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妖神繚乱~アマノジャク編vol.5~

 ***************************************************


 ケルベロスはイベント広場奥に置かれたピアノの上から状況を見守っていた。

 カマイタチ、シュテンドウジ、アクロジンノヒの3人の妖神の活躍により魍魎は全滅。残すは悪鬼アマノジャクと謎の小鬼。


 アマノジャクはヘラヘラと笑いながらカマイタチの攻撃を器用に躱す。

 時折皮肉っぽい動作を繰り返してはカマイタチを揶揄(からか)う。


「あいつは真っ直ぐニャ性格しているから動作がバレバレニャ。心は読みやすいだろうニャ。しかも煽られて頭の中から冷静な思考は抜けちゃっているニャ。まあ、素直なところがカマイタチの良いところであり、悪いところでもあるニャー」


 そう言いながらケルベロスは次に小鬼に視線を移した。

 小鬼は一人キョロキョロと周囲を見回している。

 誰かを探しているのか。

 その一方で、その場から動く様子はない。


 シュテンドウジとアクロジンノヒは武器を鞘に納めたまま小鬼を見ていた。

 アクロジンノヒはともかく、“あの人格”のシュテンドウジであれば、悪鬼即滅と叫びながら小鬼を斬っていてもおかしくないのだが、今日はそうしていない。

 “悪意”を持つモノに対して寛容な部分も妥協する部分も一切ない。

 それが“今”のシュテンドウジだ。


「珍しいニャー。どうしたシュテンドウジ」


 誰に話し掛けるでもなく、ケルベロスは一人呟いた。


 ***************************************************


「ママ、ママ、ママはどこ?」


 いつの間にか現れた小鬼。その小鬼が不安そうに母親を探す声が聞こえてきた。

 その様子を見たアクロジンノヒ。

 シュテンドウジに対してどうしたのものかと話し掛ける。


「どうしたもこうしたもあるまい。あれは既に鬼ではないか」


「それはそうなんだけどねー。あれはおそらく多重人格ってやつね。人間が言うところの解離性同一性障害という(やまい)。あの鬼の中に2つの魂ないし人格が見えるわー。まるで陰陽太極図のように混ざり合わない二つの魂がうねうねしてる。片方はシューちゃんが言っている通り、悪意しかないわね。復讐と殺意に満ちた悪意ね。でももう一つはそうじゃない感じがするのよ」


「我らは執行者。目の前に悪意を持つ鬼がいるのならば斬るのみ」


「そういうわりには童子切を鞘に納めてるじゃない」


「今は、な」


「シューちゃんも分かってるんでしょ。今のアレに悪意はないわよー」


「分かっておる。先程までの小鬼とは中身が違う。貴様が言うところの人格が入れ替わったな」


 目尻は下がり、どことなく怯えた目つき。

 不安で不安で仕方ないのだろう。

 小鬼の瞳孔は開いたまま。

 瞳は忙しく動き、焦点は合ってない。

 初めて見た時の殺意のこもった鋭い視線は姿を消している。


「母親を探しているみたいだけど、この辺りの人間といえば……」

 

 ケルベロスのいるピアノ付近で一塊になっている人間たち。

 あの中に母親がいるのか。

 それともこの場から既に逃げてしまったのか。


「そこまで面倒を見る必要はないけど。取り敢えず魂の深淵を覗かせてもらうわ」


 アクロジンノヒは小鬼にゆっくりとした歩みで近付いた。



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