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14.魔王軍の侵攻

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

 いよいよ、魔王軍が動き出した。各地にある上級ダンジョンから、魔物が溢れ出してきた。一次的には、魔物を押しとどめるが、王国軍の兵士の被害が大きく持ちこたえられない。


 一部の魔物が街や村を襲う。魔物から逃げる人々が、難民となって、より安全な地域に移動している。


 私達の居るウディーア王国の避難民は南方の避難所への移動をほぼ完了した。


 しかし、まだ、十分な食料の確保には至っていない。また、冒険者ギルドの上級ダンジョンの調査は、まだまだ時間が掛かりそうだ。すでに、1週間は経ってしまった。


 パープルに依頼した仕事も、あまり順調ではないようだ。まだ、30人にも満たないらしい。でも、こちらの特級ダンジョンの調査もあるので、一度戻ってくるという。


 「久しぶり、パープル。」


 私は、飛びついてきたパープルの頭を撫でてあげた。パープルは、喜んで、フサフサの尻尾を振っている。


 「ご苦労様、それで、集めた仲間はどうなった?」


 キリ姉がパープルに聞いた。


 「イマデ、38ニンニ ナッタ。10ニンクライニ シゴトヲ ツヅケテモラウ。」


 「そう、もう少しね。残りはどするの?」


 「ノコリハ、コチラニ キテモラウ。」


 「それで、いいよ。キリもいいよね。」


 「はい、キリ姉。」


 パープルには、これまで、同族のワーキャットを見つけて、仲間にしてもらっていた。それが、38人になったという訳だ。今後の事を考えると、多ければ多いほどいいので、引き続き仲間集めを継続して貰う。


 私達は、魔王軍の魔族に見つからないように特級ダンジョンの出入口まで、たどり着いた。


 「キリ、パープル、用意はいい?」


 「はい。」「ハイ。」


 「それじゃ、潜るわよ。」


 「キリ、スキル探索をお願い。」


 「特に強い魔物はいない。進んで、大丈夫よ。」

 

 私は、スキル探索を用いて、周囲の敵を探知した。しかし、レベル50以上の敵はいない。


 範囲攻撃で一気に倒すことが難しい魔物以外は無視することにした。


 第35階層になって、やっと、レベル55の魔物が現れた。それは、ポイズン・サーペイントだった。普通のサーペイントに比べて、毒性の高い毒液を吐く。単なる毒ではなく、麻痺性の毒も混ざっている。


 「キリ、正面で、相手の攻撃を受け止めて!」


 「はい、キリ姉。」


 私は、自分自身に闇魔法でバリアを張って、ポイズン・サーペイントの前で、剣と盾を構えた。ポイズン・サーペイントは、上体を反り上げて、私を見下ろしている。


 「シュー、シュー。」


 ポイズン・サーペイントが舌を出しながら、嫌な音を出している。


 最初は、頭を振り下ろして、私を噛み殺そうとした。私は、盾で攻撃を受け止め、素早く胴体に切り込んだ。しかし、鱗に囲まれた胴体は固く、一度の攻撃では、鱗が数枚剥がれただけだった。


 「どりゃ。」


 再度、胴体に切り込んだ。今度は、鱗の剥がれた所にうまく切り込んだ。

 

 「思い知ったより、簡単だったね。キリ姉。」


 「そうね、でも、おかしいね。」


 「何が?おかしいの。」


 「ポイズン・サーペイントと一緒に、魔王軍の兵士が現れると思って、待機していたのよ。」


 「そうなの。だから、私が正面で、戦ったのね。」


 「そうよ。キリ。でも、ポイズン・サーペイント1匹だけだった。」


 「ラッキーだったね。楽に倒せたし。」


 「だから、おかしいのよ。ここまでも、一度も魔王軍の兵士に出会っていないのよ。」


 「そうね。まだ、戦っていないね。」


 「キリ、変でしょ。私達は、魔王軍と戦うために、この特級ダンジョンに潜って来たのよ。」


 「うん、そうだよ。これからかな?」


 「キリ、ちょっとは一緒に考えてよ。」


 「はい。分かった。ちょっと、スキル探索の範囲を広げて、他の階層も調べてみるね。」


 私は、スキル探索を使った。いつもは、自分のいる場所を中心に360°マナを薄く放出して、そのマナの跳ね返りをチェックして魔物を調べていた。今回は、下に向けて、放出した。


