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妖神繚乱~アマノジャク編vol.1~

 I県アメノ市――

 時は(さかのぼ)る事、1年前。


「また飲みに行くのか!」


 そう叫んだのは茶髪で耳にピアス、いかつい顔立ちの34歳男性。

 そこは新築アパートの一室。玄関に近い10畳のリビング。

 部屋の中は服や荷物が散乱している。普段から片付けている様子はない。


「友達に誘われているから仕方ないでしょ!」


 そう返したのはロングの茶髪に前髪は赤いメッシュでキツメのギャルメイク。

 そして両耳だけでなく唇やこめかみにもピアスを付けている30歳女性。

 

 二人は結婚12年目の夫婦だった。


「おめえはアル中の癖にまた朝まで飲むつもりかよ!」


 現在の時間は20時。

 友達に誘われたと行って飲みに行く妻はたいてい朝帰り。

 べろべろに酔って店で寝てしまう事は当たり前。

 酔った勢いで男とホテルへ行く事も多々あった。

 そして女性は肝臓の数値が1,000以上あった。アルコール中毒。


「何で飲みに行くのが駄目なの。いちいち束縛しないでよ!」


 妻は甲高い声で反論する。

 玄関の外まで聞こえそうな大声。


「ふざけんな!」


 夫は叫びながら左手で妻の襟元を握る。

 そのまま妻の身体を壁に押し付けた。


 ドン!


 壁にぶつかる音とともに妻の付けていたネックレスがはじけ飛ぶ。

 それほどに激しい衝撃。

 夫はそのまま右手で拳を作り、妻の頬を殴った。

 妻の頬が赤く腫れる。


「ギャー! 何ですぐ手を出すんだよ、止めてよ!」


 妻の悲鳴が家中に響いた。

 その声を聞いてリビングの隣りにある部屋のドアが開く。


「ママ……」


 出てきたのは10歳の男の子。二人の息子だ。

 その表情はオドオドと怯えている。

 息子は小さく震える声で父と母に言葉を掛けようとしたが――。


「黙って部屋に戻れ!」


 父親の怒鳴り声に息子はビクビクと身震いした。

 そして部屋に戻り、そっとドアを閉じた。


 バン!


 ドアの向こうから人を殴る音と母親の悲鳴が再び聞こえてきた。

 息子は耳を塞ぐように手を当て、ドアを背にそのままうずくまった。


 *********************************************************


 I県アメノ市――

 場所は郊外型の某巨大ショッピングセンターのイベント広場。

 ショッピングセンターへ買い物に来た人やここで働く従業員の多くは既に避難していた。それでも逃げ遅れた20名程度の人間は広場にまだ残っていた。


 敵は悪鬼と化したアマノジャク。

 他人の心中を察する能力があり、人や動物の声真似が得意。

 体は小さく、小学校6年生の男子平均身長と同程度の150cmほど。

 髪はモジャモジャの長髪で醜い顔付き。

 皮膚の色は黄色。黄色人種の黄でなく、原色の黄に近い。


 そのアマノジャクを中心に40体の魑魅魍魎がうごめいている。

 黒い靄で出来た、瘴気を身にまとっている魍魎たち。


 そんな魑魅魍魎に対して刀を構え、迎え撃つ準備をする妖神カマイタチ。

 隣りにいるのは2名の仲間。


 一人はアクロジンノヒ。

 勢いよく燃える爆炎を模したド派手なデザインの和装。

 カマイタチ同様、歌舞伎役者のような衣装だ。

 両手に持つは短剣。

 しかしながら普通の短剣ではない。

 刀身が炎に包まれている。


 もう一人は――。


「おうおうおうおう、悲しいなあ。悲しいなあ」


 涙を流しながら刀を鞘から抜く男。

 彼は悲しい悲しいと言いながら魑魅魍魎に向かって武器を構える。

 西洋の騎士の着る鎧に身を包み、日本刀を持つ。

 その男の名前はシュテンドウジ。


「おうおうおうおう、僕は戦いたくないんだよ。こんな乱暴な事はしたくない」


 シュテンドウジは戦いたくないと言いながら刀を鞘に戻す。

 そしてそのまま地面に座り込んでしまった。


「あー、駄目なシュテンドウジにニャってしまったニャー」


 ケルベロスは溜息を吐きながらシュテンドウジに向かって言った。

 その光景を見ていたカマイタチは優しい笑みを浮かべて仕方ないと呟く。


「シュテンドウジは解離性同一性障害。この場に合わない人格が出てきてしまったけど、まあいつもの事だから。そういう障害を持つのを知っているマスターが今回の派遣を決めた。俺たちはそれに従うだけだろ」


 立場的にケルベロスが言いそうな台詞をカマイタチが代わりに言った。

 それに続いてアクロジンノヒが艶のある声で言葉を放つ。イケボイス。


「まあまあケルちゃん、そういう事だよ。シューちゃんの分はカマちゃんと僕でカバーするから。カマちゃんもそれで良いよね」


 アクロジンノヒの問い掛けにカマイタチは頷いて応えた。


「あー、分かってるニャー。ただちょっと愚痴りたかっただけニャー」


 語尾に口癖のニャーを付けながらケルベロスは言った。


「改めて命令するニャ。悪鬼即滅! 十二使徒たちよ、仕事の時間だニャー!」


 *********************************************************


 I県アメノ市――

 時は(さかのぼ)る事、半年前。


 場所は冒頭の新築アパート。夫婦の寝室。


 妻は以前と変わらぬロングの茶髪だが前髪の赤いメッシュはなくなっている。

 メイクを落としスッピン。

 ピアスの数は増え、今は顔だけでなく小指にも付けている。

 半袖の寝間着(パジャマ)から見える腕には沢山のタトゥー。

 フクロウやトランプ、幾何学模様。

 彫られているタトゥーに一貫性はない。


 彼女は精神疾患を患っており頻繁に心療内科へ通っていた。

 そして抗不安薬を処方されていた。

 その頓服(とんぷく)を飲むと不安が和らぐのと同時に過度な眠気に頭が包まれた。

 そんな状態になり一度眠ると、どんな事をしても3時間は起きる事はなかった。


 時間は朝方5時。寝起きでトイレへ行く為に起きた夫。

 トイレから戻りベッドを見ると肌を露わにしながら寝ている妻。

 何時頃飲み屋から帰ってきたのかは知らない。

 気持ちよさそうにいびきをかいている。

 枕元にはカラになった薬のシート。頓服を飲んだ後なのだろう。

 しばらく起きる事はないだろうな。


 それにしても――。


 最近は喧嘩が続き、ずっとしていない。

 そんな時に肌を露わにして眠る妻。

 相変わらずスタイルは良い。


 ああ、ムラムラする。

 夫は妻の寝間着のズボンを脱がす。頓服の効果だろう。妻に起きる気配はない。


 そして――。



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