第一話「次の相手」
2010年4月頃に書いたもの。どこかで見たことがあるような設定だったり、既存作の影響がありますが、書いてあるのでここにおいておきます。
放課後、体育館からは威勢の良い掛け声が聞こえる。部活動真っ只中。そんな雰囲気が漂う。
「あっ、あの……ごめんなさい!」
体育館裏で、彼女にそう返されオレは笑う。が、その表情は引きつったままだった。
「ん? あ、いや、良いよ! 大丈夫大丈夫……」
彼女はもう一度小さく「ごめんなさい」とつぶやくと、深くおじぎをしてそそくさとその場を去っていった。
「はぁー……」
オレは深いため息をつく。そして彼女とは反対方向──体育倉庫のほうへ歩きだした。体育倉庫前に着こうとしたその時、声が聞こえてきた。
「相変わらずふるわねーなー、秋吉聡一くん」
やや笑いを含めながらそう言った声の主は親友の白富康平だ。そして続けてこう言った。
「『数打ちゃ当たる』戦法は」
もちろんオレはムッとする。
「フン!」
「次はもう決めてんの?」
まったく、遠慮なく聞いてくる。
「うっせーなー。そんなすぐ切り替え出来ねーよ」
「まぁそりゃそうか」
そりゃそうだよ、まったく。はぁー。無理な気はしてたんだ。もしかしすると……ってな。もうここは一気に畳み掛けるしかないと、恒例の体育館裏に呼び出したわけだが、結果はご存知のとおり。
「ん?」
上方から足音が聞こえてオレは上を見る。体育館の外側にある階段だ。体育館の上には、"第二アリーナ"があり、そこで部活動を行う生徒が主に利用する。階段が外に付いているのは、非常用階段をそのまま利用しているからだ。中に階段を作ろうにも、そんなスペースは存在しない。だから代わりに非常用階段を利用しているのだ。
「お!」
オレは思わず声を上げる。
「よし、帰ろーぜ」
それを気にもせず帰ろうとする我が親友。オレは呼び止める。
「待て。どうやらここが噂のスポットらしい」
「……は?」
白富はそうつぶやいて、オレと同じ体勢になる。つまり、上を見たんだ。
チラリ。
都合よくあの子がスカートをひらめかせてくれた。うん、よく見えた。
「な?」
「なっ……アホか!」
みんな部活動だと勇んで向かう。だからつい階段を駆け上がってしまうんだ。そして、分かるだろ? 分からない? 経験不足だな。
「こんな事ばっかしてっから彼女出来ねーんだよ!」
「う……お前がそれ言うと説得力あるな……」
その理由は後ほど明らかになる。大体察してくれるだろうが……。
「それと」
白富が思い出したように付け加えた。
「次々と女を乗り換える男、メールの返信してこない、いろんな女子に色気を使う男…は、女子が付き合いたくないタイプらしいぜ」
ん?
「ソースはァ!?」
その答に、彼は即答する。
「オレの彼女」
「黙れイケメン!!」
「だってお前の事話したら──」
「話したのか!? 良いけど!」
「──大爆笑してさ──」
「おい! 笑うなよかおりちゃん!」
「おい、下の名前で呼ぶなァ!」
そんな言い合いをしていたオレたちの横をサッと通り過ぎた影があった。校門のほうへ歩いている。
「あ、アイツは……」
オレが名前を思い出している間に、白富が答を言う。
「えーと、氏神?」
「それだ。うん、あいつはどうなの?」
「えぇ!? 氏神はやめとけって……知ってんだろ──」
白富が説明を始めた。
氏神鈴奈。性格は無類の荒さ……らしい。らしい、なのは無口で誰もその本性は知らないからだ。たまに口を開いてくれると言えば、大抵はまるでヤクザのような受け答え。しかし運動・学業ともにトップクラス。別名「女帝」──さらに学校一のかわいさと評判だ。だが、それに犠牲になった男は数知れず……。
「よくもそんなにスラスラと出てくるな」
関心するよ。すると、白富は信じられない言葉を口に出す。
「かおりが言ってた」
な……!!
「また彼女か! ってか下の名前で呼んでんじゃねーかよ!」
「しまった。口が滑った」
「マジで呼んでんのか!!」
ショッキングだ……。うーん……。
「えー……で、もっとも謎なのが、氏神は二月に一度くらい、一週間程度行方不明になってるんだ」
次回予告:目を付けた彼女は氏神鈴奈!しかし彼女は実はとんでもなくて…?




