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苦手な方はご注意ください。

メタルガールズ砂糖入り

作者: まがみゆう

こちらは『メタルガールズノンシュガー』の後日談になります。

挿絵(By みてみん)


 ①【ブレスレット】


 今日は優ちゃんと遊ぶ約束をしていた日曜日!

 私は今、待ち合わせ場所である駅へ向かっている。 私は今日の服装について悩んでいた。

「うーん……」

 昨日も悩んだけど、やっぱり悩むなぁ~。

「でもまあ、これでいっか!」

 私は普段着ている服にした。

 一番のポイントは、左手首に巻いたブレスレットがよく見えるように七分袖のロンTにしてきたことかな。そこからコーデしていって、今日着ていく格好へと仕上がる。

 自己満足と相手への思い遣りで私のお洒落は出来ている。そう信じたい。


「よしっ」

 気合いを入れ直したところで、待ち合わせ場所に到着した。

「あっ……あれ? いない……。まだ来てないのかな?」

 私はキョロキョロしながら優ちゃんの姿を探す。すると……いた!

「優ちゃ〜ん!」

 優ちゃんを発見したので声をかける。

「えっ!? もう来たんですか? 早いですね」

 優ちゃんが丁度向こうからやって来るところだった。

「ふふ♪ 優ちゃんを待たせないように早めに来ました」

「ありがとうございます。では早速行きましょうか」

「はい。よろしくお願いします」

 私たちは一緒に歩き出した。


 目的地までの道中、私は優ちゃんの横顔を見ながら考えていた。

(この前、やぶきさんとは仲良くなりたいって言ってたよね)

 あの時は優ちゃんの気持ちを聞いて嬉しかった。

 優ちゃんは人付き合いが苦手で、今まで友達と呼べる存在がいなかったらしい。学校では話が合う友達は何人かいるようだけれど…

 それはあくまでクラスメイトとしてであり、親友と言えるほどの関係ではないと言っていた。

 そんな優ちゃんが私とは仲良しになりたいと言ってくれたのだ。これはとても嬉しいことだ。私だって優ちゃんのことをもっと知りたいと思えたし、何より優ちゃんとお近づきになれるのはとても楽しみだ。


「あ! 今日も着けてくれてるんですね、そのブレスレット」

「うん。毎日付けてるよ。優ちゃんから頂いた大事な物だからね」

「そうですか。嬉しいです。実は私も学校以外で出掛ける時は着けてます」

「本当? 何だかペアルックみたいで嬉しいなあ」

 と言った瞬間、私はしまったと後悔した。優ちゃんはあの時、ペアルックが恥ずかしいから敢えて違うデザインの物をプレゼントしてくれたのに、私ったら、自分から墓穴を掘ってどうするの!

 恐る恐る優ちゃんの顔を見ると、案の定、優ちゃんの顔は茹でダコみたいになっていた。

 私はなんとかフォローしようと試みる。

「あ! でもここのデザイン少し違うからペアではないかな!? あは、あはは!」

 優ちゃんは今度はあからさまに肩を落とした。

 私っ! 追い打ちかけてどーするのっ!?


