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蒼とゼロ  作者: 霧ぽ
第1章 欠たる器の反逆
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18. 5年越しの君

新年あけましておめでとうございます!!

年末年始バタバタしていて更新できませんでした、、。


今日からまた書き始めるのでよろしくお願いします!


本校舎にある優雅なサロン。

 そこは、上位クラス(S•A)の生徒たちが休憩する場所だ。

 その窓際に、一人の少女がいた。

 栗色の髪をポニーテールに結い、鋭い眼差しをした美少女。

 彼女は平民出身でありながら、血を吐くような努力と剣術への執着で、Aクラス首席の座を勝ち取った実力者だ。


「ねえリリィ、また訓練に行くの?」


 取り巻きの令嬢が声をかけると、リリィは読み込んでいた魔導書を閉じて立ち上がった。


「ええ。まだ足りないもの」


 彼女の脳裏には、常に5年前の光景が焼き付いている。

 路地裏で自分を救ってくれた、フードの少年。

 魔法を使わず、ただの木刀一本で魔法使いをねじ伏せた、あの鮮烈な強さ。


『ただの通りすがりだよ』


(あの方にもう一度会いたい。そして、胸を張って並び立ちたい)


 その一心で、彼女は魔法使いでありながら身体を鍛え、近接格闘と風魔法を融合させた独自のスタイルを磨き上げてきた。

 今の自分があるのは、あの名もなき少年のおかげだ


「おい見ろよ、Eクラスのゴミどもが掃除してるぞ」


 窓の外を見て、男子生徒が嘲笑う。中庭では、Eクラスの生徒たちが罰則の草むしりをさせられていた。

 リリィは興味なさげに一瞥し、背を向けた。


「……他人のことより、自分の修練が先よ」


 彼女はEクラスになど興味はなかった。あの日出会った「彼」以外には。




 数日後の昼休み。学生食堂にて。

 Eクラスの生徒たちが、パン売り場の列に並び、肩身の狭い思いをしていた。


「おいEクラス! 邪魔だ、どけ!」


 Aクラスの貴族生徒たちが、列を無視して割り込んでくる。

 弾き飛ばされたレオンが床に転がった。


「痛っ……! おい、割り込みすんなよ!」


「うるさいなゴミ虫。パンなんか残飯で十分だろ」


 貴族たちが杖を抜き、魔法で威嚇しようとした、その時。

 すっ、とアロイスが前に出た。


(……指の一本でもへし折らないと分からないか?)


