007
ダンジョンに潜り2日目の朝を優斗は迎えた。起きるといつものだるさがない。体から力がみなぎるように感じた。気持ちのいい朝だ。優斗はパジャマからダンジョンに行くための私服に着替える。すると上着がぶかぶかでジーパンは裾が短くなっていた。
優斗は何時もより目線が高くなっていることに気が付く。
「俺の身長が伸びている。それに痩せているな」
昨日までの優斗の身長は155cmで体重は100kgを超えていた。優斗は鏡に向かった。すると鏡に映っている自分の顔を見て驚く。どのアイドルでも負けない顔立ちをしている自分が鏡に映っていたからだ。いちおう元の優斗の面影はある。しかし全く別人に見える。
優斗は仕方がなくサイズの合わなくなった服に着替えて1階のダイニングに下りていく。ダイニングには妹の香奈枝が椅子に座って優斗のほうを向いた。
「アナタ。どなたですか? 勝手に他人の家に上がらないで!! 母さん不審者がいるよ!! 警察に電話して!!」
香奈枝がそう叫ぶと台所から詩織の声が聞こえてきた。
「直ぐに電話するわ!! 香奈枝!! 大丈夫!!」
「私は平気だから!! 警察に電話して!!」
優斗はあまりの展開の速さに唖然とする。そして香奈枝にどうにか自分が優斗だと認識してもらわないといけないと思った。
(ああ、それよりも母さんの電話を止めさせないと)
優斗は香奈枝を無視して詩織のところに行く。香奈枝は不審者が詩織のところに行ったので驚いた。そして不審者を詩織にしむけないようにしないとと思った。そんなときに不審者が声を上げた。
「母さん。俺だよ。優斗だよ。ステータスの魅力値が上がってこんな顔になったんだよ。信じてくれよ」
詩織はよくよく不審者である優斗の顔を見る。かっこよくなってはいるが元の優斗の面影が少しは残っているのに気が付いた。
「本当に優斗なのね」
「ああ、朝からびっくりだよ」
「驚いたのは私のほうよ。お兄ちゃんがこんなに背が高くてかっこよくなっているなんて知らなかったんだもの」
香奈枝は自分は悪くないという姿勢を貫いた。それにしてもあの優斗がばけたものだなと思っていた。昔から自分の容姿や体形にコンプレックスを抱いていた優斗がこんなにかっこよくスタイルがいいイケメンになるなんて誰が予測しただろう。
「優斗。よかったわね。かっこよくなったじゃない。彼女を作るのも時間の問題ね」
「母さん。おちょくらないでよ。朝ごはんはまだなの」
「もうすぐできるから待っていなさい」
「はーい」
「お兄ちゃん、本当にかっこよくなっているわよ。アイドルなんかよりもお兄ちゃんがかっこいいと思うわ。よかったね」
香奈枝は素直に優斗がかっこよくなったことをうれしく思っていた。容姿のせいで学校でいじめられていたことを知っていたからよけいにそう感じていた。
優斗のほうは第三者である詩織や香奈枝がかっこいいとほめてくれたことに嬉しく思った。優斗が今まで感じたことのない容姿に対する優越感に浸っていた。
(これでもう俺のことを馬鹿にするやつらはいなくなる)と優斗はそんなことを考えていた。
「まだ、かっこよくなった実感はないよ。でも、前みたいにそとに出るのに億劫になることはないような気がする。新しい一歩が踏めそうだ」
「それはいい傾向だね。ダンジョンでもうかったらなにか奢ってね」
「あ、そう。そう。ダンジョンでかなり稼げることが分かったんだ。こんど寿司でもたべに行こうか」
香奈枝はその言葉を聞きのがしはしなかった。父親が死んで以来寿司なんてめったに食べたことがなかった。回転寿司にも行ったためしがない。
「母さん!! 聞いた!! お兄ちゃんが寿司をごちそうするってよ」
香奈枝の声に詩織が台所から出てくる。詩織は優斗が探索者を目指し始めてから探索者の年収を調べて知っていた。探索者1年目の年収は100万程度だ。Cランクになってやっと800万の金が年間で稼げる様になるということを知っている。もう優斗は1日で200万円以上稼いでいる。寿司をおグルぐらいは余裕だ。
「優斗。無理をしちゃだめよ」
「母さん。大丈夫だよ、ダンジョンでお金が儲かるスキルを手に入れたんだ。しばらくしたら母さんが働きに出なくてもいいくらいのお金を稼いでくるよ」
詩織は優斗の言葉に一抹の不安を覚えるが信じてみることにした。
「そうなることを楽しみにまっているわ」
詩織は台所に戻って朝食の支度をする。そんな詩織の姿を見て優斗は時分が速くCランクの冒険者に成ることを決意する。それには理由がある。父親を事故で無くして以来詩織は看護師の仕事をつづけながら家事も一人で行っていた。
なんどか優斗と香奈枝が手伝いを申し出たことがあったが『子供が気にするようなことじゃないわ』と言って断られていた。優斗は早くお金を稼いで詩織を楽にさせてやりたいと思っている。そのために今日もダンジョンに挑もうと思っているのだ。でもダンジョンに行く前に服を買わないといけないと思った。
◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝食を済ませると優斗はバスと電車を使って新宿を目指す。ダンジョンに行く前にデパートに向かった。人通りを歩くと何人もの女性が優斗を一目ちらっと見ていることに気付いた。バスや電車の中でも優斗は女性の視線を集めていた。
女性たちは優斗のあまりにも整った容姿と着ている物のダサさに戸惑っていた。特にズボンは8分丈のような状態になっている。優斗の身長が伸びてズボンのすそがあっていないのだ。しかし優斗はこの丈のズボンしかもっていないので仕方がなくこれを着ている。
優斗はデパートに着き紳士服コーナーへ行き服を選び始める。かっこいい脚がいることに目を付けた店員がやってくる。
「お客様。なにを買うか悩んでいる様子ですね。私が選んでみましょうか?」
その言葉は優斗にとっては渡りに船だった。今までファッションなんて無頓着だったし。デブにファッションを求めること自体が間違っていた。
「よければお願いします」
「畏まりました」
こうして優斗は上下6着ずつ店員がコーディネイト服を購入してデパートを後にした。そして探索者協会新宿支部に着き。探索者用の服を上下揃えていく。支払いは全てカードを使っている。昨日のさてい金額が200万を超えているので値段はあまり気にしていなかった。
探索者の服に着替えてから新宿ダンジョンに向かう。今日、優斗は第2階層に挑むつもりだ。
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