27.ダンジョンからのアラーム
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
急に、ダンジョンからアラームが伝えられた。これは、ダンジョン内のマナの密度が一定以上になり、装置が動き出したということだ。
ウディーア王国とザーセン王国の国境にある中級ダンジョンからのアラームだった。装置自体は正常に動いているようだ。これは、ダンジョンの出入口からダンジョン内にマナが流れ込んで来たということだ。というのも、ダンジョンは、全体をバリアで囲まれている。だから、マナが流入するとすれば、ダンジョンの出入口以外には考えられないからだ。
おそらく、近くのダンジョンで勇者が制圧を行ったのだろう。また、一つのダンジョンが崩壊した。ダンジョンコアは、勇者が持ち去ったのだろう。今から行っても、無駄だな。
ザーセン王国の上級ダンジョンの一つが崩壊したとすると、他のダンジョンも危ない。以前のダンジョンコアは、私達が13個も、分捕ってしまっているから、それを補おうとして、多くのダンジョンが制圧されていくと思われる。
ザーセン王国だけであれば、まだ、いいのだが、他の王国も危ないな。
レオとヴァルゴの2人に依頼した仕事は、もう少し時間が掛かりそうだ。何か、対策が必要かもしれない。
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キリから、新しい勇者が現れたと報告があった。
キリ姉は、思念伝達で、キリに連絡を取った。
「京山心結というのか。一度、会っておこうか?
キリ、そちらの様子はどう?」
「勇者と神官長に呼ばれていた少女に会ってるよ。
でも、まだ、何も知らないみたい。
それと、勇者じゃないみたい。私の結界も簡単に破られたよ。」
「そうなの。結界が破られたのなら、色々と対策を考えないといけないね。
すでに、色んな所に使っているから。」
「そうだね。ちょっと、心配になってきたね。
キリ姉、この勇者、どうする?」
「もう少し、キリが話を聞いておいてくれる。
それを元に、もう少し考えてみるね。」
「はい、わかった。」
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キリは、キリ姉との思念伝達を終えた。
ザーセン王国の神殿の図書館横に作った隠し部屋には、パープルと私と勇者が居る。
「京山心結って、堅苦しいから、ミユと呼んでいい?」
「はい、構いません。」
「ミユは、この世界で、何がしたいの?」
「何がしたいと言いますと?」
「召喚された目的は聞いている?」
「いいえ、まだ、何も聞いていません。暫く、休んでおくようにと言われただけです。」
「そう、他に勇者が居るって、聞いている?」
「いいえ、本当に何も知らないです。」
「別に、問い糺すつもりはないよ。単に、聞いているだけだよ。
じゃぁ、元の世界に戻りたい?」
「それはありません。前の世界での楽しい思い出は、何もないです。」
「そうか、それじゃ、この世界で生きて行く、ってことで、いいのね。」
「はい、そのつもりです。少し、私から、聞いてもいいですか?」
「いいわよ。何かな?」
「勇者って、何人もいるのですか?」
「さあ、私は知らない。他は?」
「私は、勇者ですか?」
「わぉー、それを聞く?」
「私自身は、違うと思うのです。それで、本当のことを知りたいのです。」
「そうね、私も分からないけど。
ミユを召喚した人は勇者のつもりでしょうね。」
「そうですか。わからないのですか。」
ミユは、少し残念そうにしている。本当に、知らないみたいだ。
「そうね。私は、勇者じゃないって、思っているけど。
本当かどうかは、わからないわ。」
「私は、これから、どうなるのですか?」
「どうもしないよ。でも、この秘密の部屋を知られたから、神殿には、返したくないけどね。」
「えっ、ここは、神殿の中ではないのですか?」
「そうよ。神殿の中ではないよ。それに、どう見ても、私達は、神官に見えないよね。」
「そうですね。神官には、見えませんね。」
「ミユ、こっちの部屋に来る前に、変な壁があったでしょ。覚えている?」
「はい、奇妙な壁がありました。」
「この世界では、魔法が使えるの。それは知ってる?」
「いいえ、初めて聞きます。」
「そうか、魔法じゃないのか。それじゃ、スキルだね。
てっへぇ、失敗、さっき見たのに、うっかりしちゃった。」
「あのー、何のことですか?」
「いいの、いいの、聞き流してね。いや、忘れてね。」
「こんなこと聞いてもいい?」
「えっ、何も言っていませんよ。」
「聞き難いのよ。でも、聞くね。
この部屋を見たから、神殿に返したくないの。
分かるわね。」
「いいえ、わかりません。」
「うーん、そう言わないでよ。
私は、あの神官長と言っても、わからないか。年輩の神官、好きじゃないの。
だから、ミユを返したら、あなたまで、嫌いになってしまうかも?