 そうこうしてる内に、今日の目的の場所、木造の可愛らしくもアンティークなデザインのブックカフェに到着した。

 ここは彼女が通う高校の近くにある。

 優ちゃんが言うには、この店は最近オープンしたばかりだという。そして今日、優ちゃんはこの店でお茶を飲むのを目的に誘ってくれたのだ。

 店の中に入ると、カウンターの奥にいる店主らしき女性が私たちに声を掛けてきた。

「あら、いらっしゃいませ。初めての方かしら?」

「は、はい」

 私は少し緊張気味に答える。

「ごゆっくりして行って下さいね」

 女性はニッコリと微笑みながら言った。


 店内を見回すと、落ち着いた雰囲気の内装になっている。

 窓際の席に向かい合って座ると、早速メニュー表を開いた。

「わぁ~どれも美味しそうだねぇ」

「そうなんですよ。私も前回チーズケーキを頂きましたが、甘すぎず美味しかったですよ」

 優ちゃんは目を輝かせて本日のケーキを選別している。

「じゃあ私はケーキセットにするけど優ちゃんは?」

「同じく」

「わかった。すみませーん」

 私は女性店員を呼ぶと注文を伝えた。

「はい。わかりました。少々お待ちください」


 しばらく待つと、女性店員さんが頼んだものを運んできた。

「お待たせしました。まずこちらがガトーショコラとカフェラテで…」

「あたしです!」

 優ちゃんが少し食い気味に返事をする。

「ではこちらがミルクレープとブレンドになります」

 私の前にミルクレープとコーヒーが置かれる。

「ありがとうございます」

 私がお礼を言う。

「いえ、ごゆっくりとお過ごし下さい」

 そう言い残すと、柔らかい笑顔を残し、彼女は別のテーブルの接客へと向かった。

「さあ食べようか♪ いただきま~す♪」

 私はフォークで一口サイズに切り分けると、ミルクレープを口に運んだ。

 何層にも重なった生地の優しい弾力と甘味、生クリームの濃厚さが合わさってとてもおいしい。

「ん〜♪ 幸せ〜」

 思わず顔がほころぶ。

 その様子を見た優ちゃんが私を見て

「本当においしそうに食べるんですね」

「えへへ、だってホントにおいしいもん」

「確かに」

「優ちゃんも早く食べた方がいいよ。冷めちゃうから」

「ええ。そうですね」

 そう言って優ちゃんもガトーショコラを口に運ぶ。

「そういえば優ちゃん、今日はブレンドじゃなくてカフェラテなんだね?」

 私はふと思ったことを口にした。

「はい。今日はガトーショコラを頼んだので、まろやかな飲み物の方が合うかもと思いまして」

「して、そのお味は?」

「ドンピシャです!」

 優ちゃんは勢いよく拳を握り締めてみせる。

 そのドヤ顔が堪らなく可愛かった。



 一通りケーキを楽しんだ後、私たちは折角ブックカフェに来たのだからと、読書に耽ることにした。

 優ちゃんは推理小説が好きな様で、自分が持ってきていた文庫本の続きを読み始めている。

 私は、何か短時間で読めそうなものはないかと探し、手に取ってきたのは見知らぬ作者の詩集だった。


 お互い同じ空間にいて、違う時間が流れているような錯覚を私は覚えた。すると、優ちゃんが本をパタンと閉じる音が聞こえたので私は視線を上げた。

「やぶきさんは詩を読むんですね」

「うん。偶にね。優ちゃんはいつも小説を読んでいるのかな?」

「そうですね。推理小説が多いですけど」

 そう、優ちゃんは推理小説が好きと言うだけあって、中々深い考え方をすることを最近になって解って来た。

 そこで、私はこの前から少し気になっていたことを優ちゃんに聴いてみたくなった。


「優ちゃん、左手を出して」

「はい? こうですか?」

 お互いに左手を前に突きだす。

 その手首にはあのブレスレットがお互い巻かれていた。


「私はト音記号で優ちゃんはヘ音記号のデザインのブレスレット…これが意味するものは?」

 私は優ちゃんに質問を投げかけた。それも直球で。

「やぶきさんの言うように、これはペアのものではありません。たまたま見掛けて違うデザインの物を手に取ったまでです」


 そう来ましたか…飽くまでペアではないと言い切るつもりなのね優ちゃん…

 私は敢えて優ちゃんの話を遮った。

「でも優ちゃん、私の勘違いでなければ、優ちゃんが普段読んでる推理小説のトリックとか、事件解決のヒントになるようなものがこのアクセサリーには隠されているんじゃないの?」


 そう、優ちゃんが今読んでいるのは推理小説なのだ。優ちゃんは一瞬動揺の色を見せたが、すぐに平静を取り戻し

「そんなのはただのこじつけです。それに、あたしがこの前読んだ小説には、全く関係のない話が書いてありました。このブレスレットはそういう類いのもので、この物語に隠された謎を解く鍵にはなり得ません」

 と、言い切った。

「そっかぁ。残念だなぁ。せっかく面白くなりそうだったのに……」

「まぁ、仮にそうであっても、やぶきさんが謎解きをしたければ、私がそれを解き明かす手助けをしますよ」

 優ちゃんは屈託のない笑顔で言う。


「じゃあ、手助けをしてもらおうかな…?」

 私が悪い笑みを浮かべると、優ちゃんは少し血の気が引いたような顔を浮かべた。


「私はね、優ちゃん。音楽にはそれ程詳しくないんだけど、ト音記号とヘ音記号の意味くらいは知ってます。ト音記号は高い音を表し、ヘ音記号は低い音を表します。ト音記号は私が、ヘ音記号は優ちゃんがそれぞれ持っているね?」

