0.1 産声
この世界では特別な目というものがある。
遠い昔、魔族と人族との戦いにおいて神に導かれし5人の英雄。
蒼
紅
翠
紫
黄金
上記の5つの目の色をしていたと言われている。
聖ルクセリア王国、筆頭公爵家イニティウム。
その歴史ある屋敷の一室で、産声が響き渡った。
「……生まれました! 元気な男の子です!」
医師が震える手で赤子を掲げる。
汗に濡れた母、シャーロットが安堵の息を吐き、父である公爵クロノが身を乗り出した。
「おお……! でかしたシャーロット! どれ、顔を見せてくれ!」
クロノが指を伸ばし、赤子の頬に触れる。
その時、赤子がゆっくりと瞼を開いた。
その瞬間。
分娩室を包んでいた歓喜の空気が、ピキリと凍りついた。
その瞳の色。
吸い込まれるような、透き通る「蒼」
それは、この国の誰もが知っている色だった。かつて魔族の支配から世界を救った伝説の五人――『黎明英雄』のリーダーが持っていたとされる、伝説の瞳。
「こ、これは……『蒼』だ……」
医師が膝をつき、震える声で祈りを捧げ始めた。
「英雄の再来だ! 奇跡だ! イニティウム家に救世主が現れたぞ!」
医師や侍女たちがざわめき、期待と興奮で部屋の温度が上がる。
彼は赤子の顔を覗き込み、破顔した。
「……よく頑張って生まれてきたな。偉いぞ」
ベッドの上のシャーロットも、穏やかに微笑んで手を伸ばした。
「ええ、あなた。……可愛い、私たちのアロイス」
アロイス・イニティウム。
それが、僕の名前になった。
世界中が僕に「英雄」の夢を見る中で、両親だけが 僕をただの「息子」として愛してくれた。
それが、僕の人生における、最初の幸福であり
そして「呪い」の始まりでもあった。
初めて投稿します〜。
見ていただけると嬉しいです...!




