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妖神繚乱~ホウソウシ編vol.1~

 遥か昔。

 それはまだ神々が地上にいた頃の話。


 神々はそれぞれの支配領域(テリトリー)を持っていた。

 そして、神の強さは神徒(しんと)の数と神徒による信仰心の熱意に比例した。

 

 神は奇蹟の力によって人々を加護し、厚い信仰心を持つ神徒に育てる。

 神徒は他の神の支配領域へ攻め入り、改宗をさせる事で自陣の神徒を更に増やし支配領域を広げていく。


 また、強き神に敗北した神々はその軍門にくだる。

 配下となった神はその姿を変え、時にその名を変え、神を名乗るのを止める。

 こうして強き神は次々と勢力を伸ばし、「一番エライ神」を自称しながら孤高の存在を目指し突き進む。、

 

 話は変わり、ここは住民200名程度の辺境の村。

 神々がまだ地上にいる頃なので、当然電気や水道といったインフラはない。

 狩猟と農業が主な生活手段。

 人々は日々を懸命に生き抜いていた。 


「また死者か……。これで何人目だ……」


 そうぼやく男はこの村の村長。

 (あご)と口の周りに髭を蓄えた40代の男性。


「原因不明の(やまい)で最初の死者が出て今日で5日目。病を確認してまだ7日しか経ってないのにもう8人目の犠牲者が出た。何なんだ、この病は。死に至るまでこんなに進行の早い病は今まで見た事がない」


 陽に照らされた吹きさらしの地面。

 土埃が舞う建物の外に直接敷かれた布の上。

 そこへ安置された幼子の死体を前に村長は深く溜息をついた。


「このような事態に我らが神、餓者髑髏(がしゃどくろ)様はどこへ行ってしまわれたのだ。餓者髑髏様さえいれば、餓者髑髏様さえいればこんな災いを退ける事は容易だろうに」


 この村は餓者髑髏(がしゃどくろ)という名の神の支配領域の一つだった。

 餓者髑髏は理不尽な死によって現世を彷徨う事になった不幸な死者の魂を、あるべき場所へと導く冥府の救済者。

 転じて、不条理な死や無慈悲な災害から人々を守る奇蹟を起こす神として、支配領域の人々から崇め祭られていた。


「村長、村長!」


 大声を上げながら慌てるように駆け寄ってくる一人の男。

 息を切らして村長に話し掛ける。


「はあ、はあ……。村長! 大変です」


「どうした、何があった」


「村を流れる川が枯れてます」


「は?」


「川が枯れてます!」


「ちょっと待て。昨日までそんな兆候なかったろう。何故急に川が枯れるんだ」


 村長は口ひげを触りながら考え込む。

 ここ数日で急激に気温が上がったわけではない。だから日照りはない。

 大地の形を変えてしまうような大きな地震もなかった。


「一体何が起きている……」


 そこへもう一人、馬に乗った男が現れた。

 馬を降りた男は激しく呼吸をしながら村長に近付く。

 顔面は蒼白。両手は小刻みに震えている。


「どうした、何かあったのか」


 村長は馬から降りた男に声を掛けた。

 その男は自分が見てきた事を話し始める。


「上流部で、上流部で川がせき止められておりました!」


「はあっ! なんだと!」



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