 私は物知り顔で優ちゃんに問う。

「そ、それがどうしたって言うんですか?」

 優ちゃんは追い詰められた鼠のように小さく虚勢を張る。

「私の声は優ちゃんより低く、優ちゃんの声は私より高い…のに何故か私が頂いたのはト音記号で、優ちゃんはヘ音記号の物を持っている…これは単なる偶然?」

「……」

 優ちゃんは何も言わずに黙っている。

「ブレスレットの記号が意味するところを、もし相手の人物と重ねて擬人化していたとしたら? …優ちゃん、あなた…」

「あ、あたしは、やぶきさんと違って想像力が豊かな方ではないので…」

「嘘! 優ちゃんは最初から解ってて私にト音記号の方をプレゼントしてくれたの! 恰もそれが、優ちゃんの分身だと言わんばかりに!!」

 優ちゃんが東尋坊の岬で項垂れ膝を付いたようなイメージが浮かんだが恐らく気のせいだろう。


「優ちゃん、そこまで考えてプレゼントしてくれてありがとう!」

 私は優ちゃんの手を取り感謝の意を伝える。

「やぶきさん、その、手、手を離して下さい」

「ごめんね、優ちゃんがあまりにも可愛いからつい♪」

 私は優ちゃんの右手を両手で包み込むようにして握っていた。

「あの、その、嬉しいんですけど、その、すみません。そこまで深くは考えてませんでした」

 スンッ…と私の最高潮まで上がっていたテンションは一瞬で消失した。

「でも、喜んでくれて嬉しいです。えへ」

 “可愛いは正義”とはよく言ったものだよ。

私は勝負には勝ったが、萌えには負けた…

 今日も優ちゃんは可愛いです!




  ②【フェアレディY】


 あたしは今日も電車に揺られ通学している。

(あぁ、退屈だな……)

 学校、塾、家の繰り返し。

 勉強は嫌いではなかったのがせめてもの救いかも知れない…

 ここ最近、あたしはこの変わり映えのしない日常に退屈を感じるようになっていた。

 何か刺激的なことが起こらないかな…



 あたしの名前は相田優。

 この春に高校二年生になった。

先日の始業式の後、あたしは何故か告白された。その相手は他クラスの男子だった。

 彼は学校でも人気者で女子からモテていた。そんな彼が何故、あたしを好きになったのか? 正直、解らない。彼の事は顔ぐらいしか知らないのだ。だから彼に対して特にこれといった印象もない。ただの他クラスの男子という認識しかない。

 なのに突然好きだと言われた。何とも不思議な感覚である。

 あたしは生まれて初めて男の人から告白を受けた。告白されて悪い気はしなかったので、付き合う事にした。

 だがしかし、彼とお付き合いする事になったものの、具体的に何をすればいいのか解らなかった。


 そんな恋愛についての悩みはあるにはあったが、私の心の片隅の方に追い遣られている。どうやらあたしにとって恋愛とは、それ程重要性の高い悩みではないらしい。


 あと少しで私が通う塾がある駅に着く。

その時、私の右肩に少し重みが加えられた。

視線を少し右に向けると、どうやら隣に座っている人がもたれ掛かってきたようだ。

 その人は直ぐ様体制を立て直すと、また上半身が振り子運動を始める。

 どうやら睡魔との戦闘真っ只中らしかった。


 あたしはその人を横目で観る。

 歳は二十代前半くらいだろうか。黒髪をふわっとセットしたセミロング。前髪は目に掛かる程度の長さで左耳に掛けてある。

 鼻筋は通っており目尻は少し垂れていて親しみやすく、唇には薄ピンクのグロスが塗られており艶やかな色っぽさを醸し出している。

 服装は黒のジャケットに白シャツ、ベージュ色のタイトスカートで全体的に上品さを感じさせる装いをしている。

 スタイルもかなり良くて脚線美が美しい、とても綺麗な人だった。

(仕事帰りなのかな。お疲れ様です)

 相変わらず偶にあたしの右肩に負荷が掛かる。

 これが中年のおじさんだったら嫌だけど、不思議と嫌な気にならない。美人って得だなとあたしは思った。


 その時、停車した電車のドアからおばあさんが入ってくるのが見えた。

 今は帰宅時間ということもあり、どの座席も埋まっている。

「あの、良かったら、どうぞ」

 考えるよりも先にあたしはおばあさんに声を掛けた。

 おばあさんは一瞬、驚いたような表情を浮かべたが直ぐに笑顔になり、ありがとうねと言って座席に腰を下ろした。

 低身長のあたしは帰宅途中のサラリーマンの波に飲み込まれ直ぐに見えなくなってしまう。

 辛うじてどうにか吊り革だけ掴んでいた。


 また暫くして次の駅でドアが開く。

 先程あたしの隣で睡魔と戦っていたあのお姉さんが慌てて荷物をまとめ降りようとしていた。

(この駅で降りるのか。寝過ごさなかったかな? 私も次の駅だし降りる準備をしよう)