 「キリ姉。このダンジョンは、100階層まであったよ。最下層には、ダンジョンコアがあったよ。でも、ダンジョンマスターが見当たらない。」


 「ダンジョンマスターがいないって、キリ、もう一度チェックして。」


 「はい、もい一回調べるね。」


 私は、再度スキル探索を使って、特に最下層の第100階層を念入りに調べた。


 「キリ姉、やっぱり同じよ。ダンジョンマスターはいないわ。」


 「そう、今回できた他の上級ダンジョンについても、ちょっと、調べてみない?」


 「いいよ。パープルもいいね。」

 

 「イイヨ。」


 私達は、今回新規に出来上がった上級ダンジョンの調査を行った。といっても、スキル探索をつかっただけだ。


 「やっぱり、一緒よ。階層は、70階層と少ないけど、ダンジョンマスターはいないよ。」


 「キリ、ありがとう。一旦、工場に戻ろう。」


 「パープル、こっちに来て。」


 パープルが、私の横にくっ付いてきた。転移魔法で、私達3人は、避難所のあるウディーア王国の南方の工場に移動した。


 「今回分かったことは、新規のダンジョンには、確かに、レベルの高い魔物がいる。でも、魔王軍はいない。そして、ダンジョンコアはあるけど、ダンジョンマスターはいない。」


 「その通り。それで、キリ姉、これからどうする?」


 「今回は、魔王軍の様子を調べるために、特級ダンジョンに潜ったわけね。」


 「そうだよ。それで?」


 「キリ!ちょっとは、あなたも考えてよね。」


 「はい。ごめんね。」


 キリ姉に、久しぶりに怒られてしまった。面倒なことは、つい、キリ姉に任せてしまう。もう、癖になっているようだ。


 私達は、これまでの調査内容を整理した。


 ダンジョンは、普通、マナが多量に集まり、それが元で、ダンジョンマスターが発生する。そして、ダンジョンマスターの元で、多くの魔物が発生していく。


 そして、ダンジョンは、ダンジョンマスターが倒されると、制圧される。つまり、ダンジョンが消滅して、魔物が新たに生まれてくることがなくなる。ダンジョンマスターが消滅するとダンジョンコアがドロップアイテムとして残る。


 だから、ダンジョンマスターがいないダンジョンは、これまで、無かった。つまり、今回の新規のダンジョンは、自然発生したものではなく、ダンジョンコアから、無理やり作られた人工的なダンジョンということになる。


 「キリ姉、これから、どうするの?」


 「そうね、人工的に作られたダンジョンといえども、魔物が溢れ出ているので、対処が必要ね。」


 「ダンジョンの発生の原因になっているダンジョンコアを潰せば?」


 「ダンジョンコアを処理しないといけないね。それから?」


 キリ姉は、私に聞いてきた。私に考えろって、言うことね。


 「人工的なものだから、誰が、何の目的でやったのかを調べる。これで、いい?」


 「大体、それでいいね。後は、溢れ出ている魔物をどうするかだね。」


 私達は、今後の方針を決めて、実行に移すことにした。まず、現状の分析が必要だ。


 確かに、「誰が、何の目的で行ったか」ってことは大事なことだが、今、優先することではない。


 今回のダンジョンは、ダンジョンマスターがいないので、ダンジョンコアを処理するだけでいい。ただ、これまでとの違いは、普通、ダンジョンマスターを倒してダンジョンコアが発生するのに、すでにダンジョンマスターがいないのに、ダンジョンコアから魔物が発生しているということだ。


 本来であれば、ダンジョンコアだけでは魔物が発生しない。だから、これまでとは違う仕組みがあるということだ。これは、ここで考えても結論が出るものではない。実際のダンジョンコアを調べる必要がある。


 私達は、取り敢えず、実物を観察して、今後の対策を行うことにした。先ほど調べて、新規に発生した上級ダンジョンの一つにやって来た。


 「さあ、サクっといくわよ。」


 「パープル、先に突っ走ってね。」


 「ハイ、キリ、イクネ。」


 パープルは、2人の目の前から消えた。


 私とキリ姉は、範囲魔法で、一気に魔物を狩りながら、上級ダンジョンを潜っていった。このダンジョンをスキル探索で、調べたところ最大レベル70の魔物が1匹いるだけで、他はレベル60以下だった。

 

 私達は、レベル70のいる第69層まで、一気に潜っていった。パープルは、すでに、最下層の第70階層のダンジョンコアの前にいる。そこで、他の者に邪魔をされないように、見張ってもらっている。


