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21.魔王軍の四天王現る

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

 今日は、キリ姉と一緒に杖を買いに街に行くことになった。キリ姉は、エルミアも誘ったようだ。


 「キリ、行くわよ。」


 「はい、わかった。」


 キリ姉の横には、エルミアがいた。キリ姉の腕にぶら下がるように、自分の腕を絡ませていた。


 私も、負けじと、キリ姉の反対の腕に、自分の腕を絡ませた。


 「もう、二人とも、何をしているのよ。腕が邪魔で、歩けないわ。」


 「キリ姉、私が引っ張っていくから、大丈夫よ。」


 「いいえ、私が支えます。キリさんは、離れていていいですよ。」


 エルミアが、キリ姉を引っ張って行こうとしている。私も、負けないから。


 3人が、団子のように、くっ付いて、歩いていると、いつの間にか、道具屋に着いていた。大きな門構えの店で、大きなガラスの窓から、中を覗いてみると、お客も少なく、ゆったりとした部屋の作りだった。

 

 私達は、キリ姉を先頭に、店の中に入っていった。すると、1人の店員がキリ姉に声を掛けて来た。


 「いらしゃいませ。今日は、どのような品をお探しでしょうか?

 良ければ、お聞きします。」


 「今日は、魔術師用の杖を見たいのですが、いいですか?」


 「はい、わかりました。ところで、今お持ちの物の代わりの物をお探しですか?」


 「いいえ、この杖は、そのまま使います。補助用に新しく杖を買いたいのです。」


 「そうですか、それでは、簡易の杖がよろしいですね。持ち運びに便利な小ぶりの杖を見てみますか?」


 「はい、お願いいたします。」


 「こちらに、ございます。」


 私達3人は、店員の指示している方向に移動した。


 1mぐらいの短い杖が並んでいる。でも、子供用という感じではなく、しっかりした造りの物ばかりだ。そして、すべての杖に細かな模様が施されており、とても、綺麗で優雅だった。


 キリ姉は、実際に手に取り、手に馴染むかどうかを確認しているみたいだ。


 「キリ、これは、どうかしら。例の細工をするのに問題がないか。見てくれる?」


 「はい、ここにある物は、どれも大丈夫だよ。本の少しのスペースがあれば良いので。」


 「そう、わかったわ。それなら、これにします。」


 と言って、キリ姉は、店員に1つの杖を渡した。


 「はい、承りました。包装はどうしますか?」


 「そのままで、いいです。アイテムボックスに入れるので。」


 「それでは、こちらで、お会計させていただきます。」


 キリ姉は、冒険者IDを渡して、清算した。


 「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」


 店を出ると、キリ姉が、すぐに、闇魔法の魔法陣の刻印をするように言うので、人目に付かないところで、新しく買った杖に隠密用の刻印をした。


 「いくわよ。」


 私から、杖を受け取るや否や、キリ姉が闇魔法を起動した。


 「うわぁー、キリ姉が消えちゃった。どうしよう?」


 訳がわからないエルミアは、びっくりして、青ざめている。


 「成功ね。エルミア、ごめんね。」


 キリ姉は、魔法を解除して、エルミアを抱きかかえて、頭を撫でている。


 「何が、起きたのですか?」


 「これは、闇魔法の隠密魔法なの。見えなくなるのよ。」


 「凄いです。私、びっくりして、心臓がバクバクです。ほら。」


 エルミアは、キリ姉の手を掴み、自分の胸に押し付けた。

 

 「本当ね。心臓がバクバク、いってる。ごめんね。」


 「もう、急に消えないでください。」


 「はい、はい、わかったわ。もう、怒らないでね。」


 「はい、もう、怒っていません。」

 

 エルミアが、落ち着いたので、3人で、ふわふわのクリームたっぷりのケーキを食べに行くことにした。暫く歩くと、若い子で溢れている店があった。少し、お客が並んでいるようだ。


 「キリ姉、この店にしない?ここのケーキは、生クリームたっぷりなの。」


 「いいわよ。エルミアもいい?」


 「はい。」


 店員に案内されて、店に入っていった。私達は、練乳入りの生クリームたっぷりのロールケーキを食べた。やっぱり、甘いものは最高だ。つい、お代わりをしてしまった。


 食べ終わってからも、暫く街を歩きながら、色んな店を覗いて回った。魔法学院の寮に戻った時には、もう、薄暗くなっていた。


 キリ姉の部屋で、今後の事について、相談をした。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 満月の夜、真夜中、人々が寝静まったころ、それは始まった。


 魔王軍幹部の一人、通称レッドが現れた。彼は、魔王軍の四天王の一人で、火魔法のレベルEXを誇る。魔人レッドは、何の前触れもなく、急に現れた。


 ここは、ザーセン王国の宮殿の中にある広場だ。魔王軍の四天王と名乗る魔人が蒼白い炎と共に現れた。

 

