9-4.闇魔法
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
私は、土魔法で、50cmほどの土人形をつくり、闇魔法の「魂の複製」で、私自身の魂を複製し、「魂の刻印」で、その魂を土人形に刻印した。これで、土人形の完成だ。この土人形を更に加工して一見して人間と思うようにした。ただし、顔だけはアレンジして、私の顔とは違うものにした。
「魂の複製」で得られた魂は、従魔契約の様に、主従関係が成立している。つまり、複製した者の命令に従うということだ。ただ、魂を持っているので、その魂の意に反することには従わない。
早速、土人形に指示を出して、動作を確認した。最初なので、簡単な作業だ。
工場横に作っている薬草畑から、ベースハーブを採取し、アイテムボックスに入れるというものだ。
土人形は、ゆっくりだが、確実に仕事をこなしていった。ベースハーブをすべて採取し終わると、私の所まで戻ってきて、動きを止めた。
実験は、成功だ。当面の作業はこの土人形に任せることが出来そうだ。
地道にキリ姉には内緒で始めた研究だけど、やっとお披露目できる。キリ姉には、私の魂を刻印していることは内緒にしておいた。変な心配をさせたくなかったからだ。
「コン、コン。キリ姉、起きてる?」
「ちょっと待って、今起きるから。」
やっとできた自立型土人形を一番にキリ姉に見せたくて、朝早くから、準備した。パープルも、私を手伝ってくれた。今は、私の腰を抱きしめて、フサフサの尻尾を振っている。
「どうしたの。こんなに朝早く。」
「ごめんね、起こしちゃって。」
「もう起きてたから、いいよ。」
キリ姉を急かせながら、私達の工場にやってきた。
「キリ姉、早く中に入って。」
「なによ。そんなに急かさないでよ。」
「いいから、いいから。」
嬉しそうにしている私の影響か、パープルも飛び跳ねている。
「ジャジャジャジャーン。自立型土人形です。」
「何?その自立型土人形って。聞いたことないよ。」
「私が作ったの。」
「ゴーレムを?」
「じゃなくて、自立型土人形よ。」
「だから、その自立型って、何よ!」
私は、怒り出したキリ姉にこれまで隠していた研究を初めから説明した。細かいことはかなり端折ったが、凡そは理解してもらった。
「何だか分からないけど、凄いわ。」
私は、パープルをキリ姉に預けて、少し離れた場所の自立型土人形に命令を出した。
「ハイ、ワカリマシタ」
簡単な作業だけど、工場の機械をうまく動かして、製品の部品を作り出した。
「うまく動いているようだけど、イマイチわかんない?」
「凄いでしょ、今の見た!」
「見ているわよ。でも、ゴーレムが動くって、普通よ?」
「そうか、ゴーレムって、動くよね。」
「今更、何を言っているの。ゴーレムが動くのは、当り前よ!」
キリ姉は、怒り出した。たしかに、ゴーレムが一人で動くのは当たり前だ。さっき、うまく説明したつもりだったが、キリ姉には、伝わっていなかったようだ。
「ごめんなさい。説明が悪かったみたい。」
「うん?どういうこと。あれって、普通のゴーレムじゃないの?」
「ちょっと違うの。ゴーレムと言ったのが、失敗ね。あれって、私が作った自立型土人形なの。」
「どうみても、ゴーレムだよ。土人形は、動かないよ。」
キリ姉も少し落ち着いたようだ。仕方がないので、もう一度説明した。
「なるほど、ゴーレムと従魔契約をかわしたわけじゃなかったんだ。」
「そうよ、私が作ったっていったよね。」
「聞いたけど、普通のゴーレムだと思い込んでいたから。」
「私も、興奮して、つい、ゴーレムって言ったもね。ゴメン。」
「そうか、従魔契約をしないで、ゴーレムみたいに動けるのね。」
「そ、そうよ。キリ姉、そのとおりよ。」
「本当に、凄いね。」
やっと、キリ姉に分かってもらえて、私は笑顔になった。心配そうにしていたパープルも一緒に喜んでくれている。
「キリ、このゴーレムっぽいの、どうするの?」
「これから、沢山作って、私達の代わりに働いてもうらうよ。」
「ちゃんと動くの?大丈夫?」
「心配ないよ。もし、おかしくなっても、工場に封印魔法をかけて、外に出られなくくしておくから。」
「そう、それならいいわ。」
こうして、自立型土人形のお披露目が無事?終了した。
後日、全体で12体作り、工場の仕事を完全に任せた。ただ、キリ姉に言われたように、定期的に様子を見に来るのは欠かさず実行した。
12体の土人形には、名前を付けた。No.1:アリエス、No.2:タウラス、・・・、No.12:ピスケス。
アリエスには、他の土人形の管理をさせることにした。
タウラスには、レオ・ヴァルゴ・ライブラと共に、地下4階の薬草の世話をさせることにした。
ジェミニには、カプリコーンと共に、1階のポーションの生産過程を任せることにした。
スコーピオには、サジタリアスと共に、外の薬草畑の栽培と収穫管理を任せることにした。
残りの土人形には、工場と農園の警備を任せた。
「キリ姉、これで、工場・農園を維持したままで、遊べるよ。」
「そうね。だも、大丈夫?」
「大丈夫よ。ねぇ、パープルは、どう思う?」
「ウン、ウン。」
パープルは、いつも通り、嬉しそうに、私に絡んでくる。私もいつものように、頭を撫でてあげた。
暫くしてから、サンライズ商店長から、クレームを言ってきた。
「もう、限界です。安くて良質のポーションがあるっていう噂が王国中に流れてしまいました。」
