18.商人キリ、リーグリ王国に現る
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
ピスケス、タウラス、ヴァルゴの3人は、リーグリ王国の中心の街ノ-トラインにやって来た。
リーグリ王国は、ウディーア王国と同じように、人口10万人の中堅の王国だ。しかし、リーグり王国は、ウディーア王国と違って、歴史のある王国だ。そのため、いたるところに遺跡がある。しかも、遺跡の近くには神殿がある。そして、神殿の近くには、何故か、ダンジョンがある。
ピスケスが、街の様子を見ながら、タウラスとヴァルゴに話しかけた。
「この街、ひょっとしたら、この王国って、変じゃない?」
「どういうこと?わからないよ。」
「普通、冒険者ギルドは、街の出入口付近とか、少なくとも、すぐに分かる所にあるよね。」
「はい。それで?」
「タウラスは、冒険者ギルドがどこにあるか、分かっているの?」
「いいえ、 ピスケスの後を付いて行っているだけよ。」
「もう、そんなんじゃ、だめでしょ!
今から、探してみて?
ヴァルゴも、一緒に探してね。」
「「はい。」」
ピスケスに言われたように、冒険者ギルドを探し始めた。しかし、見渡しても、見つからない。仕方がないので、スキル探索で調べてみた。
「 ピスケスさん、冒険者ギルドって、どんな場所だった?
スキル探索を使っているのだけど、よくわかんない。
見つけられないの。」
「冒険者ギルドって、冒険者が最初に行くところよね。
だったら、すぐに見つけられないとおかしいよね。
それが、街に入っているのに分からないって、おかしいよね。」
「そうだね。どうしてかなぁ?」
「この街、この王国は、冒険者に来て欲しくないということよ。」
仕方がないので、私達は、すぐに目につく、商業ギルドに先に行くことにした。
商業ギルドは、街の出入口の正面に立っていた。大きな建物で、多くの人が出入りしている。とても、活気がある。その横の並びには、宿屋・飲み屋・道具屋など、必要な物がすべて揃っていた。
私達は、商業ギルドのドアを開けて、中に入っていった。
「こんにちは!」
「はい、何でしょうか?」
すぐに、店員が寄って来た。商業ギルドの中にも色々な店が入っていて、店員が行ったり来たりしていた。
「商業ギルドに用があるのですが、何処に行けばいいですか?」
「商業ギルドにどのような用事ですか?」
「この街の商業ギルドに登録しようと思っています。」
「あぁ、そうですか。案内しますので、付いて来て下さい。」
私達は、店員の後を付いて歩いた。暫くして、部屋の奥の階段を登り始めた。
私達も、遅れないように付いて行った。
「こちらが、商業ギルドの受付になります。」
店員が、2階の一番手前の部屋のドアを開けて、入るように促した。
「ありがとう。」
私達が、部屋の中に入ると、商業ギルドの受付の係がやって来た。
「私は、商業ギルドの受付のローザです。よろしくお願いいたします。
今日は、どのような用件でお越し頂いたのでしょうか?」
ピスケスが、商業ギルドの登録に来たことを告げると、広い部屋の中にあるテーブルの1つの前のソファに案内した。
「こちらにお掛けになって、お待ちください。」
係員のローザは、すぐに、書類を持って来た。
「まず、こちらの規約に目を通してください。
何かわからないことがあれば、私に聞いてください。」
ピスケスが、書類に目を通していく、ところどころ、言葉の内容を確認していた。
「はい、内容は了解しました。」
「それでは、こちらの部分に代表者が署名をしてください。
何か、身分を証明するものはありますか?」
「いいえ、ありません。」
「それでは、先に商業ギルドに登録するので、手数料と保証金を頂けますか?」
ピスケスが、金貨をローザに渡した。
「それでは、これが、商業ギルドのIDになります。このIDは、この王国中どこでも利用できます。そして、身分証明にも使うことができます。
次に、この王国で取引が出来る様に、書類を整えます。
暫く、お待ちください。」
「これで、この王国での商活動を自由に行って頂けます。」
「他に何かありますか?良ければ、他の方のIDも作っておきますか?」
「はい、お願いします。
ヴァルゴは、タウラスの従魔なので、その登録もお願いします。」
