5-1.新たなジョブ(1)
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
地道にワーウルフを狩って、Cランクになることもできるけど、十分な力を付けた私たちは、更に深い階層に向かうことにした。次のターゲットは、第8階層より深い階層にいるサーペイントだ。
2人は十分に強い黒魔導士だが、2人とも本当に黒魔導士だ。
つまり、パーティーとしては、意味をなさない。お互いを補うことができない、最悪の組み合わせになっている。
そこで、私が、戦士に変わることにした。というのも、私自身の本当の属性はまだ調べていないから、本当は、別のジョブの方が適性があるかもしれないからだ。
でも、冒険者ギルドで適性を調べて貰うと、その情報がギルドに渡ってしまう。それは、私の転生の事情まで知られてしまい、神官たちに追われてしまる危険がある。
でも、私のスキル鑑定は、まだ、物に対してのみ発動するもので、人や魔物に対しては使うことが出来ない。そこで、実際にやってみて、確認することにした。
これまでで、火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法の属性は確認済みなので、闇魔法の適性を調べる事にした。ポーションは、光魔法で作ることが出来る。したがって、闇魔法では、逆の毒を作ることが出来るはずだ。
私は、また、掌にマナを集めて、毒をイメージしていった。すると、掌のマナは、どす黒く、鈍い光を出した。わたしは、そのドロドロとした液体を空中で移動させながら、空のポーションの瓶の中に入れた。すべての液体が空のポーションの瓶の中に納まり、その他の所に漏れていないことを確認してから、スキル鑑定を発動した。
すると、頭の中で、「毒 初級」と表示された。
これで、闇魔法の属性を持っていることが確認できた。闇魔法で、空間魔法を扱うことができるので、アイテムボックスを作ることもできる。まだ、そこまでのレベルではないが、将来的には作成可能だ。
出来上がった毒をスキル精製で純度を上げてみた。すると、「毒 中級」となった。
更に純度を上げて、「毒 特級」まで、精製することが出来た。これは、1滴でも飲むと普通の人間であれば死んでしまう。とても、危険なので、もう一回り大きな瓶を土魔法でつくり、その中に入れて、2重にしておいた。ついでに、外側の瓶を土魔法で硬化しておいた。
私は、ついでに闇魔法で、「酸 特級」も1本作って、先ほど同じ様に、厳重に保管した。
「キリ、キリ、起きなさいよ!」
「もう少し、寝かせてよ、姉さん。お願い。」
「もう、今日は戦士の適性を確認するのじゃないの?」
「うん。分かった。」
と、昨日の晩遅くに姉のキリに内緒で、闇魔法の練習していたのだった。
「ちょっとやりすぎたかな、ハンセイ、ハンセイ。」
と、姉に聞こえないように、呟いた。
「この鍛冶屋で、まず、武器を調達するわよ。」
「はい。」
「どんな武器が好みかな。リチャードは、斧だったね。
実際に色々試してみて。」
「はい。」
と、姉に言われた通りに、壁に飾られていつ武器を1つ1つ手に取り、試しに振ってみた。
まず、小ぶりの斧を手にして振ってみた。
「イマイチかな?」
次に、両手斧を手に取ろうとすると、姉のキリに注意された。
「あなたは、そんなに頑丈な身体じゃないのだから、盾も使った方がいいよ。」
「そうだね。両手用は止めておくね。」
と、言って、ダガーを手にした。
「ダガーも必要だけど、メインの武器ではないよ。予備の武器と思ってね。
先に、メインの武器を選んでね。」
「はい。」
色々と手に取り試し、ドワーフの店長に相談しながら、オリハルコンの小ぶりの剣を選んだ。
予備の武器として、ダガーも気に入った模様の入ったものを選び、腰につけるためのベルトも購入した。そして、姉に言われたように、小さな軽い盾も買った。
「それじゃ、練習ね。」
と、姉に背中を押されながら店をでると、早速ダンジョンに潜ることにした。
「今日は、あなたが先頭よ。私は、後ろから支援するね。」
「はい、頑張ります。」
「ケッコウ、行くよ。」
