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48.リーツ王国へ

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

 伝説の武器聖炎神戦斧(ファイ・バトルアック)のことをマルグリット先生から聞いたキリ達は、早速リーツ王国へ、転移魔法で移動した。

 

 リーツ王国の伝説の遺跡の広場は、すぐに分かった。


 キリ達が、広場に到着すると、すごい状況になっていた。広場の中央には、とてつもない大きな穴が開いていた。


 広く深い穴の中央に輝く斧があった。それが、聖炎神戦斧(ファイ・バトルアック)と噂されている斧とすぐに分かった。


 ハルトは、斧を見つけるや否や飛び出し行った。私達もハルトの後を追って行った。穴の中は暗いので、キリは、火魔法で、明かりを灯した。すると、穴の中は、昼の太陽の元の様に、明るくなった。


 キリ達は、その噂の斧を初めて、はっきりと見ることが出来た。


 「凄いね。こんな、斧は見たことがない。」


 「キリ、本当ね。とても、大きいのね。」


 「柄の所の宝飾がまた、独特ね。」


 「これなら、国宝と呼んでも、誰も疑わないな。」


 ハルトが嬉しそうに、声を弾ませて言った。目を輝かせている。本当に、小さな子供に戻ったようなハルトだった。


 「ハルト、遠慮しなくていいよ。手に持ってみたら。」


 「そうだよ。ハルトの為に来たんだから。」


 「私も、そう思います。手に取ってみてください。」


 皆が、口々にハルトを後押しする声を掛けた。


 「分かった。」


 ハルトは、覚悟を決めて、その大きな斧を手にした。ハルトが、柄に触れると、斧全体が輝き始めた。それと共に、


 「ボォー、ボォー。」


 と、恐ろしい音も出し始めた。本当に、炎を纏い始めたような音と光だ。


 「フー、フー。」


 ハルトは、自分を落ち着かせようと、深呼吸を数回行った。それから、斧を両手で持ち直して、縦に頭上から振り下ろした。


 すると、斧の先端から、炎のようなものが飛び出し、穴の壁にぶつかって、大きな爆発音を出した。


 「凄すぎ。これは、本物よね。」


 「キリの言うとおりね。間違いないわ。」


 「私も、そう思います。」


 皆は、この斧が国宝であることを疑いようがないと思った。


 「ハルト、良かったね。相応しい斧が見つかった。」


 キリ姉が、ハルトに声を掛けた。

 

 「でも、キリ姉。これって、僕が貰ってもいいのかな。この国の国宝だから、国王の物じゃないかな?」


 「うーん。そういう考え方もあるね。」


 キリ姉も、歯切れが悪い。

 

 「良いんじゃない。早い者勝ちで。」


 キリが無責任な事を言っている。すると、ミユが声を出した。


 「勝手に持って行ってはいけなと、思います。私は。」


 「そうだね。確かに、確認しないとだめだね。」


 ハルトは、決心した。リーツ王国に会って、この斧を譲って貰おうと。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 キリ達は、トード王国の王宮に向かった。王宮の門の所で、衛兵に呼び止められた。


 「王宮に何用だ。」


 「私達は、国王にお目通りしたいのですが、お取次ぎをお願い致します。」


 キリ姉が丁寧に挨拶をした。


 「国王に会うには、紹介状が必要だ。お持ちかな?」


 「いいえ、紹介状はありません。」


 「それなら、通すわけにはいかない。帰れ。」


 キリ達は、一旦門から離れた。キリが横で怒っている。


 「ムシ、ムシ。」


 キリが、一人、呟いている。


 「そうだ、マルグリット先生の名前を出したら、どうかな?」


 「言ってみるね。}


 キリ姉がもう一度、門番の衛兵に声を掛けた。


 「何度来ても、だめな物は、だめだ。」


 「実は、私達は、トード王国から来れられたマルグリット先生の教え子ですが、それでも、だめですか?」


 「何、あの上級黒魔導士のマルグリット先生に教えて貰っているって。それを先に言わないか。

 マルグリット先生は、この国の宝だ。あれぼどの魔力・知識をお持ちの先生は他にいない。」


 「本当ですか。」


 「本当だとも、あれぼどの先生はいないとも。その先生の教え子なら、少し、私も手助けをさせて貰うよ。」


 「ここで、暫く、待っていなさい。」


 衛兵は、急に態度を変えて王宮に向けて走り出した。


 あの衛兵が帰って来た。少し時間は掛かったが、取次はうまくいったようだ。

 

 「最初に、我が国の宰相に会ってもらうことになった。」


 「はい、結構です。」


 「それでは、私について来てくれ。」


 キリ達が、衛兵に従って、後を付いて行った。


 やがて、大きな建物の門の前に来た。


 「こちらで、宰相がお待ちだ。」


 「わかりました。」


 私達は、次の衛兵に連れられて、大きな部屋に案内された。中に入ると、宰相が私達を待っていた。


 「マルグリット先生の教え子と聞いていたのですが、勇者様もご一緒でしたか。それなら、そうと、言って貰えていれば、すぐに、国王に拝謁出来ましたのに。」


 宰相は、私達を連れて、国王の書斎に入っていった。


 「国王陛下、勇者様とその一行をお連れしました。」


 「何、勇者様だと。」


 宰相に紹介されて、私達は、国王の目の前まで、進んで行った。


 「勇者様、良く来られた。先日は、わが王国の危機を救っていただき、感謝する。

 ザーセン王国の国王に伝えておいたのだが、謝礼をすると、聞き及んでおられるか。」


 「いえ、魔人サンドの事件後、ザーセン王国の国王からは、トード王国の国王からの感謝を伝えられましたが、謝礼の話は、知りません。」


 「そうか、私は、勇者様に何か、謝礼をしたいと思っていたのだ。遅くなったが、何か、希望する物はないか?」


 「リーツ王国の伝説の遺跡の広場にある斧を頂きたいです。」


 「何、斧だと。

 宰相、【伝説の遺跡の広場にある斧】の事は、知っているか?」


 「はい、存じておりますが、それが、何か。」


 「勇者様が、御所望だ。すぐに、ここに持ってまいれ。」


 「国王様、それは、無理でございます。」


 「何が、無理なんだ。」


 「いえ、実は、兵士を遣って、運ばそうとしたのですが、動かないのです。

 何人掛かりでも、何時間かけても、無理でした。全く動かないのです。」


 「そうか、では、どうしよう?」


 「国王様、今、私の手元にあります。勝手に、持ってきてしまい、申し訳ありません。」


 「何と、ここにあるだと。私にも、見せてくれないか。」


 「はい、これです。」


 ハルトは、国王に勝手に持って来た斧を見せた。


 「これは、これは、凄い斧じゃの。」


 「本当だ、あの時の斧に間違いありません。そんな、何故、動かせるのですか。」


 「宰相、何を言っている。勇者様だから、動かせるのだ。当然であろう。」


 「はっ、はっー。恐れ入りました。」


 「よし、よし。その斧は、もう、勇者様の物だ。好きに使うが良い。」


 「本当ですか。嬉しいです。」


 ハルトは、本当に、心から喜んでいる。本当に、小さな子供のような喜びようだ。


 国王の前でなければ、「やったー。」と言って、飛び跳ねていると思う。


 これで、ハルトも聖剣に代わる自分独自の武器を手に入れた。

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