 そう思いあたしが視線を下に向けると、さっきまでお姉さんが座っていた座席に定期券が取り残されているのを視界の端で捉えた。

「あ! あの…」

 声を掛けようとしたが既にお姉さんは改札の方へと向かっている。

 あたしはそれを手に取ると、そのまま彼女の後を追った。


 階段を下り、改札口の前で追い付く。

 そこでは改札の隅で何やらわたわたしているお姉さんを見付けた。

 ようやく自分の定期券が無いことに気付いたのだろう。

 お姉さんの表情は不安げで、まるで迷子の子供のように感じられた。

 私は急いで駆け寄り、お姉さんに定期券を差し出した。

「あの! これ、落としましたよ」

 お姉さんはあたしの方に振り向くと、驚いたようにあたしの顔と手元の定期を何度も交互に見ている。

 ようやくそれが自分の物だと確認できると

「あ、確かに、私のです。ど、どうもありがとう!」

 と申し訳無さそうにお姉さんは言った。

 あたしは確認のため、定期入れに書いてあった持ち主の名前を口にする。

「早乙女、やぶき、さん?」

 またもお姉さんはあたしの言葉に驚き

「はっはい! 私です! でも、どうして私の名前を…?」

 と訊いてきた。定期入れに名前を書く時点で面白いのに、そのことを忘れているのかあたしが言い直す。

「あ、定期入れに書いてあったので、一応確認と思いまして」

 このお姉さんなら、今後も自分の持ち物にはしっかり名前を書いておいた方がいいかも知れない。天然なのかおっちょこちょいなのか分からないが、お姉さんの雰囲気には嫌味がなく、どこか気を惹く。

「今度は落とさないよう気を付けて下さいね、お姉さん」

 私はそう言い残して、途中下車してしまった塾への電車に乗るため再びホームに戻った。



 また別の日の朝、あたしはいつもの様に電車に乗り込む。

 するとそこには最近見知った顔があった。

昨日、定期券を届けたお姉さんだ。

 お姉さんもあたしに気付いたのか、こっちを見て少し引きつった笑顔で会釈をしてくる。

 あたしも軽く会釈だけして、お姉さんの対面の吊り革に掴まった。


 今日は席が空いてないか。読もうと思って持っていた文庫本をあたしは胸の前で抱えた。吊り革に掴まりながら片手で読むことは難しくはなかったが、何かあった時に備え、あたしは電車の中では立って読書をしない様にしていた。

 暫くすると電車が動き出す。

 相変わらずお姉さんは眠そうだ。

 その様子は、昨日の帰り道で見た時と同じだった。

 しかし、今日はどうやら睡魔に打ち勝ったようで、その後目をパッチリ開けて文庫本を読み始める。

 しかもその表情はとても楽しそうである。

(へぇー、本とか好きなんだ)

 そんなことを考えていると、あたしの学校の最寄り駅に着いた。降りねば。

 見るとあのお姉さんもこの駅で降りるようだった。お姉さんは先にホームへ降りていき少し行ったところでこちらに振り向いた。

(! 目が合っちゃった…)

 あたしは何故か気まずく感じ、そそくさと階段を登ろうとお姉さんの横を通り過ぎる。

その時背後から

「あ! 昨日の、定期の子! 待って!」

 と大声で呼ばれた。定期の子? え!? あたし?

 周囲の人たちが何事かとあたしたちを見る。

お姉さんはそんなのお構いなしに

「き、昨日は定期拾ってくれてありがとう」  

 と少し緊張しながら続ける。度胸があるのかないのか、ハッキリして欲しい。

 あたしは恥ずかしさで居ても立っても居られず

「いえ、お礼なら昨日言ってもらってるので結構ですよ」

 と何とか応えるだけで精一杯だった。きっと今のあたしは酷い顔をしているに違いない…

お姉さんはなおも続けて

「あ、そ、そうだよね。ゴメンね。同じ駅で降りる姿が見えたからつい声掛けちゃった…」  

 と少し照れ笑いしながら話してくる。お願いだからあたしに照れるんじゃなくて、今のこの状況に対して是非とも照れて欲しい!


