37.策士の正体
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
キリは、通路から戻って来たパープルに尋ねた。
「侵入者は、そんな様子だった?」
「うん、老人だったよ。」
「老人、本当に?」
「少し話しかけてきて、すぐに消えたよ。」
「何を言っていた?」
「『面白い。いずれ、また、会うだろう。』って、言ってたよ。」
「何が面白いのだろうね。」
「そうだ、私の事を獣人って、呼んでいたよ。」
「獣人って、言っていたの。ワーキャトじゃなくて。」
「そうだよ。獣人って言っていたよ。」
「そうか、冒険者じゃなさそうだね。」
「うん、老人だからね。」
「そういう意味じゃないよ。冒険者としての活動はしていなかっただろうということだよ。」
「うん、わかった。老人だものね。」
「昔から、老人じゃなかったと思うよ。」
「でも、老人だよ。」
「まあ、いいか。」
何故か、パープルと話が合わなかったが、今度会う時は、私も見てみようっと。
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キリは、思念伝達で、レオとヴァルゴから、報告を受けた。先日、リーツ王国の国王から、聖剣の情報を急いで聞き出して欲しいと、依頼していた。
『魔王は、聖剣で倒さなくては、死なない。そして、聖剣が正常に働くためには、光魔法で、聖剣を満たしてやらなければならない。
このことは、代々聖剣を受け継いできた国王しか、知らないことだ。そのため、国王から聖剣を受け取る必要がある。その時に、国王から聖剣の歴史が語られる。』
キリは、2人から報告を受けた。やはり、聖剣でなければ、魔王を倒すことが出来ないようだ。しかも、聖剣を扱うのは、光魔法が使える者しか、だめだ。
ハルトは、光魔法が使えない。やはり、ハルトでは、魔王討伐は無理なようだ。
以前、ステータスを見たときに、「斧戦士」とあったのは、事実だろう。いつか、このことを伝えなければならない。伝えるなら、早い方が良いのだろう。このことは、キリ姉から伝えた貰うのが良いと、キリは思った。
私より、キリ姉の方が説明が上手だから。それに、私は面倒ごとは嫌だから。
キリ姉に丸投げするって、決めたキリは、すっきりした気分になった。
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トード王国に、魔人が現れたという情報が流れた。それは、トード王国の国民の間に、すぐに広まった。ほぼ、一瞬の内に、すべての国民が知ることとなった。
そして、そのことは、トード王国の国王からザーセン王国の国王にも伝えられた。トード王国の国王は、国宝の神具を使って、ザーセン王国の国王に直接伝えた。「すぐに、勇者を寄越して欲しい。」と、切実な要望だった。
ザーセン王国の国王は、依頼を受けて、直ちに勇者をトード王国に派遣するように、神殿に居る神官長ロシーアンに伝えた。神官長ロシーアンは、未だ、国王に勇者が不在であることを報告していなかった。しかし、そのことには触れずに、すぐに勇者を送ると、返事を出した。
一方、トード王国の王宮に現れた魔人は、のんびりとした行動をとっていた。まるで、王宮に居座るかのようだ。
少し遅れて、キリ姉の耳にも、この情報は届いた。キリ姉から、思念伝達で、キリ・パープル・ミユ・ハルトにも伝えられた。
ハルトに至っては、すぐにでも、トード王国に行こうとしていた。多分、先日の魔人レッドへのリベンジ成功が影響を与えたのだろう。
キリ姉も、ハルトを止める理由もないので、言ってもいいと、許可を出した。
私達は、トード王国の王宮の図書館に接続している施設に転移魔法で移動した。
そこから、一旦、隠密魔法を起動して、王宮の広場に向かった。
王宮の広場には、魔人を取り囲んで、近衛兵達や神官達がいた。そして、国王や神官長もその場に揃っていた。
何やら、魔人が大声を張り上げている。
「俺は、魔人サンドだ。しばらく、ここだ厄介になるつもりだ。よろしく、頼むぞ。」
「そんな、勝手なことは許されない。とっとと帰れ。」
取り囲んでいる近衛兵達が、口々に返答した。
「お前たちは、黙っていろ。まずは、国王を呼んで来い。」
「お前のような者の要求は聞くことは出来ない。」
「「帰れ、帰れ。」」
またもや、近衛兵達が、返答している。
近くの神官達が、「この押し問答を、いつまでやるつもりだ。いい加減にしてくれ。」と、ぼやいているのが、聞こえて来た。
どうやら、魔人サンドは、ここに着てから、永遠と、このやり取りをしているようだ。
どうも、楽しんでるように見える。相手をして貰えて、喜んでいるようだ。
国王や神官長も近くにいるのに、何もしようとはしない。
近くの神官達によると、「国王は、勇者が来るのをひたすら待っているようだ。」と言っている。
キリ姉は、思念伝達で、ハルトに尋ねた。
「どうも、ハルトを待っているようだよ。どうする?」
「私は、戦いたいです。頑張ります。」
「そうか、戦いたいか。でも、頑張らないでね。危なかったら、すぐに言ってね。」
「はい、わかりました。」
ハルトは、返事をするや否や、隠密魔法を解除して、広場の中央に出ていった。
「魔人、待たせたな。私が、勇者だ。」
「何、勇者だって、俺は勇者など、待ってはいない。国王を出せ。」
すると、いままで、隠れていた国王が、神官長や神官・近衛兵に守られながら広場に姿を現した。
「国王なら、ここに居るぞ。
勇者よ、よく、参られた。私の横に来るがいい。」
呼ばれたので、仕方なく、ハルトは、国王の傍に行った。
国王は、ハルトを横に置き、落ち着いたようすだ。逆に、ハルトは、早く戦いたくてうずうずしている。落ち着きがない。




