表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/82

書籍化記念SS1「先生の立場」

お久しぶりです。

本作ですが、『生まれ変わった元最強魔術師は今度こそ普通に暮らしたい』

というタイトルで、明日8月22日にグラストノベル様より書籍化致します。


記念SSを3つほど用意致しましたので、良ければお読みください。


書籍版は新エピソード付きで再構成されています。

是非ともよろしくお願い致します。

 我が家の花壇は少々風変わりだ。具体的に言うと花がない。イロナさんの修行を考慮した結果、全て錬金術用の薬草になってしまった。一応、時期が来れば花は咲くのだけれど、花束にするような見栄えの良い品種は選ばれなかった。


 その花壇で、イロナさんとマツサが楽しそうに話をしている。


「イロナさん、そちらの若い葉だけ摘んでください。後ほど毒消しへの加工の仕方をお教えしましょう」

「え、これそんなことに使えるんですか? 調べたけれど、使い道がわからなかったんですよー」

「フフフ、これは『塔』の中にしか伝わっていない加工法ですからね。一口に毒と言っても色々ありますから万能ではありませんけれど、効果は抜群なのです」

「ありがとうございます。マツサ先生!」

「…………」


 仲が良くて結構だ。いつの間にか、マツサはイロナさんに先生と呼ばれるようになっていた。実力的にも申し分ないし、特に問題はないだろう。


「先生、さっきからどうしたんですか? あ、もしかしてイロナさんがあたしと仲良くしてるのが気に入らないとか?」


 こちらの視線に気づいてマツサが悪戯っぽく笑いながら言う。


「まさか。あのマツサが立派になったと思っていただけだよ。これなら安心だ」


 私が眠っている間にも研鑽を積み、人に教えるまでになったようだ。以前はいつも後ろについてきて、人に教える所なんて見たことがなかった。


「先生、今のあたしを昔と同じだと思って貰っては困りますよ? こと、知識に関してはこちらが最新ですからっ」

「え、そうなんですか?」

「……そうかもしれない」


 イロナさんが怪訝な顔で聞いてきたけれど、多分事実だ。目覚めてから色々と町に溢れているものから学んではいるけれど、魔術師達の最新技術と比べると私の知識は百年以上古いだろう。


「でも、見れば大体わかるし」

「くっ、これだから先生は……」


 悔しがっているが、私の特技はそれくらいしかないので許して欲しい。魔術の分析が得意なおかげで、色々助かるのも事実だ。


「マナールさんて、やっぱり凄い人なんですねぇ。こんな凄いお弟子さんを育ててますし」

「どうかな、今となっては古い魔術師だよ」

「ふむ……。先生、いっそあたしの講義を受けてみませんか?」


 急にマツサがそんなことを言い出した。しかも何故か目が怖い。


「知識を更新するという意味ではありがたいけれど、イロナさんはいいのかい?」

「どっちも大丈夫です! 無職なので!」


 そうだった。この元『塔』の魔術師は現在無職だった。毎日うちに来て何かしているから忘れていた。時間がありあまっているのだ。


「あの、できたら私も……ひえっ」


 おずおずと申し出たイロナさんがマツサに睨まれて怯えた声を出した。


「ふふふ、先生にものを教えられると思ったら何だか興奮してきました。手取り足取り……この機は逃せませんねぇ」

「普通の講義をしてくれよ……。あと、イロナさんに威嚇しないように」

 

 どうやら、弟子の新たな扉を開いてしまったようだ。人間、何がきっかけで新たな一面に目覚めるかわからないものだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