「それで?」
とキリ姉は、冷静に受け流している。
「えぇっ、それでってはないでしょ。やってくる客の数が半端なく、大変なんですから。」
「そういうことね。儲かるからいいんじゃない?」
「そりゃ、儲かりますが、仕事の割に、儲けが少ないのですよ。」
「それじゃ、休めば。」
「そんな、簡単に休めませんよ。客が来るのだから。」
「従業員を雇えば?」
「だから、雇うほどもうけがないって、言ってるじゃないですか。」
「そうか。それで?」
「えぇっ、それでってはないでしょ。やってくる客の数が半端なく、大変なんですから。」
「もう一度繰り返す?」
「それは、こっちのセリフですよ。何とかしてくださいよ。」
「それでは、店を休まず、忙しくならず、今までどおり儲けがあれば、いいのね。」
と、キリが割って入って来た。
「そうです。」
「それじゃ、私達に店を売れば?」
「うぅん。店長はしたいのですけど、だめですか?」
「いいわよ。店長で、でも、店は売ってね。」
「えぇ、どういうことですか?」
「つまり、店長は、商業ギルドに登録しているわよね。それはそのままにして、権利だけを売って欲しいの。つまり、登録はそのままで、店長としてもそのままで、いいの。ただし、店の運営権を私達に売って欲しいの。つまり、店長は今の店はいままで通り店長として顔御出すけど、経営はしないということ。」
「というと、私は、顔を出すだけで今まで通りの儲けを給料として、キリさん達から貰うということですか。」
「そうよ。給料としては、いままでの儲けの倍だすよ。」
「いいんですか?」
「いいわよ。ねえ、キリ姉。」
「キリが良ければ。私はいいわよ。」
「パープルも、いいわね。」
パープルは、嬉しそうに私に抱き着いた。たぶん、いいということね。
「それじゃ、契約書を書いて来てくれる。」
「はい。」
私達と店長は、契約書の内容の細かいことを相談した。後日、店長がやってきて、契約を済ませた。
まず、大量に買いに来ている街を確認し、その街の小さな商店の経営権を同様の契約で買い取った。そして、その店に大量の上級の赤のポーションを置いて帰って来た。価格については変更しないことを約束させた。これを6つの街について行った。
これで、この街の商店長はのんびりできるはずだ。
商品の輸送にコストがかかるので、各街の中心から離れた所に土地付きの小屋を購入した。そこに、土人形を1体設置し、小屋の中に転移用の魔法陣を書いた。それと同じものを私達の工場の地下に作った。これで、転移魔法で、いつでも商品を瞬時に運ぶことができる。マナは、森から流れてくるので、輸送費は実質タダになった。
でも、まだ、私の転移用の魔法陣は、物しか転移させることが出来ない。人も転移させることが出来ると、便利なので、もっと、調べてみよう。
これで、高額の給料を各店長に支払っても、余裕で儲けが出る。しかも、上級の赤のポーションが格安で売れるので、他の商店では、赤のポーションを扱えなくなってきた。赤のポーションを独占販売できるようになった。でも、価格は変えないで売っていった。忽ち、それぞれの商店は人気店となっていった。
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今日は、前回の実験の続きをやろうと思っている。何とか、光魔法で半導体もどきのマシリコンを作った。バリアは、光魔法でしか作れないのだろうか。いや、闇魔法でも作れる。
実際に、2つの魔法(光魔法と闇魔法)で作ったバリアを作って、どのようにマナが遮断されるかを調べてみた。光魔法では、マナを反射して、マナを遮断する。一方、闇魔法では、マナを吸収してマナを遮断する。つまり、光魔法は、鏡のような働きをし、闇魔法では、ブラックホールのような働きをする。つまり、闇魔法で作ったバリアは、マナを吸収し、蓄えることができるということだ。
従来の闇魔法で作ったバリアであれば、吸収するだけで、取り出すことができない。しかし、オリハルコンを材料にすると、取り出すことが可能となる。外から電圧に変わるマナを加えることで、バリアがマナを通し始めるからだ。
これで、素材が完成したので、あとは組み立てるだけだ。
私は、マシリコンでつくった素材で、ダイオードに代わるマナオードを作った。
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「キリ姉は、転移魔法の魔法陣について、勉強した?」
「少しは習ったわよ。何が知りたいの?」
「うん。私が描いた転移魔法用の魔法陣では、物しか転送できないの。」
「えっ、キリは、いつも転移魔法で、私達も転送しているでしょ。」
「うん。そうだよ。」
「何言ってるのよ。もう一度言うわよ。キリは、転移魔法で私を転送している、よね。」
「うん。そうだよ。」
「まだ、分からないの。魔法を魔法陣にすればいいだけでしょ。」
「あ、そうか。てへっ。忘れていた。」
「そうよ。魔法陣を一から自分で考えて作るなんて、キリには必要ないのよ。」
「キリ姉は、賢いね。」
「どういたしまして。しっかりしてよね。いつまでも、子供じゃないんだから。」
キリ姉に、大笑いされてしまったけど、変な所でミスが多いね。反省しないと。でも、これからは、人も運べる魔法陣を使える。ということは、マナドールも私と同じ転移魔法が使えるってことね。これは便利。




