表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

先に

作者: t52m
掲載日:2026/03/28

繰り返す憧れの日々の中で、

自分のことだけ考えて生きると決めていた。

たくさんの人も、たくさんの思い出も、

進んだ先で、また会えると思っていた。


その報せは、悪友から届いた。





冷たい雨が三日も続いていた。

立ち止まったキミの頬を伝う雫が、

雨なのか、涙なのか、

確かめる勇気もなく、

焦点の定まらない遠くの景色を眺めていた。


もう戻れない、あの日。

戻ったとしても、たぶん同じだ。

オレの中にある、捨てきれない憧れ。

きっと結果は変わらなかった。


「ここが私の居場所だから……」

最後に残された、キミの強がり。

最後まで貫いた、キミの意地。


そして、もう二度と聞けない声。


あの時、

何か言えていたなら。

抱きしめられていたなら。


今も、キミと一緒にいられただろうか。

今も、笑い合えていただろうか。


初めて締めた黒いネクタイが、

罪の重さのように、首を締めつける。


「本当に、そこがキミの居場所だったのか」

我慢させるなら、オレがさせればよかった。

別の苦しみはあっただろう。

それでも、希望は持てたはずだ。


後悔。


祈ることも、

その場に立つことさえ許されず、

ただ立ち尽くす。

オレを見つけた彼女の友人の罵倒が、

罪として胸に刺さる。


彼女を犠牲にするべきだった。

オレのために、

彼女の一生を犠牲にしてでも、

側にいさせるべきだった。


後悔。


祭壇で微笑む彼女の写真は、

記憶の中の笑顔のままだった。

すっぽりと空いた時間。

そこに、オレの知らない笑顔はなかったのか。

苦しみも知らず、

オレは自分だけを見ていた。


気の抜けた日々。

贖罪の思いと、

ないがしろにしてきた憧れ。




時代遅れな一通の手紙が届く。

遺書にも似た、その最後の言葉。


「私の存在が、

あなたの憧れを止められないことは、わかっていた。

だから、あなたはあなたのままでいて」




また、憧れの日々が動き出す。

今日もオレは、自分のことだけを考えて生きる。

進んだ先で、

彼女の意地の答えに辿り着くために。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