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妖神繚乱~アマノジャク編vol.9~

「シュテンドウジ!!」


 突然の出来事にカマイタチは驚いて思わず名前を叫んだ。

 慌てて小鬼の元へ駆け寄ったが、小鬼の頭と体は悪鬼と同じように黒い靄となり、大気へ溶けるように消えてしまった。結局小鬼は何者だったのか。もう知る術はない。もはや痕跡は残っていなかった。 


「あの小鬼はまだ小さな子供だった。やりようによっては人間に戻れたかもしれないんだぞ。さすがにやり過ぎじゃないか」


 カマイタチはシュテンドウジに抗議した。

 童子切を鞘に納めたシュテンドウジは一瞥して答える。


「あの小鬼が人の姿に戻る(すべ)があるのか否か。我の知った事ではない。悪意を持つ鬼を冥府に封緘(ふうかん)するのが我らの任務よ。我は我の仕事をしたまで」


 カマイタチは思い出した、シュテンドウジはこういう男だった。

 悪鬼や悪意を持つモノに対して容赦しない。一切躊躇しない。


 ***************************************************


 十二神柱(かみばしら)五原則


 第一条:十二神柱は善意ある人間に危害を加えてはならない。

     また、危険を看破した時は危害が及ばないようにしなくてはならない。


 第二条:十二神柱は善意ある人間の命令に従わなくてはならない。

     ただし冥府の門番の命令は最優先である。

     また、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。


 ***************************************************


 シュテンドウジの斬った相手は“善意のある人間”ではない。


 シュテンドウジは冥府の門番たるマスターの命令を最優先として動いた。


 十二神柱五原則第一条と第二条に反していない。


 そうだ、シュテンドウジは間違っていない。シュテンドウジは正しい。

 だが、俺はそこまで割り切って動く事はできない。

 あの小鬼の魂は確かに悪意そのものだった。

 だがもう一つの魂はどうだろうか。そこに悪意はなかった。今でもそう思う。

 もしかしたら人間として救う事ができたのではないか。


 俺は十二神柱として甘すぎるのか。この考え方は十二神柱に相応しくないのか。


 カマイタチはこの結末を悔やんだ。自分の立場や考えをもう一度見つめ直した。

 しかし自身に対する結論は出なかった。

 明確な答えを出す事を敢えて避けた。

 自分の中にそういう側面があった事は否定できない。


「カマイタチ、今は冥府の門番たるマスターに従え。マスターは常に正しい」


 カマイタチの心を見透かしたかのように、シュテンドウジはそっと呟いた。



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次回vol.10でアマノジャク編は完結予定です。

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