第1階層、第2階層、第3階層と一気に進み、今回は、攻撃してきた魔物だけ相手にして、こちらからは、小物の魔物は避けていった。
第4層の休憩用の小屋を素通りして、第5階層に潜った。
ここで、帽子とローブと杖の黒魔導士の必需品を姉に預け、アイテムボックスに保管してもらった。
黒魔導士が戦士の練習をしているなんて、他のパーティーに知れらないように、注意した。
この階層でワーウルフを狩って、戦士としての適性を確認することにした。
スキル探索で、ワーウルフの群れを感知した。私は、目的地に向かったダッシュした。ワーウルフの群れに、一気に近づき先頭の1匹を剣で両断した。
襲いかかってくる他のワーウルフを小さな盾で防ぎながら、どんどん狩っていった。
周りをワーウルフに取り囲まれながらも、次々に襲ってくるワーウルフを倒すことに専念していた。
「危ない!後ろ!」
と、姉の声と共に火球の弾ける音が頭の後ろで聞こえた。
後ろから襲われていることに気が付かなかったようだ。戦闘をしながら、スキル探索を発動するのなかなか難しい。使うスキルが違うように感じた。基本的なことが欠けているようだ。
剣を振りワーウルフを狩るたびに、剣速は上がっていき、消費される体力も減って、どんどんと効率よく狩ることが出来る様になった。
「もう十分よ。戦士としても特に問題はないみたいね。」
「適性はあるみただけど。でも、ちょっとこのままではだめみたい。」
「どういうこと?」
「うん。うまく言えないけど、剣術の基礎が出来ていないみたいなの。」
「そうね。やみくもに剣を振り回しても、一定以上のレベルには、難しいかもね。」
「どこかで、基本から習いたいけど、いい所はないかしら?」
「冒険者ギルドで相談してみる。」
「はい。お願い。」
「それじゃ、すぐに戻りましょう。」
私達は、冒険者ギルドでシェリーに声を掛けた。
「どこかで、剣士の基礎を教えてくれる所はないかしら。」
「そうね、依頼を出すこともできるけど、そんなに長時間でなければ、冒険者ギルドの練習場で教えて貰えるよ。もう一つは、剣士の養成所かな。」
「そうね。考えてみる。」
「でも、誰が必要なの?」
「ちょっと知り合いに聞かれたの。誰かは、内緒よ。シェリーも、私に聞かれたことを内緒にしてね。」
「いいよ。キリの頼みだからね。」
「また、来るね。バイバイ。」
「バイバイ。」
私の素性を明かさずに教えて貰うことは難しいみたいだ。
「他に何かいい手はないかな?」
と、姉のキリが頭を抱えた。
「姉さん。本ってないの?図書館とか?」
「図書館って何?」
「本が沢山置いてあって、自由に読むことが出来る所よ。」
「そうね。神殿には多くの本がおいてあるよ。それと、王宮かな。」
「どちらも、無理かな。」
「あっ、ヤングリーブズのリチャードは、どう?」
「でも、彼って、斧剣士でしょ。」
「似たようなものじゃない?今は基本だけなんだし、いいんじゃないかな。」
「そうかな?」
「彼なら、遊びで済むよ。」
「そうね。分かったわ、姉さん。」
「それじゃ、酒場にいくわよ。」
酒場では多くの冒険者が、食べたり、飲んだりと騒いでいた。
酒場の奥の方に、ヤングリーブズの4人がいた。
「こんばんは。覚えている?」
と、姉のキリがリチャードに声を掛けた。
「もちろんだよ。こんな可愛い子を忘れるわけない。一緒に飲むかい。」
「ご一緒させて貰ってもいいかしら?」
「「もちろん」」
と、カルロス、ローズが声を揃えた。リーナも小さく頷いていた。
「よろしくね。」
「よろしく、お願いいたします。」
「妹は少し硬いね。普通でいいよ。」
とリチャードに言われた。
暫く、ダンジョンの様子を話し、色々と情報を得た。
冒険者ギルドが調査したところ、ダンジョン自体が変動したらしい。地震みたいな地殻変動と同じみたいだけど、通常はないらしい。どこかのダンジョンが崩壊し、そこの魔力がここのダンジョンに雪崩れ込んだらしい。どこのダンジョンが崩壊したかの情報はまだないが、そんなに遠くのダンジョンではないみたいだ。時間がかかるが、やがて安定するだろうと冒険者ギルドは考えているようだ。
安定したら、ダンジョン調査が行われるらしい。それまでは、深層まで潜るパーティーは、待機らしい。リチャードのパーティーも、暫くは待機するようだ。