26.新たな召喚魔法
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
ザーセン王国の神殿では、以前より準備してきた神具の魔力が満たされた。これにより、神聖な儀式を行うことが出来る。
それは、【勇者召喚】だ。ザーセン王国の神官長ロシーアンは、配下の神官に儀式の準備を指示した。
今回は、国王には秘密裡に行うことにした。それは、以前召喚した勇者では、この王国を守ることが出来ないことを、国王に知られたくないからだ。神官長ロシーアンが認めた勇者が役に立たないということを自ら認めるわけにはいかない。だから、この儀式は絶対に知られてはならないのだ。
「神官長、準備が整いました。」
「魔法陣と神具の配置に間違いはないな。」
「はい、大丈夫です。複数の上級神官で確認しております。」
「よかろう。それでは、神殿のサモンの間に行こう。」
神殿のサモンの間では、上級神官達が魔法陣と神具を取り囲んでいた。一人の上級神官が神具を両手で頭上に上げると、5人の神官が輪を作るように集まって来た。5人の神官も神具を両手で支えた。
6人の神官に支えられた神具は、魔法陣の隅の1つの五芒星の上に置かれた。
神官長の詠唱と共に、すべての神官が詠唱を行い、儀式が始まった。
暫くして、魔法陣の中央が明るく輝きだした。それと共に一人の少女が蹲った状態で現れた。
「よし、よし、これでいい。」
神官長ロシーアンは、ひとり呟きながら少女に駆け寄った。
「勇者様、ご苦労様です。ご気分はいかがでしょうか。」
「少しふらついていますが、大丈夫です。ここは、どこですか?」
「ここは、神殿の中です。あなた様は、私達の勇者として、召喚されたのです。」
「えぇっ、私が勇者ですって。本当ですか?」
「はい、本当です。」
「でも、私には、その自覚がありません。」
「急な事で、戸惑われていると思いますので、お部屋で暫くお休みください。
誰か、勇者様をお部屋に案内しなさい。」
すると、上級神官が3人駆け寄ってきて、勇者と呼ばれる少女を連れて行った。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ。無事終わった。これで、わしは安泰じゃ。
おい、お前たちは、この部屋を片付けよ。それから、神具を宝物庫で保管しておけ。
魔法陣を消すのを忘れるな。」
神官長は、指示をすると、一人部屋から出て行った。
ここに、新たな勇者が一人召喚された。しかし、不思議な事に、神官長は、勇者の能力については、一切調べようとはしなかった。少女が召喚されたというだけで、満足していた。つまり、若いというだけで、満足していた。
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レオとヴァルゴの2人から報告があった。無事、ウディーア王国のすべてのダンジョンに特殊な仕掛けを付けることが出来たらしい。設置する機材などの大量生産が始まって、まだ、1ケ月しか経っていないのに、もう、完了している。この、2人は、優秀だ。
そこで、リーツ王国から始めて、イーゼル王国、トード王国の順に同様の作業をするように、依頼した。
ザーセン王国とリーグリ王国については、暫く静観するつもりだ。
ザーセン王国では、勇者がダンジョンを制圧している可能性がある。それと、遭遇しないためだ。
そして、リーグリ王国については、国王の影響力がなく、神官長の力が絶大で、王国として不明な点が多いためだ。
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新たな勇者京山心結は、案内された部屋の中で考え込んでいた。
眩しい光に包まれて、気が付くと、どこかの国の神殿の中で、神官達に囲まれていた。
年輩の神官から、「勇者」と言われたが、全く実感がない。前世では、家族から虐められ、逃げ出したいと何時も思っていた。両親と兄が旅行に出かけた間、私は、縄につながれ、何も食べれなかった。いつしか、動くことすら、出来なくなった。だから、この異世界に召喚されて、私は、喜んだ。
でも、私が勇者とは考えられない。このままでは、この異世界でも邪魔者になってしまう。役立たずと知られる前に何とかしないといけない。
しかし、常に誰かが、私の傍にいて、一人になる事すら出来ないでいる。この世界に来て、もう、1週間が経ったが、まだ、一度も、神殿の外には行ったことがない。何度頼んでも、許可されない。
神殿の中については、割と行動が自由に許された。ただし、常に見張られていたが。
あるとき、廊下の途中で、行き止まりの場所があった。どうも、私と同じように誰かが、閉じ込められているようだった。それについては、誰も教えてくれなかった。
また、ある時、図書室で本を読んでいた時だ、何か、部屋の隅で動いている気配を感じた。このことも、傍にいた神官に伝えたが、何も無いと言うだけで、全く私の話に耳を傾けてくれない。
