38.トード王国の魔人
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
トード王国の王宮の広場に現れた魔人は、今度は、国王と押し問答を始めた。
国王の横に居たハルトは、いよいよ、我慢できない様子だ。いつ爆発しても、おかしくない。
しかし、魔人サンドと言う人物は、何を考えているのだろう。やはり、暇なだけだろうか。
ハルトの様子を見ていたキリ姉は、思念伝達で、ハルトに話しかけた。
「ハルト、国王は無視したらいいよ。」
「はい、そうします。」
キリ姉は、ハルトの返事を聞くと、次に、思念伝達で、ミユに話しかけた。
「ハルトを援護してね。まずは、スキルを使って、ハルトを強化しておいて。」
「はい、わかりました。」
ミユは、キリ姉の指示通りに、「スキル魔力耐性向上」「スキル物理攻撃向上」「スキル攻撃速度向上」をハルトに掛けた。
ハルトは、国王の横から、魔人サンドの方に歩み寄りながら、大斧を構えた。そして、ミユのスキルで強化されていることを、身体で感じていた。
「魔人サンド、勝負だ。逃げるなよ。」
魔人サンドも、やる気満々だ。戦闘態勢に入って、ハルトを睨みつけた。
「まずは、こちらから、行かせてもらうぞ。
土壁地獄」
「グッァー、ウッ、ウッ。」
「ほう、これに耐えるとはな。流石勇者だな。」
ハルトは、土魔法の耐性を持っていない。そのため、魔人レッドの時と違い、かなりのダメージを受けている。すでにHPを3割ほど、削られている。
しかし、受けたダメージをものともせずに、ハルトは、魔人サンドに大斧を打ち下ろした。動きは、魔人レッドの時より速い。というのも、魔人サンドは、結界を一切張っていないからだ。
魔人サンドは、ハルトの攻撃で、左腕を切り落とされた。しかし、暫くすると、新しく腕が生えて来た。
「俺に傷を負わすとは、流石だな。だが、これぐらいでは、俺は倒せないぞ。」
魔人にしては、不用心だ。戦闘経験が少ないのかもしれない。
キリ姉は、ハルトのダメージを測り、思念伝達で、ミユに話しかけた。
「ハルトに、治癒魔法を掛けて、出来れば、継続的に。」
「はい、わかりました。」
ミユは、返事と共に治癒魔法を発動した。まずは、最上級治癒魔法を発動した、これにより、ハルトのHPは全回復した。更に、最上級継続治癒魔法を発動した。これにより、一定時間の間、継続的にHPが回復していく。
「よし、行くぞ。」
ハルトは、ミユの治癒魔法を感じながら、魔人サンドに連続攻撃を開始した。
「オリャ、オリャ。」
流石に、この連続攻撃には耐えきれずに、魔人サンドは地面に崩れ落ちた。魔人サンドのHPは、0となった。だが、死んだわけではない。聖剣でなければ、死なない。
「ウッ、ウッ。油断した。俺としたことが、不甲斐ない。」
これを見ていた、キリは、素早く、闇魔法で、魔人サンドの周りに結界を張って、転移魔法の発動を妨害した。更に、闇魔法で創ったマナを吸収するバリアを魔人サンドの身体全体にコーティングした。
「何だ、これは?誰だ、気持ち悪いことをする奴は!変な物を俺の身体に付けるな!」
少しずつではあるが、魔人サンドのMPが削り取られている。更に、加速するために、ダンジョンで使っているマナを吸収する装置を先ほどのコーティングしたバリアに接続した。
「ウォー、ウォー。止めてくれ。お願いだ!止めてくれ。」
魔人サンドのMPが一気に減少した。まだ、転移魔法ぐらいは使えそうなので、装置をもう一台追加した。MPの減少が一気に加速した。これで、転移魔法すら発動できないほどのMP量になった。
魔人サンドは、HP,MPともにほぼ0となった。これで、身動きが取れないはずだ。
キリは、念のため、今度は、光魔法で、バリアを作り、先ほどの装置ごと、魔人サンドの身体を結界の中に閉じ込めた。
「キリ姉、終わったよ。」
キリが、キリ姉の耳元で囁いた。
「ご苦労様。」
キリ姉も、キリの耳元で、囁いた。それから、キリ姉は、思念伝達で、ハルトに話掛けた。
「ハルト、そろそろ、帰ろうか。」
「はい、わかりました。」
「ハルト、悪いけど、魔人サンドの身体を運んでくれる。」
「はい。」
ハルトは、魔人サンドの身体を軽々と抱えると国王に別れを告げた。
ハルトが近くに来たので、皆一緒に、転移魔法で、本部に移動した。
キリ達が、消えた後、トード王国の国王は、ザーセン王国の国王に神具を使って、感謝の意を伝えた。その時に、後日、謝礼をすることも伝えた。
ザーセン王国の国王は、トード王国の国王に感謝されたことを喜んで、神官長ロシーアンによくやったと、ねぎらった。
思いもかけない国王の言葉に、神官長ロシーアンは、びっくりした。そして、勇者が、自分の意に沿って、動いてくれたことに驚いた。
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本部に戻ったキリ達は、食事をして、少し休むことにした。
食事をしながら、キリは、今夜の実験の事を考えて、ワクワクしていた。それが、顔に出ていた。
「キリ、何をニヤニヤしているの?」
「えぇ、何でもないよ。」
と言いながら、また、顔がにやけていた。




