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二計画  作者: 喰ったねこ
第六章:神聖国編
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第78話 鋼鉄の聖女

宮殿の奥、かつて皇帝との激闘を繰り広げた「聖域」。

その地下にある「実験室」は、地上の喧騒とは無縁の静寂に包まれていた。

ここでなら、中世の技術的限界を遥かに超えられる。


薄暗い松明も、煤けた鍛冶場もない。

壁面パネルが放つ無機質なLEDの青白い光が、作業台の上の「怪物」を照らし出している。


「……美しいわ」


私は、愛おしそうにその鋼鉄のフレームを撫でた。

作業台に横たわっているのは、先日破壊した戦闘ロボット「キマイラ」の残骸から、使えるパーツを選別し、再構成したものだ。


装甲材は、前世の対物ライフルから発射された徹甲弾でも傷一つつけられない「セラミック・チタン複合装甲」。

駆動系は、キマイラの四肢を動かしていた高出力の「サーボアクチュエータ」と、細かい部分は電圧を加えると収縮する人工筋肉。

それらを、私の体格に合わせて切り詰め、人間の動きを拡張するために組み上げた、鋼鉄の外骨格。


「アノン。接続テストを行うわ。動力炉、臨界クリティカルまで出力上昇」


「了解した」


コンソールを操作するアノンが、短く答える。

彼の横には、ガラスのシリンダーに封入された、赤く脈打つ「心臓」があった。

それは、キマイラの動力源ではなく――かつて皇帝や刺客たちが使い、そして私が回収した大量の「禁断の魔石」を束ねたものだ。


「皮肉なものね。魔法を否定する私が、動力源バッテリーとしてだけは、魔法を利用するなんて」


この世界には、高密度のバッテリーも、小型の原子炉もない。

だが、この「魔石」だけは、物理法則を無視した膨大なエネルギーが湧き出している。

しかも、発現した魔法と違って、私が近づいたとしても、それは無効化されることはもない。この事実は、魔法という現象を科学的に解明するための第一歩となった。


すでに私は、科学的な回路を用いて、魔石から純粋なエネルギーのみを抽出し、電力へと変換するコンバーターを完成させていた。


そう、私はこのゲーレンから与えられた研究所で、すでに魔法の謎の一端を解明していた。雷魔法がある以上、電力への変換も可能というわけだ。まだ、仮説の段階だが、この溢れるエネルギーこそが魔法を駆動する燃料なのだろう。だが、燃料があったとして、どのような仕組みで魔法を作り出しているのかまではわからなかったが。


取り合えず、莫大なエネルギーはあるのだ。ならば、ありがたくそのエネルギーを使って、ホパ村で、リオが夢見ていたことを、今、実現する。


神に愛されていない私が、魔法を使う。強引且つ科学的に。


ブゥゥン……!!


低い唸り声と共に、鋼鉄の骨格に命が吹き込まれる。

関節部分の隙間から、青白い光が漏れ出す。


「システム・オールグリーン。……着るわよ」


私は、作業台の前に立った。

機械のアームが展開し、私を迎え入れる。

背中、腕、脚。冷たい金属が私の体に吸い付き、固定される。

戦術皮膚ナノスーツの上から、さらに鋼鉄の皮膚を纏う感覚。


装着セット・アップ


カシャン!


ロックが掛かる音と共に、私の視界にHUDヘッドアップディスプレイが投影された。

全身の重量は200キロを超えるが、重さは感じない。

私が右手を動かせば、アクチュエーターが唸り、鋼鉄のアームが遅延なく追従する。


「……いいわね。これなら、オーガだろうがドラゴンだろうが、素手で引き裂ける」


強化外骨格パワードスーツ

コードネーム『ヴァルキリー』。

非力な14歳の少女を、戦車と格闘できる質量兵器へと変える、私の最強の鎧。

そう、これは他の誰でもない私が着る事によって、この魔法世界では最強の鎧と化すのだ。


「だが、破星。格闘戦だけでは、空飛ぶ天使や大軍は捌ききれないぞ」


アノンが、冷静に指摘する。

もちろん、分かっている。

私は、作業台の隅に置かれていた「主兵装」に手を伸ばした。


それは、キマイラの胸部に搭載されていた、あの凶悪な回転式多銃身機関砲――ガトリングガンだ。

それを改修し、人間パワードスーツが携帯できるようにグリップと給弾ベルトを増設してある。


ジャラララッ……!


私は、その巨大な鉄塊を、片手で軽々と持ち上げた。

総重量80キロの銃器が、まるで小枝のように軽い。


「弾薬は、科研で量産させた7.62mm徹甲弾。発射速度は毎分3000発。……これなら、魔法障壁ごと、敵を挽肉に変えられる」


背中のラックには、無誘導のロケット兵器を装填したポッド。

肩には、音響兵器の指向性スピーカー。

さらに、このラボとの長距離通信可能な暗号化された無線通信回線。

そして手には、死神のガトリング


鏡に映った自分の姿は、もはや「聖女」でも「皇帝」でもなかった。

鋼鉄と火薬の塊。

魔法の神すら殺せそうな、殺戮の女神。


「……シオンに見せたら、また気絶しそうだな」


アノンが、珍しく苦笑する。


「ええ。でも、これが私達に今できる『科学』の到達点ひとつのこたえよ」


私は、ガトリングの砲身を空転させた。

ヒュイイィィン……という、鋭いモーター音が、地下室に響き渡る。


「地上では、ハトや毒ガスといった『汚い兵器』が大量に生産されている。そして更に、私はこの牙を研ぎ澄ます」


私は、HUDに表示される「出力120%」の文字を見つめた。


「待っていなさい、ゲメリアの神様。……この鋼鉄の体で、貴方の心臓を握り潰してあげる」


決戦の準備は整いつつあった。

中世の泥臭い消耗戦を終わらせるのは、魔法ではない。この時代を超越したオーバーテクノロジーだ。

読んで頂きありがとうございます。

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