表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

001

西暦2125年3月18日葛西第一中学校の卒業式が行われていた。周りのみなと比べると背が低くブクブクと太った少年に校長先生から卒業証書を授与している途中だった。


南雲優斗(なぐもゆうと)君。卒業おめでとう」


優斗はおどおどしながら校長先生から卒業証書を受け取る。


「ありがとうございます。お世話になりました」


優斗は次の番の生徒とともに校長先生に一礼して振り返り階段を下りていく。


(これで虐めから解放される。ようやくこの日がやってきたんだ)


優斗はそう思い喜んだ。優斗は見た目からよく不良にからまれたりクラスのヤンキーにいじめを受けたりしていた。そのため辛い中学生生活を送ってきた。それも今日までだと割り切ることにした。階段を下りてクラスメイト達が座っている席に戻る。その時に田中という同級生が足を出す。


優斗はその足に引っ掛かり前に倒れる。田中は優斗の滑稽な姿を見て笑う。


「ギャッハハ。卒業式くらいちゃんと歩けよ。キモデブ」


「・・・・・・」


優斗は何も言い返せない。ここで相手を怒らせば校門で待ち伏せをされるかもしれないからだ。優斗は歯をくいしばって耐える。そして起き上がる。


「なにをしたの? 田中君。また南雲君をいじめているの? もしそうなら許さないわよ」


凛として透き通るような声が小さく聞こえてくる。その声を発したのは長谷川美羽(はせがわみう)だ。校内で一番の美少女として有名だ。そして家は古武術を教えることを鎌倉時代から生業にしている一族でヤンキーたちも美羽のことは一目置いていた。


「俺は何もしてないぞ。そうだろ。南雲」


田中は気まずそうな顔をして優斗を威圧的なまなざしでにらむ。いくら美羽がいてもその場限りのものだから優斗は正直に今の状況を話すわけにはいかない、


「長谷川さん、自分がつまずいただけだよ。田中君は何もしていないよ」


「そう、それならいいんだけど。何かあったらいつでも私に言いなさい。わかった?」


美羽は気配りのできるタイプで中学に入ってから直ぐに優斗がいじめられ始めるとよくいじめている者たちに制裁を加えていた。優斗はそのてんでは美羽に感謝していた。誰もが虐めを見て見ぬ振りする中で美羽だけが優斗の盾になっていた。美羽は美少女なので優斗は美羽に淡い恋心を持っていた。しかし、自分の見た目は誰よりも優斗自身が知っている。そのため気持ちを告白することはなかった。


「いつもありがとう。困ったときは連絡するね」


「学校を卒業して離れ離れになるけどいつでも連絡してちょうだい」


「長谷川さんは鶴見下高校だったよね。合格おめでとう」


「ありがとう。南雲君。高校はどこにしたの? 噂でも魔雲君の進路は聞いたことがないのだけれど・・・」


「俺は高校にはいかないから」


美羽は驚いた顔をする。高等学校が無償化されている今の日本で高校に行かないという選択をするものはいない。全くいないわけではないが、その人数はごく少数と言えた。


「本当に、高校に行かないの?」


「うん。そう決めていたから・・・。だから高校は受験していないんだ」


「高校に行かないでどうするのよ」


美羽は中学時代にいじめを受けたことで高校でもいじめを受ける可能性があると考えて優斗が高校に行かないと選択したのだと思った。でもそういう理由があっても通信教育の学校もある。中卒では仕事に就くにも苦労するだろうと思った。


「俺は探索者をすることにしたんだ」


「探索者ってあの・・・?」


「そうだよ。俺はダンジョンに行くことにしたんだ」


優斗のその言葉に美羽は何を言っていいか分からなくなった。


「怪我には気を付けてね」


「うん」


美羽の予想は当たっていた。優斗は高校でも虐めが行われるのではないかと思い高校進学を断念していた。それで危険ではあるが実入りのいい探索者になることにした。ゲームやラノベの影響を優斗は受けていた。探索者になればレベルが上がって強くなると思い込んでいた。もうそのこと以外に頭に思い浮かばなくなっていた。


世界にダンジョンが発生して127年の月日が流れた。ダンジョンからもたらされるマナクリスタルや魔物のコアなどは今や昔の石油や石炭に代わるエネルギー資源になっている。その上、ダンジョンは鉱物も産出する。正確には魔物を討伐した時に得られるドロップ品だ。


ダンジョンには宝箱もありアイテムを算出している。ダンジョンができたころはダンジョン内の魔物相手に軍人がダンジョンに入って魔物を駆除しようとしたが魔物には現代兵器が効かなかった。魔力を帯びた攻撃以外で魔物を傷つけることができなかった。ただ、初めてダンジョンに入るとステータスが見えるようになりジョブが表示されジョブに応じたスキルを授かることが分かった。


各国政府は軍を支援して武器を与えダンジョンを攻略させることにした。しかし、それでは国中にあるダンジョンの多くが野放し状態になり、そのダンジョン内の魔物がスタンピードを起こしてダンジョンの近くにある地域に魔物が放たれることになった。


日本はその件を踏まえ探索者ギルドを創設して国民に探索者になる権利を与えた。日本政府はゲームやラノベでの異世界ものにあるような冒険者ギルドを作りたかったのだ。日本の短借者ギルドの政策はうまくいった。それを各国が真似て世界中に探索者ギルドができた。


日本は探索者になる年齢を15歳からとして法律を作った。数は少ないが15歳で探索者を目指すものはいる。高校に通う3年間をダンジョンで過ごしたいと思うごく一部の者たちだ。ほかの者より早くダンジョンに入ってはやくレベルを上げたいと思うようなものたちだ。


優斗もその一人になっていた。優斗はゲームのように慎重に経験知を重ねてゆっくりでいいから確実にケガなど市内で成長するために高校での3年間は無駄だと判断していた。


(3年後には誰にも馬鹿にされないくらいに強くなってやる。もう惨めな思いはしたくない)


優斗はそう思い自分の席に座る。美羽はもう友達と会話をしている。その横顔をきれいだなと思いながら優斗は眺めていた。


そして卒業式は終わりを迎えて優斗たちは後輩が集まる中校門目指して進んでいく。優斗は校門を出ると一目散に家路につく。他のクラスメイトはカラオケボックスに集まってさよなら会をしている。美羽から優斗に『なぜいないの』とLINOが来る。優斗はそれを無視して家に向かう。


(もう、誰に気兼ねなく過ごすことができる。やったー!!)


優斗は思いっきり開放感を味わっていた。そして家に着くと部屋に閉じこもりゲームをする。そして優斗は4月1日の誕生日を迎えるまで部屋でほとんどの時間を過ごすことになった。


読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