でも、そうなりたくないの?
だから、どうする?
神殿にもどる?」
「わかりません。どうしたらいいのか。」
「仕方ないね。ここで、死んで貰いましょうか?」
「えぇっ、嫌です。せっかく、新しい命を貰えたのですから。」
「ほら、あの神官長に恩を感じているのでしょ。」
「それはないです。あの年輩の神官には、何も感じていません。
多分、これからも、感じないと思います。」
「そうか、難しいね。暫く、私達と生活して見る?
どうせ、この部屋を見られたのだし、死ぬか、生きるか、後で、決めてね。」
「今は、生きていたいです。一緒に、生活させて下さい。」
「いいわ。ちょっと、待ってね。」
私は、キリ姉に、報告した。キリ姉にも、了解して貰えた。
「パープル、あなたもいいわね。」
「はい、いいです。」
「よし、よし。パープルは、可愛いね。」
私は、パープルの頭を撫でてあげた。
「まあ、逃げられても仕方がないね。
取り敢えず、街でも歩きましょうか。」
私は、パープルとミユを連れて、街の近くに転移魔法で、移動した。
「どう、初めての魔法は?」
「瞬間移動ですか?すごいですね。」
「いいえ、転移魔法ですよ。
まあ、呼び名なんて、何でもいいけど。」
「私も、使えますか?」
「今すぐには、だめだね。まず、マナを扱えなければ。
マナって、魔力のことで、魔法を使う時のエネルギーみたいなものだよ。
それは、どこにでもあるよ。ミユの身体の中にもあるよ。」
私は、街の中を歩きながら、マナの扱い方や簡単な魔法を教えていった。ミユは、闇魔法以外はすべての属性を持っていた。
「ミユは、お腹空いていない?」
「少し、空いています。」
「そうか、空いているのか。だったら、何か、食べないとね。」
私は、甘い物が有名な店に入って行った。遅れて、パープルとミユが入って来た。
「ここは、ケーキがおいしいの。パープルとミユも、一緒でいい?」
「「はい。」」
店員を呼び、ケーキセットを3人分用意してもらった。飲み物は、パープルがいるので、冷たい物にしておいた。
私達は、街を歩きながら、色々な店に入り、この世界を知って貰った。そして、歩きながら、魔法の練習をしていった。
ミユを魔法学院の寮に泊めることはできないので、サンライズ商店の本店の地下施設に連れて行った。
「ミユ、今日は、ここで泊まってね。」
「はい。わかりました。」
「何かあったら、パープルに言ってね。
パープル、いいわね。」
「はい、面倒みる。」
「よし、よし、それでいいよ。」
「それじゃ、私は、行くね。また、明日。バイ、バイ。」
私は、ミユをパープルに任せて、魔法学院の寮に帰ることにした。まだ、ミユを信じることはできないけど、召喚者なら、仲間にしたい。そのためには、多少のリスクは、仕方ないかな。
まあ、私が召喚者だということだけは、まだ、黙っていないと危険だけど。それ以外なら、知られても、どうっていうことはないはず、だよね。
わたしは、一人、自分に言い聞かせて、勝手に、安心した。




