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蒼とゼロ  作者: 霧ぽ
第1章 欠たる器の反逆
23/26

21.決戦。

森の中央広場。

 焼き払われた更地で、Sクラス主力とEクラス精鋭が激突した。


「ここからは総力戦だ。小細工なしで消し炭にしてやる」


 ノアが吠える。アロイスは黒刀を抜き放ち、不敵に笑った。


「望むところだ。プランCだ!」


 ドォォンッ!


 戦場が弾けた。


「逃がしませんよ!」


 ユリウスが眼鏡を光らせ、指先から『誘導雷』を放つ。必中の追尾魔法だ。


「うおっ! 危ねぇ!」


 レオンは地面を転がり回避するが、雷は執拗に追ってくる。


「無駄です。君の回避ルートは計算済みだ」


「計算? 知るかよそんなもん!」


 ドンッ!


 レオンは木の幹を蹴り、物理法則を無視した急加速を見せた。アロイス直伝の変則ステップ。


「時間稼ぎにしかならないですよ!そんなもの!」


 レオンの口角が上がる。

 時間稼ぎ。それでいい。


「やーい!やーい!Sクラス様よお!当ててみやがれってんだ!」


「目障りよ、ゴミ虫ども!」


 エリスが扇子を振るう。


 ゴオオォォッ!!


 森の木々を根こそぎなぎ倒すほどの『暴風(ストーム)』が発生した。

 バーンとミナは、大木の陰に隠れてやり過ごすのが精一杯だ。


「ひぃぃっ! 出力がおかしいよ! あんなの当たったら消し飛んじゃう!」


 バーンがガタガタ震えながら叫ぶ。

 ミナも顔面蒼白だ。針を投げようにも、風圧が強すぎて届かない。


「……無理。勝てない」


「そうだね、勝てない! ……でも、『足止め』ならできる!」


 バーンは覚悟を決め、リュックの中身をぶちまけた

 大量の煙玉と、粘着液が入ったカプセル。


「行かせないよ、お嬢様!」


 ボシュッ! ボシュシュッ!


 辺り一面が濃密な色の煙に包まれる。


「小賢しい!」


 エリスが鼻で笑い、一振りの風で煙を吹き飛ばそうとする。

 だが、煙が晴れた一瞬の隙。


 ヒュッ!


 ミナが投げた針が、エリスの頬をかすめ、一筋の血を流させた。


「なっ……!?」


 エリスが驚愕し、防御の風を強める。


「わたくしの顔に傷を……! 許しません、挽き肉にしてあげます!」


 エリスの標的がアロイスから外れ、バーンたちに向いた。

 これこそが狙い。

 バーンが次々とガラクタを投げ、ミナが死角から針を放つ。

 エリスの暴風は圧倒的だが、チョロチョロと動き回る二人を捕まえきれず、イライラだけが募っていく。


(倒せなくていい……! 一秒でも長く、この怪物をここに釘付けにするんだ!)


 圧倒的な格上相手に、Eクラスの3人は必死の「遅延行為」を続けた。


一方、戦場の中央では、さらに激しい衝撃音が響き渡っていた。


「オオオオッ!! 消えろアロイスぅぅぅッ!!」


 ノア・ルバリオンが吠える。

 彼は魔術師でありながら杖を持たない。両拳に圧縮した爆炎を纏わせ、超近接戦闘を仕掛ける『爆炎の格闘者(バトル・メイジ)』だ。

 踏み込みと同時に放たれる拳は、岩盤すら粉砕する威力を持つ。


 ドゴォォォォンッ!!


 爆風が地面をえぐり、熱波が空気を焦がす。

 だが。


「……熱いな。少し頭を冷やしたらどうだ?」


 アロイスはその猛攻の中を、涼しい顔で歩いていた

 ノアの拳が顔面を捉える寸前、アロイスの姿がブレる。


(摩擦係数ゼロ――『滑走(スライド)』)


 氷の上を滑るように、最小限の動きで攻撃を回避。

 紙一重でかわされたノアは、空を切った勢いでバランスを崩しかける。


「チョロチョロと逃げ回るなッ!」


 ノアは激情のままに魔力を解放した。

 全方位爆破。回避不可能な面制圧魔法だ。


「これなら避けられねえだろ!」


 迫りくる紅蓮の壁。

 アロイスは逃げなかった。いや、逃げる必要などなかった。

 彼は黒刀を鞘に収めたまま、左手を前にかざした。


「避けはしない。……いなすだけだ」


 アロイスが手首を捻る。

 その瞬間、大気中のマナがアロイスの腕力によって強引にねじ曲げられた。


(古代魔法――『潮流(タイド)』)


 グンッ……!

