妖神繚乱~アマノジャク編vol.9~
「シュテンドウジ!!」
突然の出来事にカマイタチは驚いて思わず名前を叫んだ。
慌てて小鬼の元へ駆け寄ったが、小鬼の頭と体は悪鬼と同じように黒い靄となり、大気へ溶けるように消えてしまった。結局小鬼は何者だったのか。もう知る術はない。もはや痕跡は残っていなかった。
「あの小鬼はまだ小さな子供だった。やりようによっては人間に戻れたかもしれないんだぞ。さすがにやり過ぎじゃないか」
カマイタチはシュテンドウジに抗議した。
童子切を鞘に納めたシュテンドウジは一瞥して答える。
「あの小鬼が人の姿に戻る術があるのか否か。我の知った事ではない。悪意を持つ鬼を冥府に封緘するのが我らの任務よ。我は我の仕事をしたまで」
カマイタチは思い出した、シュテンドウジはこういう男だった。
悪鬼や悪意を持つモノに対して容赦しない。一切躊躇しない。
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十二神柱五原則
第一条:十二神柱は善意ある人間に危害を加えてはならない。
また、危険を看破した時は危害が及ばないようにしなくてはならない。
第二条:十二神柱は善意ある人間の命令に従わなくてはならない。
ただし冥府の門番の命令は最優先である。
また、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。
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シュテンドウジの斬った相手は“善意のある人間”ではない。
シュテンドウジは冥府の門番たるマスターの命令を最優先として動いた。
十二神柱五原則第一条と第二条に反していない。
そうだ、シュテンドウジは間違っていない。シュテンドウジは正しい。
だが、俺はそこまで割り切って動く事はできない。
あの小鬼の魂は確かに悪意そのものだった。
だがもう一つの魂はどうだろうか。そこに悪意はなかった。今でもそう思う。
もしかしたら人間として救う事ができたのではないか。
俺は十二神柱として甘すぎるのか。この考え方は十二神柱に相応しくないのか。
カマイタチはこの結末を悔やんだ。自分の立場や考えをもう一度見つめ直した。
しかし自身に対する結論は出なかった。
明確な答えを出す事を敢えて避けた。
自分の中にそういう側面があった事は否定できない。
「カマイタチ、今は冥府の門番たるマスターに従え。マスターは常に正しい」
カマイタチの心を見透かしたかのように、シュテンドウジはそっと呟いた。
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次回vol.10でアマノジャク編は完結予定です。




