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002

優斗は誕生日である4月1日を心待ちにしていた。15歳になり探索者の教会に登録できる年齢になるからだ。やっと優斗は誕生日を迎えた。朝から急ぎ準備を済ませて2階にある自分の部屋から1階にあるダイニングに降りていく。ダイニングには母親の詩織(しおり)と二つ下の妹で今度中二になる香奈枝(かなえ)がいた。


優斗に父親はいない。優斗が幼い時に交通事故で亡くなっていた。家族は3人だけだ。


「母さん。香奈枝。おはよう」


「優斗。おはよう」


「お兄ちゃん、おはよう」


詩織はなにか考え込むようなそぶりをしている。今日が優斗の誕生日で優斗が危険と隣り合わせの探索者になる日だからだ。二人は何度も話し合った。詩織は優斗に危険な職業を選んでほしくなかった。でも、優斗は安全面を考慮しながらダンジョンを攻略するとの一点張りで詩織の言うことを聞いてくれない。


詩織は優斗が中学生のころ虐めを受けていたことを担任の先生に聞かされて知っている。だから無理に学校に通わなくてもいいと思っていた。高校進学を諦めるくらいは許せそうだった。しかし探索者になるのだけは今でも詩織は反対している。


優斗は何時も座る席に腰を下ろし食事を始める。優斗は女の手一つでいままで育ててくれたことを詩織に感謝している。仕事をしながら家事をこなしているのを平気な顔でやってのけているのだ。感謝しないほうがおかしいと思うくらいだ。


「優斗。どうしても今日、探索者になりに行くの?」


「母さん。その件は何度も話したじゃないか・・・。俺の考えは変わらない。安全マージンを十分に取ってダンジョンに挑むから心配はないよ。強くなって大きなクランに入るように頑張るつもりだよ。大きなクランだと高位の癒し手もいるから安全面で保障されるからね。ちゃんと考えての結果だからあきらめてよ」


優斗の話を聞いても詩織の不安はぬぐい切れない。


「そうはいっても、まだジョブも決まらないうちから危険はないっていう考え方が危ない気がしてならないのよ。そこらへんも考えているの?」


「考えているよ。ジョブ次第では時間がかかるかもしれないけどCクラスになるまで気長に考えるよ。決して無理はしないよ」


探索者はFから始まりE・D・C・B・A・S・SS・SSSの順に上がっていく。優斗が目指しているCランクは年収で800万円くらい稼げる。今の日本の平均年収が600万円なので中層階層よりは羽振りの良い暮らしができる。と優斗は考えていた。


「それでも・・・」


「母さん。そこまでにしておいてよ。お兄ちゃんだってちゃんと考えていると思うよ。信じてみようよ」


「香奈枝は優斗の味方なのね」


「そうだよ。お兄ちゃんには探索者として活躍して幸せになってほしいと思っているの。中学校でのことはお母さんも知っているでしょ。お兄ちゃんは強くなりたいんだよ」


香奈枝は優斗の気持ちを理解していた。力がないばかりに中学校ではいじめを受けていた。そんな優斗が探索者として強くなることを香奈枝は望んでいた。心配しないわけではない。でも香奈枝は優斗を信じてみることにしたのだ。


「その件を持ち出されるとお母さんも何も言えなくなるわ。優斗。決して危ない真似だけはしないでね」


詩織は残念そうに肩を落とす。そして泣きそうな声で優斗に話しかけてきた。こういう母親を見て優斗は自分がしっかりしないといけないと思うのだった。


「分かっているよ。俺が自分で食べていけるまでの間はまだ母さんに頼ることになると思う。でも、3年でどうにか自立できるように頑張るよ。それまでは迷惑をかけると思うけど・・・。よろしく」


「まあ、いいわ。あなたはまだ子供だもの面倒は見ます。3年とは言わずに20際になるまでに独り立ちできるように頑張って見なさい。焦りは禁物よ」


「わかった。理解してくれてありがとう」


優斗は詩織の作った朝食を味わって食べて詩織に感謝する。そして食事を済ませると台所に食器を置いて帽子をかぶり金属バットの入ったケースとリュックを肩に担ぎ玄関に行く。


「母さおん。行ってくるよ」


「気を付けるのよ」


「はい」


優斗はこうして家を出てバスと電車を乗り継いで新宿までやってきた。探索者協会はダンジョンのそばに支店を構えている。探索者協会の新宿支店は新宿ダンジョンの近くにある。優斗は探索者協会新宿支店のドアを開けて中に入っていく。


そして、入会手続きカウンターに向かう。カウンターには受付嬢が待機していた。カウンターには誰も並んでいないようなので優斗は受付嬢のカウンター越しに用意されていた椅子に座った。


「いらっしゃいませ。ようこそ探索者協会へ。私は入会後希望者の担当窓口を任されている柳香織(やなぎかおり)といいます。よろしくお願いします」


「俺は南雲優斗って言います。探索者協会へ入会しに来ました。よろしくお願いします」


香織は優斗の太っている体系を見て探索者としてやっていけるか不安を感じた。優斗が15歳ということもありまだ成長期で身長も155cmしかない。優斗は誰が見ても探索者には見えないだろう。


「親野許可は得ていますか?」


「はい、これが承諾書です」


優斗はあらかじめパソコンでプリントアウトしていた親野承諾書を提出する。香織は親がよくゆるしてくれたなと思った。


「お預りします。マイナンバーカードをお持ちですか?」


「はい」


優斗はマイナンバーカードを提出する。そして香織がブレットにマイナンバーカードを読みこませる。そしてタブレットに出てきた情報に誤りがないかタブレットを優斗にみせる。


「記載されている者に間違いはございませんか?」


優斗はタブレットを確認して


「間違いないです」


「でわ、タブレットにマイナンバーカードの暗唱番号を入力してください」


優斗はタッチペンで暗証番号を入力する。


「でわ。優斗君。振込口座の入力をタブレットで行ってください」


探索者協会が買取した金額は口座に振り込まれる仕組みになっている。優斗はタブレットに入力していく。


「終わりましたか?」


「はい」


「でわ。この用紙を持って写真を写しに行ってください。地面にある黄色い線に従って行けばわかりますよ」


優斗は床の黄色い線に従って移動する。そして写真を撮って香織の元に戻る。香織は写真のデーターをパソコンに読み込み口座番号やマイナンバーを入力していく。そして10分ほど待ってカードが出来上がった。


「カードが出来上がりました。これで優斗君は探索者の一員です。短借者としての規則はこのパンフレットに記載されているので必ずパンフレットには目を通してください」


「分かりました」


優斗は探索者カードをもらい興奮する気持ちを押さえつける。


(これで一歩踏み出すことができる)と優斗は意気込む。


「ダンジョンは安産なところではないので気を付けてください」


「心配してくれてありがとうございます。ダンジョンでは慎重に行動します」


「でわ。またのお越しをお待ちしております」


「はい」


優斗は探索者協会を出て直ぐ近くにある新宿ダンジョンに向かった。


読んでくれてありがとうございます。

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