 アロイスが腰の黒刀に手をかけた瞬間。


「――おやめなさい。みっともない」


 凛とした声が響き、食堂の空気が凍りついた。

 人垣が割れ、リリィが歩いてくる。

 Aクラスの品位を汚す者を許さない、鉄の華。


「身分を笠に着て列に割り込むなど、言語道断です。下がりなさい」


「ちッ……リリィかよ」


 貴族たちはバツが悪そうに舌打ちし、散っていった

 リリィは小さく溜息をつき、倒れているレオンに手を差し伸べようとした。

 だが、それより先にアロイスがレオンの手を取って立たせていた。


「大丈夫か、レオン」


「おう、サンキュー。…いやぁ、人気者は辛いねぇ」


 リリィの鋭い視線がアロイスに向く。

 彼女は眉をひそめた。アロイスの胸元の『E』の文字と、腰の黒刀を見て。そして何より、先ほど一瞬だけ彼が放った、どう猛な獣のような気配を感じ取っていた。


「……あなたが、噂の『アロイス』ですね」


「有名人みたいだね、僕」


「魔力ゼロの異端児。……ですが、暴力的な解決はいけませんね。貴方、今斬ろうとしたでしょう?」


 彼女は真っ直ぐにアロイスを睨みつけた。真面目すぎる彼女にとって、アロイスのような得体の知れない力を持つ者は、秩序を乱す危険分子に見えたのだ。


「私はAクラス、リリィ。……あなたのその驕った態度私が正して差し上げます」


 彼女は白手袋を外し、アロイスの足元に投げつけた

 正式な決闘の申し込み。


「もし私が勝ったら、その危険な思想を改めていただきます」


 アロイスは落ちた手袋を拾い上げ、苦笑した。


「いいよ。じゃあ僕が勝ったら……そうだな、レオンに高いランチでも奢ってやってくれ」


 放課後。第3闘技場。

 AクラスのエースとEクラスの落ちこぼれの決闘を見ようと、多くの野次馬が集まっていた。


「行きます!」


 審判の合図と同時、リリィが動いた。


 シュンッ!


 風魔法による加速。

 速い。Aクラスの男子たちとはレベルが違う。

 洗練されたステップから繰り出される剣撃。魔法使いの動きではない。


 ガキンッ! キィンッ!


 アロイスは黒刀を抜かず、鞘だけでその連撃を捌き続けた。


「なぜ……! なぜ抜かないのですか!」


 リリィが焦りを見せる。本気で攻めているのに、まるで子供扱いされているようだ。

 一方、アロイスは確信していた。

 彼女の剣筋。

 重心移動、剣の振り方、呼吸のタイミング。

 それは教科書通りの綺麗な剣術の中に、独自の崩しが混ざっている。

 そしてその動きは……間違いなく、5年前の自分が路地裏で見せた動きだ。


(……嬉しいな。僕のあの時の適当な動きを、ここまで綺麗に昇華させるなんて)


 彼女は、あの日助けてくれた『名もなき剣士』の背中を追いかけてきたのだ。

 この5年間、どれほどの努力を積み重ねてきたのかその剣が語ってくれている。


(……なら、応えてやらなきゃ失礼だ)


 アロイスは鞘から手を離し、柄を握った。

 空気が変わる。

 リリィが全魔力を込めた、渾身の突きを放つ。


「はああぁぁッ!!」


 その切っ先が届く刹那。

 ドンッ!!

 アロイスが踏み込んだ。

 魔法ではない。彼女が憧れ続けた、純粋な脚力による加速。

 そして、摩擦を消して滑る歩法。


(『滑走(スライド)』)


 風を切る音すら置き去りにして、アロイスは彼女の背後へ回り込んだ。

 寸止め。

 黒刀を抜き放ち、納める。


 カチン。


 リリィのポニーテールのリボンだけが、ハラリと切れて舞い落ちた。


「…………」 


 リリィは動けなかった。

 敗北感よりも先に、強烈な既視感(デジャブ)が襲っていた。

 この踏み込み。この間の取り方。そして、背後からの優しい気配。

 あの日の少年と同じだ。

 彼女は震える手で振り返った。

 そこには、5年前と変わらない、蒼い瞳の少年が立っていた。


「……強くなったね、リリィ」


 その言葉で、彼女の中の鉄の華が溶けた。

 凛とした表情が崩れ、ただの少女の顔になる。


「あ……あなた……まさか……」


 涙が溢れ出る。

 ずっと探していた。Aクラスで孤立しながらも、追いかけ続けた理想の強さ。

 それが今、目の前にいる。


「剣士様……っ!!」


 リリィはその場にへたり込み、両手で顔を覆って泣き出した。悔し涙ではない。歓喜の涙だ。


「探しました……ずっと、あなたのような強さを目指して……!」


 アロイスはしゃがみ込み、ハンカチを差し出した。


「泣かないでよ、リリィ。……レオンにパン、奢ってくれるんだろ?」


 リリィは涙目でアロイスを見上げ、コクコクと何度も頷いた。

 その日、Aクラスの孤高のエースは消えた。

 代わりに、アロイスに絶対の忠誠を誓う、最強の剣士が誕生したのだった。

ちょっと期間開くだけで考えてること結構忘れちゃいました。

かなしい、、、



誤字脱字、改善点などあれば教えていただけると嬉しいです。

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