 あたしが羞恥で顔を赤くしていると、お姉さんは姿勢を正しあたしを真っ直ぐ見て

「私は早乙女やぶきという、この近くのオフィスで働いてるしがないOLです。兎に角、昨日は定期を拾って頂き助かりました。どうもありがとう」

 と深々とお辞儀をした。

 その表情や所作がとても美しく、あたしは一瞬見惚れてしまった。


 名前を名乗られてしまった。

 先程のお姉さんの色々な意味でキレのある所作を目にし、私も次第に冷静さを取り戻してくる。

「……相葉優、です…」

 私はそっと呟く。聴き取れなかったのかお姉さんは少し困惑しているようだ。

 名乗られたのなら、名乗り返さねば。あたしはもう一度、今度はさっきより少し大きい声で

「相葉優です。この近辺の高校に通ってるしがない学生です」

 とその人に素直に名乗っていた。



 これがあたしの人生において、生涯の親友となる、早乙女やぶきさんとの出会いだった。




  ③【イヤホン】


「あのさ、優ちゃん!」

「何でしょうやぶきさん?」

 私たちは新緑薫る陽射しの下、小陰が造られたテラス席でお茶をしていた。


 ここは駅前にある有名なカフェチェーン店だ。

 私はコーヒーを注文して、いつもの様にブラックのまま一口飲む。そしてカップソーサーの上に戻す。

「優ちゃんっ、大変遅れましたが、これ! 貰って下さい!」

 私は小さく包装された箱を取り出してテーブルに置く。

そ れは昨日買った物だった。

「え? これは一体…」

 優ちゃんは不思議そうな顔をする。

「その、ブレスレットのお返しです」

 私は左手のブレスレットを見せて言った。

「お礼なんていいですよ。あたしが勝手にやった事なんですから」

 優ちゃんは苦笑いをして言う。

「いや、それでは私の気が済まないの」

「でも、本当に大した事はしていないんですよ。ただ単に私の自己満足というか…」

「そんなことないよ。私も大変満足してるので、優ちゃんの自己満足じゃあないの。開けてみて?」

 申し訳無さそうにしてる優ちゃんに私は笑顔で言う。

「はい。わかりました」

 優ちゃんはそう言ってそっと箱を開けた。




 月日は少し遡る。

 あれは、私と優ちゃんが知り合って間もない頃だったか。

 朝の電車の中で会っても、お互い軽い挨拶くらいしか交わすことのなかった頃、対面で座り合うとお互い意識してしまい、中々顔を上げられなかった。

 そんな時、優ちゃんはよく私の顔を覗いては目が合うと視線を外らすようなことがあった。


 後になってそのことを優ちゃん聴いてみたのだが

「やぶきさんが使っているイヤホンが気になってたんです。じろじろ見てすみませんでした」

 とのことだった。


 優ちゃんも通学中に音楽を聴いていることはよくあった。何でイヤホン? と私は気になったことを優ちゃんに尋ねた。

 すると優ちゃんは答えてくれた。

「あ、やぶきさんが使っているイヤホンがゼンハイザーの物かなーと思って見てました」

優ちゃんはそう言った。

「ゼンハイザー……って何?」

「え? 知らないんですか!?」

優ちゃんは驚いていた。

「うん、知らないわ」

 私は正直に答える。

「ゼンハイザーというのはドイツの音響メーカーで、音質の良さで有名ですね。ちなみに私が使ってるのはSHUREのカナルのワイヤードです」

 優ちゃんはすらすらと説明してくれる。

「へぇ~、詳しいのね優ちゃん。音楽好きなだけある」

「そうですね。車内でも家でもイヤホンやヘッドホンで聴くことが多いので自然と詳しくなっただけですけど」

「それで、どうしてゼンハイザーが気になったの?」

「はい。ゼンハイザーの製品には音に拘りがあるらしくて、密閉型のイヤホンが多いみたいなんですよ。それに、ケーブルにこだわる人も多いみたいです。例えばゼンハイザーのケーブルは断線しにくいとか。あとは高価なこともあり、あたしみたいな学生にはちょっと手が出ないので単純に憧れます」

「そうなんだ」

 優ちゃんは目を輝かせ解説してくれる。

「まぁ、そういうわけでゼンハイザーの製品は質が良いらしいです。それにデザインも良いものが多いですし、人気のブランドです」

「ふぅん」

 私は相槌を打つ。

「やぶきさんはお洒落なので、イヤホンにも気を使っているのかと思いまして」

「いやいや、確かにファッションの一部だとは思うけど、そこまで考えてないなぁ。優ちゃんはよく見てるのね」

 私は感心していた。

「イヤホンに関してはお解り頂けたように、全然詳しくないの。電気屋さんで幾つかお勧め見繕って貰って、実際試聴して気に入ったのを選んだだけなんだ。期待に添えなくてごめんね」

 私は苦笑いしながら言った。

「いえ、そんなことありませんよ。あたしもそこまで詳しいわけではないので」

 優ちゃんは謙遜して言った。

 メタル談議の時もそうだったが、好きなもののこととなると優ちゃんは饒舌になる。

 私は、そんな優ちゃんの話を聞いているのが堪らなく好きだった。




 時は現在に戻り、優ちゃんが私のプレゼントの箱を開けたところで冒頭に戻る。

 私からのお返しの品とは、なんと

「わっ! 可愛いブックマーカーですね!」

 優ちゃんは驚いた表情で言った。

 金属製のそれは、本から顔を出す所にフラット記号をあしらった飾りが付いている。

「ええ。優ちゃん、本が好きだって言ってたから」

 私は笑顔で答える。

「ありがとうございます。大切にしますね」

 優ちゃんは笑顔で応えてくれた。


 いやね? 最初は優ちゃんが憧れるというゼンハイザー? のイヤホンを贈ろうか迷いましたよ? でも、優ちゃんはイヤホンにすごく拘りがある様だったし、そんな子にコアな贈り物は難しいよ!

 それに、優ちゃんが言うように結構値段するのね…私買ったとき店員さんに流されるまま決めちゃったから余り値段分からなかったし…

 そんな高価な物を優ちゃんが受け取ってくれるとは到底思えず、幾つかの雑貨屋さんを東奔西走して見付けたのがこれってわけ…

 それから、これにはもう一つ…


「それとね、優ちゃん…」

 私はバッグから自分が持参していた文庫本を取り出す。

 いけない、今更ながら恥ずかしくなってきた。きっと優ちゃんもこんな気持ちだったのかな?