 ノアの放った爆炎が、見えない巨大な渦に飲み込まれたかのように、アロイスの身体を避けて左右へと逸れていく。

 炎はアロイスの後方の木々を焼き尽くしたが、アロイス自身には煤一つついていない。


「は……!? 魔法を、素手で逸らした……!?」


「魔法頼みの大味な拳じゃ、僕には届かないよ」


 アロイスが一歩、踏み込む。

 その一歩は、ノアの反応速度を遥かに超えていた。

 懐へ侵入。


「がッ……!?」


「終わりだ」


 アロイスの掌底が、ノアの鳩尾に深々と突き刺さる


 ズドンッ!!


 内臓を揺さぶる衝撃。

 ノアは声もなく崩れ落ち、白目を剥いて地面に沈んだ。Sクラス筆頭が、手も足も出ずに完封された瞬間だった。

 障害は排除した。

 アロイスは振り返らず、さらに奥へ。

 そこには、最後の砦――Sクラスの旗を守る「守護神」が待っている。


 敵本陣。

 戦場の喧騒が嘘のように静まり返ったその場所に、一人の少女が優雅に椅子に座っていた。

 輝くような金髪と、翡翠の瞳。

 アリシア・ルクセリア。

 この国の第3王女。

 その魔力量は35,000。ノアすら遥かに凌駕する、正真正銘の怪物だ。


「……無茶をしますね、アロイス様」


 アリシアはティーカップを置き、悲しげに首を振った。

 彼女の周囲には、半透明の光のドームが展開されている。

 王家特有の聖属性魔法、『聖域(サンクチュアリ)

 物理、魔法、あらゆる干渉を拒絶する絶対防御の要塞だ。


「ノアたちを倒しても、この聖域は破れません。貴方のような『持たざる者』の暴力は、全て弾かれます」


 彼女の瞳にあるのは、敵意ではない。

 弱き者を守らなければならないという、無自覚で傲慢な「憐憫」だ。


「貴方は守られるべき弱者。……大人しく私の箱庭にお入りなさい」


 慈愛という名の拒絶。

 だが、アロイスは黒刀を構え、ニヤリと笑った。


「……『弱者』か。随分な言い草だね」


 アロイスは全身の筋肉をバネのように収縮させた。

 黒刀に、自身の全体重と、古代魔法による超重力を乗せる。

(質量変換――『偏重(ウェイト)』)

(固有振動数同調――『共振(レゾナンス)』)

 二つの古代魔法の併用(デュアル・キャスト)

 アロイスが振り下ろした一撃は、もはや剣撃ではない。隕石の衝突だ。


 ギチチチチチチ……!!


 光の壁と、漆黒の刀が衝突し、火花を散らす。

 アリシアの余裕の笑みが凍りついた。


「な……嘘……!? 私の聖域が、軋んで……!?」


「悪いけど、王女様」


 アロイスは歯を食いしばり、鋼鉄の筋肉を軋ませて無理やりバリアをこじ開けていく。


「僕は誰かに守られるつもりはない。……自分の足で立つと決めたんだ!」


 パァァァンッ!!

 ガラスが砕けるような音と共に、聖域が粉砕された

 光の破片が舞い散る中、アロイスはその勢いのまま旗を掴み取った。


「……勝負ありだ」


ウゥゥゥゥゥーーーーーッ!!!


 その時。

 演習終了を告げるサイレンが、森中に鳴り響いた。

 最強のSクラスが、そして王家の絶対防御が、魔力ゼロの「落ちこぼれ」に破られた瞬間だった。

 アリシアは腰を抜かし、呆然と目の前の少年を見上げていた。

 それは彼女が初めて見た、自分を守ろうとしない強く美しい獣の姿だった。

んん〜、、。


戦闘シーン苦手。

どうやって表現するのこれ。



誤字脱字、改善点などあれば教えていただけると嬉しいです。

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