 「我は、レッド。魔王軍の先陣として、やって来た。ここに、勇者がいるだろう。」


 王宮の中は大混乱に陥った。国王は、近衛兵に守られて、宮殿の中の秘密の隠れ部屋にいる。

 

 王宮の兵士が集まって来た。約30人程度になった時、その中の一人が魔人レッドに攻撃を仕掛けた。


 「ドゥリャー。」


 高価な鎧に身を覆っている兵士は、剣を突き出して、突進した。


 「何の真似だ。そのような攻撃が効くとでも思っているのか。お笑いだな。」


 魔人レッドは、微動だにしない。ただ、笑っているだけだ。


 先ほどの兵士は、魔人レッドの2mぐらい前に行くと、急に動きが止まり、苦しみ始めた。


 「グゥァー、ゲフォ。」


 兵士は、剣を前に突き出した姿のまま、顔は苦痛に歪み、口からどす黒い血を出していた。苦しんでいるが、倒れることもできずに、立ったまま息絶えた。


 それを見ているにも拘わらず、2人目、3人目と次々に兵士が、魔人レッドに攻撃していく。しかし、何人になっても、全く変化がない。いずれも、最初の一人と同じ結果に終わった。


 「無駄、無駄、無意味な行動はよせ。」


 王宮の広場は、魔人レッドを中心とした半径5mの範囲を除き、王宮の兵士で埋めつくされた。すると、誰かが、声を上げた。


 「勇者、勇者を呼んでくれ!」


 「そうだ、勇者はどこだ?」


 「勇者!勇者!・・・」


 すると、ただ笑うだけだった魔人レッドが口を開いた。


 「そうだ、勇者を呼べ。

 勇者をここに連れてこい。

 早くしないと、この王宮は燃えてなくなるぞ。」


 数人の兵士が、王宮を抜け出して、神殿に向かっていた。神殿に居る勇者に告げるためだ。


 兵士達は、神殿の扉を荒々しく叩き始めた。


 「ドン、ドン、ドン。早く開けてくれ!」


 「急げ、王宮が大変なことになっている。」


 「ドン、ドン、ドン。」


 漸く、神官が扉を開けた。


 「何事です。何時だと思っているのですか。」


 「早く、勇者を連れて来てつように告げてから、神殿の中に急いで、消えていった。

 暫くして、神官数人に囲まれて、勇者が現れた。


 「おお、勇者だ。勇者が来てくれた。」


 兵士達は、歓喜の声を上げた。


 勇者は、事情を聴くなり、王宮に飛び出していった。そのスピードには、他の誰も追従できなかった。気が付くと、勇者の姿はなかった。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 魔人レッドが居る王宮の広場に着いた勇者は、広場の兵士を横に押しやりながら、前に進んだ。


 兵士の壁が消えると、目の前には、魔人レッドが笑いながら、勇者を見ていた。そして、魔人レッドの周りには、立ったまま息絶えた兵士が何人も見えた。


 「なるほど、君が勇者か。」


 魔人レッドは、勇者を値踏みしているようだ。それには、お構いなく、勇者は剣を振りかざし、魔人レッドに切りかかった。


 これまでの兵士のように、途中で止まることなく、魔人レッドに切りつけることが出来た。

 しかし、魔人レッドは、その攻撃をギリギリのところで避けた。


 「なかなかやるな。しかし、それだけか。」


 勇者の攻撃は終わらずに、何度も繰り返された。


 「はっはっは。そのような攻撃は効かぬわ。」


 それでも、また、勇者は、魔人レッドに切りかかった。


 広場を取り囲んでいた兵士達に、不安が広がっていった。一度抱いた不安は、治まることがなく、どんどん大きくなっていった。


 「さて、今日は、これぐらいにしておこうか。勇者、お前には、致命的な欠陥がある。」


 「何、嘘を言うな。私は勇者、欠陥などあるものか。」


 「ふ、ふ、ふ。そうかな?

 最後に、一つお土産をあげよう。

 火炎地獄インフェルノ


 轟音と共に、勇者の身体は、炎に包まれた。炎の壁に隠れ、勇者の姿が見えなくなった。魔人レッドの姿もいつの間にか消えていた。

 炎の壁が消えると共に、広場の中に大きな穴ができていた。その中は、まるで火山のマグマが流れた後の様に、ぐつぐつと燻っていた。そして、その穴の中心には、勇者が倒れていた。完全に気絶していた。

 怪我は酷いものの命には別条はなかった。勇者は、魔人レッドに破れてしまった。それも、完璧に。


 勇者が敗れたということは、王宮内だけに留められた。王宮以外には知らされなかった。神殿にも知らされることはなかった。勇者が話したなら別だが、王宮側からは、何の報告もなされなかった。

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