 私は下を向きながら、その本を優ちゃんの前にかざす。

「あっ!」

 優ちゃんは何かに気が付いたのか小さくこぼした。

 本にはシャープ記号をあしらった飾りが着いたブックマーカーが挿まれていた。

「私の低い声を半音上げて、優ちゃんの高い声を半音下げたら、私たち、もっと近く、もっと仲良くなれるかなって……」


 我ながら滅茶苦茶恥ずかしい!

 顔から火が吹き出そう!

 穴があったら入ってブラジルまで掘り進みたい!

「くすっ」

 優ちゃんは微笑み、バッグの中を探ると自分の本にそのブックマーカーを挿した。

「…似てるけど、同じじゃない。何だかあたしたちみたいで、いいですね」

「うん、そうだね」

 私たちはお互いの顔を見てクスリと笑った。

 そして、優ちゃんは私に向かってこう言うのだ。

「ありがとう、やぶきさん。これからもよろしくお願いしますね」

 優ちゃんの屈託のない笑顔が眩しい。

「こちらこそ、優ちゃん」

 私は何だかもの凄い恥ずかしかったけど

「まあ、結果良ければ全てよしだね。いやほんとに…」



  ④【スキヤキ】

 あの刺激的で刹那的な甘い夜から、まだそれ程時間が経過していないある日。

 私はベッドの上に寝転んで、スマホを眺めている。

 そして、そこにある優ちゃんの写真を見ては一人重いため息をつく。


(はあ〜……成り行きとはいえ、私ったら未成年に手を出してしまうとは…)

 私はそんな事を考えながら、頭を掻きむしる。

(まぁでも……お互い合意の上だったし。確かにあの時私たちには愛があった…)

 だってあの日、優ちゃんは何度も私の名前を呼んで、私を求めてくれて…

 あの時の優ちゃんのイケメン具合ったら物凄かった。思い出すだけでドキドキしてしまう。

(いけない! こんなんじゃダメだわ! もうすぐ優ちゃんがここに来るっていうのに!)


 その時インターホンが鳴る。私は小走りに玄関へと向かいドアを開ける。するとそこには優ちゃんがいた。

「い、いらっしゃい!」

「こんにちは」

 優ちゃんが笑顔で挨拶する。その表情からは少し緊張しているような様子がうかがえる。

「どうぞ入って」

 私は部屋へ案内しようとする。優ちゃんは丁寧に靴を脱ぐと

「おじゃまします。はい、やぶきさん」

 そう言って優ちゃんは手に持っていた紙袋を差し出す。

「これ、良かったら食べて下さい!」

 私は差し出された紙袋を受け取る。中を見ると、ドーナツが入っていた。

「ありがとう! 嬉しいわ! あとで一緒に食べましょう」

 私が喜んで受け取ると、優ちゃんは嬉しそうな顔を見せた。

「はい、お願いしますね」


 いつかの約束通り、優ちゃんが私のアパートへ初めて遊びに来た。

 あの体を重ねた夜からまだ日も浅いのに…

 あの時私はああ言いはしたが、まだきっちりと気持ちの整理がつかないままでいた。

 そんな猛獣の檻に子兎は手土産まで持って来てくれたのである。

 私っ! 絶対に変な気を起こさないでね!?


 それから私はリビングへ優ちゃんを通す。

「道には迷わなかった?」

「はい。前もって住所を聴いていましたので」

 テーブルの前に座ると、優ちゃんは。

「今日はやぶきさんちに招待してくれて、ありがとうございます!」

 優ちゃんは律儀にそう言った。

 私は優ちゃんの相変わらずの雰囲気に、思わず頬が緩みそうになるのを堪えた。

「いえいえ。遊びに来てくれてありがとう。何もないけどゆっくりしていってね」



 私は優ちゃんが来る前に予めミルで挽いておいた豆を使いコーヒーを淹れる。

「優ちゃん、フレッシュ無いのだけど、ミルクでもいいかしら?」

「あ、はい。構いません。むしろミルクの方が好きです」

「了解」

 私はミルクをピッチャーに注ぎ、そしてそれらをトレイに乗せ、優ちゃんにもてなす。

「はい、優ちゃん」

「ありがとうございます。いただきます」

 優ちゃんは礼を言うと、カップにミルクを注ぎ、コーヒーに口を付ける。そして、

「美味しい……」

 優ちゃんはそう呟くように言うと、また一口飲んだ。

「それはよかったわ」

 私は優ちゃんの感想を聞くと、安心して微笑む。

「やぶきさんの淹れてくれたコーヒー、すごく美味しいです! 毎日飲みたいくらい」


 優ちゃん、それは「毎日俺に味噌汁を作ってくれ」と同じ意味で捉えてもいいのかしら?


