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蒼とゼロ  作者: 霧ぽ
第1章 欠たる器の反逆
15/26

14.旅立ち

そして、15歳。

入学試験を明日に控えた夜。

 

 コンコン。

 ドアが開き、11歳になったセナが入ってきた。


「……眠れないの、セナ?」


「うん。明日、にーにがいなくなっちゃうと思ったら…」


 セナは僕のベッドに腰掛け、手を見つめてきた。


「ねえ、にーに。本当は魔法、使えるんでしょう?」


 ドキリとした。


「……どうしてそう思う?」


「だって、にーにの部屋、たまにビリビリするもん。空気が重いっていうか……嵐の前の匂いがする」


 鋭い。やはり血筋なのか、セナには魔力を感じる才能があるのかもしれない。

 僕は刀を鞘に納め、苦笑した。


「……秘密だよ」


 肯定も否定もしない。人差し指を口に当てる。


「もし僕が何かすごいことをしても、セナだけは『やっぱりね』って顔をしててくれるかい?」


 セナは悪戯っぽく笑って、僕に抱きついた。


「もちろん! だってにーには、私の自慢のお兄様だもん。…ノア様なんかより、ずーっと強いんだから」


「ありがとう。……行ってくるよ」


 妹の体温。家族の期待。

 それらすべてを背負って、僕は立ち上がった。

 孤独な戦いじゃない。僕の背中には、常にこの温かい家族がいる。

 だから僕は、迷いなく戦へ向かえるのだ。




翌日。


 王立魔法学園の入学試験の日がやってきた。

 屋敷の玄関ホール。

 真新しい漆黒の制服に袖を通した僕は、姿見の前で自分の姿を確認した。

 背は伸び、顔つきも幼さが消えて精悍になった。

 その服の下には、地獄のような修練で鋼鉄に変えた筋肉が鎧のように張り付いている。


(……悪くない)


 僕は拳を軽く握りしめた。

 古代魔法『掌握(グラスプ)』で締め上げ、ガザ師匠に殴られ続けて硬化した肉体。

 今の僕なら、この制服の上からでも岩を砕ける。


「……アロイス」


 背後から、低い声がかかる。

 振り返ると、柱の影に師匠のガザが立っていた。ボロボロの外套は相変わらずだが、その隻眼はどこか満足げに細められている。


「中々にいい具合じゃねえか」


「師匠のおかげです」


 ガザは、無言で一本の刀を僕に差し出した。

 鍔のない、漆黒の鞘に収められた刀だ。装飾の一切を削ぎ落とした、殺すためだけの形状。


「餞別だ。銘はねえが、業物だ。お前の型には、騎士の剣よりもこいつが合うだろうよ」


 僕は『黒刀』を受け取り、腰に差した。

 ずっしりとした重みが、腰に吸い付くように馴染む

 重心のバランスも完璧だ。これなら、『偏重(ウェイト)』を乗せても折れることはないだろう。


「ありがとうございます。……大切にします」


「はっ。折ったら承知しねえからな?…頑張れよ」


 ガザは短くそう言うと、背を向けて手を振った。

 多くは語らない。師匠らしい、不器用だけど暖かさを感じられるその言葉が嬉しかった。


「にーに!」


 廊下の奥から、セナが走ってきた。

 その目にはうっすらと涙が浮かんでいるが、一生懸命に笑顔を作っている。


「行ってらっしゃい! ……怪我しないでね? あと変な虫がつかないように気をつけてね!」


「あはは、善処するよ」


 僕はしゃがみこみ、セナの頭を撫でた。

 去年の冬、襲撃事件があった時よりも、セナは強くなった。僕がゼロではないことを知っている、一番の理解者だ。


「……アロイス」


 父上と母上も姿を見せた。

 父上、クロノ公爵は少し気まずそうに咳払いをした


「……無理はするな。辛くなったら、いつでも帰ってくればいい。イニティウム家は、お前を見捨てたりはせん」


「あなた。縁起でもないこと言わないでくださいな」


 母上、シャーロットが父上をたしなめ、僕の頬を包み込んだ。


「アロイス。貴方は私の自慢の息子よ。……胸を張って行ってらっしゃい」


「はい。行ってきます、父上、母上」


 僕は両親に深く一礼した。

 魔力ゼロの落ちこぼれ。世間ではそう呼ばれている僕を、この人たちは一度だって否定しなかった。

 その愛情に応えるためにも、僕は負けるわけにはいかない。


 屋敷の外には、学園へ向かう馬車が待機していた。

 御者台には、いつものようにセバスが涼しい顔で座っている。


「……準備はよろしいですか、アロイス様」


「ああ、完璧だ。頼むよ、セバス」


 僕は馬車に乗り込み、窓から遠ざかる屋敷と家族に手を振った。

 馬車が街道を進み、屋敷が見えなくなると、僕はシートに深く体を預けた。

 魔力ゼロ。

 世間からの評価は最低ランク。

 これから向かう王立魔法学園は、魔力至上主義の総本山だ。

 きっと、教師も生徒も、僕を見下し、嘲笑うだろう


(……上等だ)


 僕は腰の黒刀の柄に触れた。

 僕の胸には、ガザ師匠から貰った闘志と、セバスと築き上げた理論、そして守るべき家族への想いがある


(見てろよ、世界)


 僕は窓の外、王都の空を見上げてニヤリと笑った。


(『魔力ゼロ』が、天才たちを薙ぎ倒すところを)


 アロイス・イニティウム、15歳。

 波乱に満ちた学園生活への、第一歩を踏み出した。

 

ふぅ。

やっとここまで終わった、、、。


こっからの学園生活を書きたくて始めたんですよね!



誤字脱字、改善点などあれば教えていただけると嬉しいです。

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