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二計画  作者: 喰ったねこ
第三章:王都編
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第49話 王宮から学園へ

私がアーチの影で、彼のひたむきな姿に見入っていると、突然、稽古を終えたエイデン王子がこちらに気づいた。


「姫君! なぜ、君がここに」


「ただの朝の散歩ですわ。殿下こそ、大変な熱の入れようですわね」


「はい。姫君のおかげで、この腕もすっかり良くなりましたので」


王子は、完全に治癒した腕をさすりながら、少し照れたように笑った。


「そうですか。骨がちゃんと治って、良かった」


「骨折に、あのような治療法があったとは。王宮の治癒魔術師たちも、皆、驚いておりましたよ。さすがは姫君、まことに見識が広い」


「……頑張ってください」


「ありがとう。……ところで、王宮の暮らしはいかがですか?」


「ええ。至れり尽くせりで、心地よいですわ」


「それは良かった」


王子は、心から安堵したように、微笑んだ。


「僕が、陛下に、そなたの王宮滞在をお願いしたのですよ」


「……殿下が、私を?」


「ええ。君がロキヌスから狙われている以上、王宮でお守りするのが、最も安全ですからね。前回の反省を踏まえ、警備体制も、人員、魔法障壁ともに、何重にも増強してあります。僕も含め、次は、決して姫君のお手間は取らせません」


私は、考え違いをしていたらしい。

私を用心棒として王宮に置いたのではなく、私を「守る」ために、この国で最も堅固な王宮に滞在させたということらしい。


(……これは)


背筋に、冷たい汗が流れるのを感じた。

ゲーレン級の敵が襲来した場合、私とアノン以外の戦力は、いないも同然だ。

その時、この王子が、私を守ろうと、私の前に立てばどうなる?

彼は、確実に、そして無惨に、殺されるだろう。


そして、今の私は、かつての私ではない。

リオの感情に侵食された私は、目の前で彼が殺されるのを、見捨てることが、おそらくできない。

それは、私自身の生存確率を著しく低下させる、最悪のシナリオではないか。

この、安全なはずの王宮こそが、今の私にとって最も危険な場所になっていた。


「私を守ってくださっている、と?」


「もちろん、そうありたいと願っています。女性の君に戦わせるのは、王族としての、そして、一人の男としての、恥ですから」


彼の、あまりにも真っ直ぐな言葉。


「そうだったのですね。……ですが、殿下。わたくし、ここに、これ以上留まることはできません。お気持ちだけ、ありがたく頂戴いたします」


敵から私を守るということは、逃げずに、私の前に立って死ぬということだ。

そんな光景は、もう、見たくない。


「姫君……。王宮の堅苦しさが嫌なのであれば、王立魔法学園に入学するのはどうですか?」


私の決意を察したのか、王子が、必死の形相で代替案を提示する。


「学校、ですか」


「はい。この国の貴族の子女は、十六歳になると、入学が義務付けられているのです。警備も王宮並みに厳重ですし、僕も通っておりますので、必ずやお守りいたします」


「義務……」


「ナブラ王国最高の教育機関であり、国中の天才、秀才が集う学び舎でもあります」


「ええっ……国中の、天才? ですって」


その言葉に、私の思考が、別の方向へと回転を始めた。

ホパ村の開発、科研の拡充。

私の計画には、今、何よりも、優秀な「人材」が必要だった。

国中の英才が集まる、王立魔法学園。

それは、最高の「リクルート」の場ではないか?


それに、王宮に滞在してからずっと感じていた、あの奇妙な既視感。

この王宮と王立魔法学園、そしてエイデン王子。


なぜか、昔から、それを知っていたような気もする。

行ったこともない場所なのに、なぜか訪れたことがある場所のように詳細な光景が思い浮かぶのだ。

この宮殿に来た時もそうだった。


この変な記憶が村娘リオものだとは思えない。では、「私」の?

誰の記憶なのか、確かめる必要がある。


「……分かりました。その学校へ、行きましょう」


私の返答に、エイデン王子が、ぱっと顔を輝かせた。


「本当か、姫君!」


「ええ。ただし、条件があります。皆様には、わたくしを守るなどという、無謀なお考えは、決して、お持ちにならぬよう。国王陛下からも、厳命してください」


「……わ、分かった。約束しよう」


「姫君と、共に学べるのですね! 学園生活が、今から楽しみです」


「ええ。よろしくお願いいたしますわ、殿下」


こうして、私は、王宮という、甘く、しかし危険な場所を出ることを決めた。


王立魔法学園。

そこに、私の求める答えと、人材がいることを、願って。

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