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蒼とゼロ  作者: 霧ぽ
第1章 欠たる器の反逆
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16.ゼロの証明

 王都にある、学生向けの安宿。

 寮が決まるまでの仮住まいであるその一室で、僕は王立魔法学園から届いた豪奢な封筒を開封していた。

 中から出てきたのは、厚手の羊皮紙が一枚。


 『筆記試験:満点』

 『実技試験:満点(ゴーレム破壊)』

 『魔力判定:測定不能ゼロ


 判定:合格。


 配属クラス:第1学年 Eクラス。


「……ふっ、やっぱりな」


 僕は羊皮紙をテーブルに放り出し、天井を仰いだ。

 予想通りだ。筆記と実技でどれだけ完璧な結果を出そうとも、「魔力がない」という一点のみで最底辺へと落とす。それがこの国の腐った物差しだ。


「Eクラス。……上等じゃないか」


 僕は窓の外、遠くに見える白亜の学園を見据えた。

 Sクラスのエリートたちは、魔力があるのが当たり前だと思って胡座をかいている。

 そんな連中を、泥沼から引きずり下ろし、鼻を明かしてやる。

 

「待っていろよ、天才ども。……すぐに常識をひっくり返してやる」


 同時刻。イニティウム公爵家の居間。

 父クロノ、母シャーロット、妹セナの三人が、アロイス宛に届いた「合否通知の写し」を囲んでいた。


「……学園の教師どもは、眼球のかわりにガラス玉でも埋め込んでいるのか?」


 父が眉間に深く皺を寄せ、低く唸った。

 静かな、しかし底知れぬ怒気が部屋を震わせる。

 母が心配そうに覗き込む。


「Eクラス…。魔力至上主義ここに極まれり、ですね」


「ああ。アロイスは筆記で満点を取り、実技であの岩塊を叩き斬った。その事実を無視して、ただ『魔力がない』というだけで最低評価を下すとは……。嘆かわしいにも程がある」


 父は、平民だろうが貴族だろうが、実力のある者は認める公平な人だ。だからこそ、息子の努力を否定するシステムが許せないのだ。


「……許せん。私が直接学園へ行って、理事長を問い詰めて……」


 父が立ち上がろうとした時、横から小さな手が伸びてきて、通知書を掴んだ。

 セナだ。


「わぁっ! 『合格』だって! やったぁ、にーにすごい!」


 セナは難しいクラスのことなんて気にしていない。ただ満面の笑みで、羊皮紙を掲げた。 


「Eクラスって、一番いいクラスなんでしょ? だってアルファベットの形が、王冠クラウンみたいでカッコいいもん!」


 その突拍子もない子供の理屈――Eを横に倒すと王冠に見える――に、張り詰めていた空気が緩んだ。

 父と母は顔を見合わせ、それから吹き出した。 


「……ハハハ! 違いない。セナの言う通りだ」


 父の表情から、険しい怒りが消え去った。


「そうだな。場所がどこであろうと、あいつはあいつだ」


 父は窓の外、王都の方角へ視線を向け、力強く言った。


「アロイスがEクラスにいるのではない。Eクラスに『アロイス・イニティウム』という怪物が降臨したのだと、学園中に知らしめてやれ!」



 数日後。

 王立魔法学園の講堂は、この国の縮図だった。

 最前列。ふかふかのベルベットの椅子に座っているのは、選ばれしSクラスの10名と、それに続くAクラスの生徒たち。

 彼らの制服は、金糸の刺繍が入った特注品で、照明を浴びてキラキラと輝いている。

 一方、僕たちEクラスの場所は、最後列の壁際だった。

 椅子すらない。立ち見だ。

 周囲にいるのは、縮こまった背中の平民や、自信なさげに俯く下級貴族の子供たち。制服も生地が薄く、どこか頼りない。


「……あーあ、腰痛くなりそ」


 僕が欠伸を噛み殺していると、前方から鋭い視線が飛んできた。

 ノア・ルバリオンだ。

 彼はSクラスの席から、わざわざ振り返って僕を見つけ、口の端を歪めてニヤリと笑った。口パクでこう言っている。


 (お似合いだぜ、落ちこぼれ)


 隣には、銀縁眼鏡を光らせるユリウス。彼は僕を一瞥しただけで、「興味なし」とばかりに前を向いた。

 そして、窓際で黄金の髪を輝かせているエリス・リーウェス。彼女だけは、無表情のままじっとこちらを見つめていた。

 壇上では、恰幅のいい学園長が演説を続けている。


「魔法こそが力! 魔法こそが正義! 諸君、己が魔力を磨き、国の礎となれ!」


 割れんばかりの拍手。Sクラスの連中は誇らしげに胸を張る。

 Eクラスの連中は、「どうせ俺たちなんて……」と死んだ魚のような目をしていた。


(……やれやれ。前途多難だな)


 僕はため息をつき、壁に背を預けた。


 式が終わり、教室へ移動しようと中庭に出た時だった。


「おい、待ちくたびれたぞ。イニティウム」


 行く手を阻むように立っていたのは、燃えるような赤髪の男。

 ノア・ルバリオン。

 その後ろには、取り巻きのようにAクラスの生徒たちが控えている。


「……久しぶりだな、ノア。相変わらず声がデカい」


 僕は立ち止まり、肩を竦めた。

 ノアは僕の胸元にある「E」のバッジを見て、鼻で笑った。


「傑作だな。四大公爵家の長男が、平民混じりの掃き溜め行きとは。親父さんが泣いてるんじゃないか?」


「父上は喜んでいるよきっと。『下から這い上がるのも一興だ』ってね」


「強がりを。……おい、聞いたぞ。実技試験でゴーレムを叩き斬ったらしいな」


 ノアの目が、スッと細められた。そこには侮蔑だけでなく、微かな警戒の色があった。


「まぐれ当たりか? それとも、サーカスで芸でも仕込まれたか?」


「ただの素振りだよ。……君こそ、測定器を壊して弁償させられたって?」


「ハッ! 俺の魔力が規格外すぎただけだ!」


 ノアは右手に、ボウッ!と巨大な火球を生み出した

 周囲の生徒が「ひぃっ!」と悲鳴を上げて下がる。肌を焦がすような熱気が伝わってくる。


「いいか、アロイス。剣遊びが多少上手くても、魔法の前じゃ無力だ。Eクラスでおままごとしてる間に、俺たちは遥か高みに行く」


 ノアは火球を握り潰し、火の粉を散らしながら僕に顔を近づけた。


「視界に入ってくるなよ。……目障りだ」


 強烈な圧力(プレッシャー)

 普通の生徒なら腰を抜かすだろう。Sクラス筆頭の魔力は伊達じゃない。


 でも、僕はニッコリと笑い返した。

「忠告どうも。…でも、気をつけた方がいいよノア」


「あ?」


「高く飛べば飛ぶほど、落ちた時に痛いからね」


 バチバチと火花が散るような睨み合い。

 そこへ、「行きますよノア。下賤な空気が移る」とユリウスが声をかけ、彼らは去っていった。

 嵐が去った後、僕は息を吐いた。


(……やっぱり、魔力量だけなら化け物だな)


 正面からやり合えば、街一つ吹き飛びかねない。

 だが、勝機はある。彼らは魔法を使われない戦いを知らない。

 僕は黒刀の位置を直し、Eクラスの校舎へと足を進めた。

まだまだ書きたい、、、けど眠いので寝ます。



誤字脱字、改善点などあれば教えていただけると嬉しいです。

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