オレは言葉を失う。どういうことだか分からない。心拍数が上がる。
「お前の話が本当なら、そういう事になる!」
「でもなんでオレが知るって設定を政府は消さないんだ……?」
「何かわけがあるに決まってんだろ。……それが何かなんて、あたしたちは知る由もないがな」
……さぁ、どういうことだ。
「あたしは親父を"解凍"するために"VR"をやってる」
そうか、だからあの時、「協力なんてしてるつもりはねぇ」って言ってたのか!
「ふん……面白い。どうだ? あたしと一緒に、親父を探さねぇか?」
!
「もちろん、お前は"VR"じゃねぇからさっきみたいに追われる事になるけど──」
「それはつまり付き合うって事で」
「違ぇよド変態!! やっぱ二度とV世界にこれねぇようにしてやろうか!?」
ハハハ。痛いっす、氏神さん。
「心配したぞぉぉ我が親友ぅぅぅ!!」
学校へ行くなり、白富がオレに抱きついてきた。その後、一週間が過ぎ、オレと氏神は無事現実世界へと戻ってきた。V世界に行っていた間は、"行方不明"として扱われていたので、親やら警察やらいろいろ後処理が大変だったが、とにかくオレは日常に戻ってきた。
「お前が氏神と一緒にいなくなるから、心中でもしたのかと思ったじゃねぇかよ」
「心中はねーよ」
「で、何してたんだ? どうなってたんだ?」
「ん? 言えるか。氏神と二人で○○なんて言えるか」
「!!! テメー何した!? 何をした!?」
「そんな変な事してねーよ、変態!」
「う……?」
一週間前の、言い返してやったぜ。
「とにかく、オレは氏神を狙うことに決めた!」
「マジかよ……何があったんだ……なぁ三島さん」
いつの間にか三島が白富の隣にいる。
関係ない。
「さぁ、氏神はクラスどこだっけ?」
というわけで「仮想V-バーチャル-」完結です。ここまで読んでくれた人がいたら、本当にありがとうございます。
ちょっと世界観がつかめなかったかもしれないですが…。あと、良いお年を。