 私は少し照れながら

「さっき、久々にミルで挽いたんだ。普段は面倒で休日の時くらいしかやらないんだけど、優ちゃんにはと思いまして」

 優ちゃんはコーヒーにまた一口口を付け

「それは光栄ですね。美味しい」

 優ちゃんの無邪気な笑顔が眩しい。

「あ、折角だから、優ちゃんに頂いたドーナツ出そうか。優ちゃん今食べられそう?」

「コーヒーと一緒に食べる甘いものは別腹なので!」

 優ちゃんは拳を向けドヤる。

 そう言えばそうだったわね…

 私たちは優ちゃんから頂いたケーキを頬張りながら、いつもの趣味トークに花を咲かせた。



「やぶきさんのアパート、素敵ですねー…」

 優ちゃんがリビングから周りをキョロキョロ見渡しながら、感嘆の声を上げる。

「そうかなぁ……でも、あんまり広くはないよ」

 私は苦笑いを浮かべつつ謙遜した。

「所々にやぶきさんらしさを感じられる物が沢山あって…やっぱ素敵…」

「は、恥ずかしいからあまり見ないで〜」

 私は両手を前に出して制止を促す。

「あ! すみません、つい。失礼しました」

 そう言うと優ちゃんは少し大人しくなってしまう。

 ああ! そんなつもりで言ったんじゃないの!

「優ちゃん! そんな落ち込まないで! 全然気にしていないから! ほら、もっと喋りましょう!」

 私が慌ててフォローを入れると、

「は、はい。わかりました」

 と言って優ちゃんは落ち着きを取り戻す。


 それから優ちゃんと、 音楽や最近読んだ小説、普段の生活のことなどを話しているうちに、いつの間にか夕方になってしまった。

 私も優ちゃんも、結構話し込んでしまったみたい。


「もうこんな時間なのね。優ちゃん、そろそろ帰らなくて大丈夫?」

「え! あ、はい。大丈夫です。それに明日も休みですし」

 優ちゃんは少し慌てた様子で言う。

「あら、そうなの?」

「はい。明日は夕方の塾以外は特に用事もないですし」

 優ちゃんがそう言うので、私は少し考える。

「じゃあ、今晩泊まっていく?」

 私は提案する。

すると、優ちゃんは目を輝かせて、

「いいんですか!?」

 と言った。

「もちろんよ。優ちゃんさえ良ければ是非。あと、親御さんにはそのこと連絡入れてもらえる?」

 私は笑顔で答える。

「ありがとうございます。実は、母には今日は友達の家に泊まるかも知れないとは言って出てきたんです…」

 優ちゃんは申し訳なさそうにそう答えた。

「そうだったのね。なら、ちょうど良かったわ」

「はい。ありがとうございます。では早速……」

 そう言うと優ちゃんは携帯を取り出し、親御さんに連絡を入れた。

「あ、お母さん? あたし、優。うん、そう。それでさ、今晩やっぱり友達のお家に泊まりたいんだけど……えっ!? 女の子だよ! やぶきさん!」

 へー、優ちゃんってお母さんと話すときはこんな感じなんだ。ちょっと新鮮!

 私は優ちゃんの肩をちょいちょいと指でつついて

「変わってもいいかな? 電話」と優ちゃんにウインクしてお願いする。

 優ちゃんは少し赤くなり

「あ、あの、今友達が、電話変わるって言って」

 そこまで言った後、私は優ちゃんのスマホに顔を寄せ優ちゃんのお母さんに向かって話し始める。

「初めまして。優さんにはいつもお世話になっております。早乙女やぶきと申します。あ、いえ、そんな、とんでもないです。こちらこそ優さんには大変良くしていただいております。あ、はい、はい。そうですね。いつも優さんとお会いするときは楽しく過ごさせていただいています。はい、はい。あ、はい、わかりました。伝えておきます。はい、失礼します」

 優ちゃんのお母さんとの通話を終えた。

「や、やぶきさん……そんな畏まらなくても……」

「あ、ああ、つい。なんか緊張しちゃった」

「す、すみません……うちの母が変なこと言って……」

「いやいや! 全然! 気にしないで! 逆に楽しかったから! あはは」

「そ、そうですか……」

「お母さんから優ちゃんに伝言、"やぶきちゃんは良い子だから安心して任せられる"だって」

「あ、ありがとうございます……やぶきさんのことはよく話しているので信頼してくれていると思います」

「あはは……それは嬉しいけど恥ずかしいな〜…」


 私は心の中で懺悔する。

 ごめんなさい優ちゃんのお母さん! お宅の娘さんに一度とは言え手を出してしまいました! しかもファーストキスまで! でも女の子同士だからノーカンですよね!?