 レベル70の魔物もそれほどの困難もなく倒した。


 私達も、第70階層に潜り、パープルと合流した。


 「やっと来たわね。これが、ダンジョンコアね。」


 「何だか変ね。キリ姉、感じる?」


 「そうね。ダンジョンコアは、普通、魔力に関しては安定しているはずね。でも、このダンジョンコアは、違うね。」


 「マナを吸収して、それを放出しているわね。」


 「キリ、もっと詳しく、マナの流れを調べてみて。」


 「はい、スキル鑑定で調べるね。」


 ダンジョンコアは、側面からマナを吸収して、上部からマナを放出していた。更に、詳しく見てみると、魔法陣の刻印があった。


 「キリ姉、ダンジョンコアに魔法陣の刻印があるよ。これが、ダンジョンマスターの働きをしているみたい。だから、ダンジョンマスターがいないのに、ダンジョンが発生しているみたい。」


 「その魔法陣の刻印は解除できる?」


 「ウーン、完全に消すことは難しいけど、魔法陣の働きを停止させることはできるよ。」


 「それで、十分よ。やってみて。」


 私は、キリ姉に言われるままに、魔法陣の入力と出力に関する部分を削除して、停止させた。


 「止めたよ。この後は?」


 「暫く、様子をみましょう。キリ、何か変化があったらすぐに言ってね。」


 「はい。よく見てるね。」


 暫く、ダンジョンコアの様子を見ていたが、特に変化がなさそうだ。マナの流れは完全に止まっていた。


 「キリ姉、大丈夫みたい。」


 「そのようね。取り敢えず、今回新規に現れた、すべての上級ダンジョンのダンジョンコアの動きを停止していきましょう。」


 「キリ、今やったことを、魔法陣に表せておくね。ああ、そうだ、この作業もマナクロに組み込んでおくね。」


 「それじゃ、避難所の工場に帰ろうか。キリ、お願いね。」


 「はい、パープルもおいで。」


 私達3人は、転移魔法で、工場の地下10階に移動した。早速、今回の作業用のマナクロを作成し、マナドールに組み込んだ。更に、同じ動作ができるマナドールを作っていった。少し時間が掛かったが、ダンジョンコアを無効化することのできるマナドールを30体完成させた。


 ザーセン王国の近隣に5カ所、リーツ王国の近隣に2カ所、イーゼル王国の近隣に2カ所、トード王国の近隣に2カ所、リーグリ王国の近隣に2カ所の上級ダンジョンがある。合計で、13カ所になる。

 

 念のため、1カ所に2体ずつマナドールを送ることにした。ワーキャットに背中にマナドールを載せて、各地にある上級ダンジョンの最下層に運んで貰うことにした。


 「パープル、お願いがあるの。」


 「キリ、ナニ?」


 「マナドールを背中に載せて、運んでほしいの。上級ダンジョンの最下層までだけど。それと、マナドールが結界を張ったダンジョンコアを運んできて欲しいの。」


 「イイヨ。モンダイナイ。」


 「同じことを、仲間のワーキャットにも、お願いできる?」


 「キイテミル スコシ マッテ。」


 「ニャーォ、ニャーォ。」


 パープルが鳴くと、工場内にいたワーキャットが集まって来た。集まったワーキャットにパープルが話しかけた。


 「キリ、イイヨ、ッテ、イッテル。」


 私は、急いで、マナクロの設定を終えたマナドールを26体用意した。そして、ダンジョンコアを入れるためのアイテムボックスを30個用意した。


 パープルが集まっているワーキャット1人1人に、何やら指示をしている。すると、それぞれが、マナドールをを背にするとともに消えていった。 


 合計26人のワーキャットが走り去った。私達3人は、ワーキャット達が戻ってくるのを待った。

 

 その日の内に、6人のワーキャットが戻って来た。結界の納まったダンジョンコアを入れたアイテムボックスが3個床に置かれている。


 次の日も、6人のワーキャットが、3個のアイテムボックスと共に戻って来た。


 更に次の日も、8人のワーキャットが、4個のアイテムボックスと共に戻って来た。


 更に次の日も、6人のワーキャットが、3個のアイテムボックスと共に戻って来た。


 これで、すべてのワーキャットが13個のダンジョンコアと共に戻ったことになる。


 上級ダンジョンの処理は、これで、ほぼ完了だ。後は現在発生している魔物の討伐だ。これは、一度倒せば終わるので、各王国の兵士や冒険者ギルドに任せることにした。


 最後に残った特級ダンジョンの対応に取り掛かることにした。


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