しかし、何かいるという感覚は疑いようがない。私は、本を探すふりをして、部屋の隅に移動した。
部屋の隅の壁の一部に違和感を感じた。他の壁と何か、違っていた。どう違うのか、はっきりとは言えないが、確かに違う。
私は、少し、怖かったが、思い切って、その違和感がある壁を手で触った。すると、手が、壁の中に消えていった。
「うわぁ、何、これ?」
思わず、大きな声を出してしまった。私の声を聴いた神官達が集まって来た。
「勇者様、どうかされましたか?」
「大丈夫ですか?」
矢継ぎ早に聞かれた私は、少し、深呼吸をしてから答えた。
「大丈夫です。何でもないです。少し、よろけて、転びそうになっただけです。」
「わかりました。お気を付けてください。」
「はい。もう、いいですから、一人にしてください。」
「はい、近くに居ますので、何かあればすぐに呼んで下さい。」
神官達が離れたのを確認してから、もう一度、違和感がある壁を触ってみた。すると、やはり、手が壁の中に消えていった。でも、手の感触はある。つまり、見えなくなっただけだ。
よく分からないが、思い切って、そのまま、壁の中に入っていった。すると、その壁の先には別の部屋があった。そして、何かが、忙しそうに動いていた。まるで、ロボットのようだった。
「こんにちは。」
私は、声を掛けて見た。しかし、返事はない。
「こんにちは。言葉がわからないの?」
でも、反応はなかった。しかたがないので、私は、部屋の中を調べることにした。
部屋は、特別教室ほどの広さで、廊下の先には、また、別の部屋があるみたいだ。
何があるか分からないけど、どうせ、一度死んだのだのだからと、自分に言い聞かせて、廊下に出た。廊下の突き当りには、階段があった。それを降りていった。すると、また、別の部屋があり、ロボットが動き回っていた。
沢山のロボットが動いていたが、その中で1台、監視しているロボットがあった。それと、目が合ったとたん、そのロボットが光り出した。
私は、訳がわからなくて、固まってしまった。すると、後ろから、声を掛けられた。私が振り向くと、そこには、猫耳の少女が立っていた。獣だけど、優しそうな顔で、私は何故か、怖くなかった。
「お前は、誰だ。ここで、何をしている。」
パープルが、京山心結に話しかけた。
「私は、京山心結といいます。間違って、ここに来たみたい。」
「嘘を言うな、ここは、入れないはずだ。」
「私にも、分からないけど、入れたの。」
「ちょっと、待て。」
猫耳の少女は、何か、考え込んでいるような素振りだ。でも、時々、頷いている。ひょっとして、誰かと喋ってる?
「お前は、召喚者か?」
「多分、そうだと思います。」
「勇者は、少年のはずだが、お前は、女じゃないか。」
「よく分からない。でも、神官達が私を勇者様って言っているよ。」
「そうか。
・・・。わかった。
私と一緒に来てもらおう。」
「はい。」
私は、素直に猫耳の少女の後を付いて行った。暫くすると、テーブルと椅子が置かれた部屋に案内された。
「ここで、座って、待つように。」
「はい。」
暫く待っていると、小さな女の子がやって来た。その子は、猫耳の少女を見るなり、頭を撫でていた。すると、猫耳の少女は、嬉しそうに、声を出していた。
「お待たせ、私は、少女よ。って、当りまえか。
京山心結と言ったね。神官達に召喚されて、勇者と呼ばれていると聞いたけど、間違いない? 」
「はい、その通りです。」
「この世界の事は知っている?」
「いいえ、この建物の中しか見ていませんので、よく分かりません。」
「うーん、ところで、あなたは、何歳?」
「私ですか?前の世界では、16歳です。」
「そうか、若いね。高校生?」
「そうです、高校2年生です。」
「そうか、いいね。若くて。」
京山心結は、勇者として召喚されて、神殿の中に閉じ込められていたようだ。まだ、何も仕事を依頼されていないようだ。召喚されて、1週間ぐらいなので、休ませていたのだろう。
しかし、なぜ、結界を破って、この部屋に入れたのか、不思議だ。
私、キリには、スキル鑑定があるが、まだ、人に対しては使えない、というか、使ったことがない。スキルも、使わないとレベルアップしないから、だめもとで、使ってみるかな。
【ステータス】
名前:京山心結
種族:人間族(女)16才
職業:無職
LVレベル:1
HP(最大体力量):100
MP(最大魔力量):1000
魔法:土魔法(LV1)、火魔法(LV1)、水魔法(LV1)、風魔法(LV1)、光魔法(LV1)
スキル:解呪(LV1)
「おぉー、見えるじゃん。」
「スキル鑑定 レベルアップしました。」と頭の中で響いた。あれ、これも始めてかな。気持ち悪い。
「そうか、解呪が使えるのか。
そうすると、ヤバいな。レベル1で破られている。
でも、勇者じゃ、仕方がないな。
?勇者と出ていないよ。」