「はい、わかりました。」
これで、手続きは、すべて完了した。
「もう一ついいですか。」
「はい、何でしょう。」
「冒険者ギルドにも登録したいのですが、場所が分からないのです。」
「冒険者ギルドに登録ですか?商業ギルドの登録したので、それでいいのではないでしょうか。」
「私達は、この街に支店を立てることが一番の目的ですが、ダンジョンで冒険者として活動してレベルアップすることも、考えているのです。」
「ダンジョンは危険ですよ。商人がするようなことではないと思いますよ。」
「リスクは承知していますので、教えてください。」
「わかりました。暫く、お待ちください。」
係員のローザは部屋の奥にいる係長に伺いを立てているようだった。暫くして、ローザが戻って来た。
「この街の冒険者ギルドは、神殿の中にあります。神殿の出入口で、用件を申し出てください。」
「えぇっ、神殿の中ですか?」
「そうです。この王国では、どの街でも冒険者ギルドは、神殿の中にあります。」
「そうですか。わかりました。
それでは、次に、商売の話を聞いて欲しいのですが、いいでしょうか?」
「はい、喜んで。」
ピスケスが、この王国の各街にサンライズ商店の支店を建てて商売を開始したい旨を伝え、それについての相談をした。店舗紹介と店員の手配をローザに依頼して、商業ギルドを後にした。
「この王国で冒険者として活動するのは難しいね。」
ピスケスが、呟いた。神殿では、私達の事がばれてしまうかもしれない。そんなリスクを冒すことはできない。
この王国では、商売を通して、信頼を獲得していく必要がある。そのためには、取引に必要なアイテムを調べることが必須となる。
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この王国に着いてから、4か月が過ぎようとしていた。商業ギルドとは、良好な関係を築いている。各街の支店も、この街ノ-トラインを筆頭にグノーブ、イーゼ、ヴェーナ、クラーゲンフ-ト、シュタイアーマ-クと主要な街にはすでに支店を設置し、順調にアイテムの販売を行っている。また、いつものように、特別な小屋とその地下のマナを基盤としたネットワークの構築も完了している。
それから、今後の発展を考えて、これまで、本部として使ってきたウディーア王国の工場・農場とは別に、本部を作ることにした。その場所は、初めてキリと出会った町トレドだ。
私は、トレドに農場付きの民家を土地付きで購入した。そして、その地下に本部を構築した。いつも通りの地下10階の建物だ。地上は、購入した家屋のままにしておいた。
地上の農地・小屋の管理用にマナドールを3体置き、念のため、小屋と農場全体にバリアを張り、結界を作っておいた。
今回の主な目的は、データセンターの構築だ。簡易版のデータベース管理システムを作ることが出来たので、魔法陣に関するデータベース、アイテムに関するデータベース、魔物に関するデータベース、ダンジョンに関するデータベース、などを構築していく予定だ。
最近気が付いたことだが、現在使っているアイテムボックスは、生きている物を収納できない。つまり、生物ではないマナドールは、収納できるということだ。そして、マナドールは、アイテムボックスの中で活動できるようだ。動作には、いくつかの制限があるようだが、データベースの操作などに関しては、問題なく動かすことができる。
アイテムボックスの中にマナドールを入れて作業させることの利点は、もちろん、空間拡張魔法で作られた広いスペースを使えることもあるが、時間遅延魔法により、経過時間がゆっくりとなるが、作業は通常空間と同じようにできるということだ。つまり、作業時間がほぼ0になった。
私は、マナドールを10体を上級アイテムボックスに入れて、作業を開始させた。また、その他の階にも他の場所の工場と同様に施設を構築しておいた。また、従来のネットワークにも組み込んでおいた。
全体としては、順調に進んでいるのだが、ただ、肝心な情報の収集は一向にはかどらない。見通しすら立たない状態だった。誰が、いつ、何の目的で、ダンジョンコアに魔法陣を刻印したのか、また、どのようにして、あのような複雑な魔法陣を刻印できたのか。何もわかっていない。