「……きさん」

「ん?」

 私は優ちゃんの声に反応する。

「やぶきさん、聞いてますか?」

「あ、あぁ、ごめん!ぼーっとしちゃって」

 いけないいけない。

「もう、しっかりしてくださいね」

「は〜い」

 それもこれも、優ちゃんが可愛過ぎるからいけないんだ! 何とも理不尽な偏愛物言いが人知れず彼女に向けられた。



「それじゃあ、お夕飯の支度でもしましょうか」

 私はキッチンに立ち、冷蔵庫の中を見渡す。

 お豆腐、お肉、人参に椎茸、ネギに白菜。あ、卵もある。

 それらを優ちゃんに相談すると

「すき焼き、ですかね!」と優ちゃんの瞳の端がキラリと光った。

 私はそれ程料理が得意ではない。

 なので、優ちゃんに教えてもらいながら作ることにする。

「割り下がないけど、買ってこようか?」

 私が優ちゃんに訊ねると

「いえ、多分作れると思いますよ」

 そう言うと彼女は醤油、みりん、砂糖、顆粒出汁などを使い、あっという間に作ってしまう。味見をして

「うん。大丈夫かな。やぶきさんも味見して下さい」

 私は優ちゃんから差し出された小皿を手に取り味見した。

「あ、すき焼きのタレだこれ…美味しい」

 すき焼きって素とかなくて作れるものなんだ。優ちゃんの女子力、というかオカン力がすごい…


「あとはこれに具材を入れて煮込むだけなんで。炊けたご飯を混ぜて用意して待ちましょう」

 そう言うと優ちゃんはテキパキと動き始めた。

 私も何か手伝おうと思ったけれど、優ちゃんが

「やぶきさんは座っていてください」と言うので、大人しく待つことにした。


 あれ? 前に他人の家の台所は勝手が違うからなんたらかんたら言ってなかったっけ?

「嫁になって……」私は知らずと独り言ちた。


 グツグツと目の前の鍋からは良い音と良い香りが漂ってくる。

「やぶきさん、できましたよ〜」

「わあ!おいしそう!」

 二人して手を合わせ「いただきます!」をし、私は優ちゃんの作ったすき焼きに舌鼓を打つ。

「おいしい! 優ちゃん凄いね」

「いえいえ、そんなことないですよ」

 優ちゃんは謙遜する。

「そんなことあるよ! 本当においしい! ご飯が進む!」

「ふふ、ありがとうございます」

 優ちゃんが優しく微笑む。


「すき焼き。すき焼き…スキヤキ…」

 優ちゃんが何か独り言つ。

「どうしたの?」

「いえ、すき焼きって言葉の中に一文字加えるととても素敵な言葉になるんですが…」

 優ちゃんはそういうと少し悲しげな顔になって

「いえ、何でもありません! 食べましょうやぶきさん!」

「? あ、う、うん。そうだね。頂こうか」

「はい! あ、やぶきさん、お豆腐取って貰ってもいいですか?」

「あ、はーい」

 私はお玉で豆腐を掬って優ちゃんの取皿に入れてあげる。

「はい、どーぞ」

「ありがとうございます」

 優ちゃんはそれを卵と絡めて口に含みモグモグする。

 私はそんな優ちゃんの仕草に目を奪われる。

 優ちゃんは私の視線に気付いたのか、上目遣いにこちらを見てくる。

 そしてニッコリと笑いかけてきた。

 可愛い……


「やぶきさん、どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ」

「そうですか?」

「うん。それより優ちゃん、もっと食べる?まだいっぱい材料はあるけど」

「はい! まだまだ食べられます」

 そう言うと優ちゃんはお椀を差し出してくる。

 私はそこに肉と野菜を盛り付ける。

「はい、どうぞ」

「はい、やぶきさん、あ〜ん」

「あ〜ん」

 私は優ちゃんにされるがままに口を開けて、箸で摘まれた具材を食べさせて貰った。「は〜、しあわせぇ……」

「やぶきさん、なんかおじさんみたいですね」

「え〜、酷いなぁ」

「ふふ、すみません。でも、やぶきさん、すごく幸せそうな顔をしているのでつい……」

「そりゃあ、好きな女の子にすき焼きを作ってもらってあ〜んしてもらえるんだもん。こんなに幸せなことはないよ」

「あぅ……や、やぶきさん! 恥ずかしいですからやめて下さいよ」

「あはは、ごめんごめん」

「もう、反省していないじゃないですか」

 優ちゃんは頬を膨らませて抗議する。

 改めて、可愛い……


 それから私たちはお腹一杯になるまですき焼きを堪能し、お風呂に入ることにした。

 優ちゃんと一緒にお風呂。なんだかドキドキする。

 私は優ちゃんと向かい合って湯船に浸かる。

 お風呂の熱さなのか、それとも緊張のせいか分からないけれど、身体が火照る。

 彼女の白い肌もほんのりと赤く染まっているのが分かる。

「や、やぶきさん、あの、あんまり見つめられると、その、恥ずかしいです……」

 優ちゃんがモジモジしながら言う。

「あ、ああ、ご、ごめんね」

 私は慌てて目を逸らす。

「そ、それにしても、すき焼き美味しかったね」

 私はわざとらしく話題を振る。

「そうですね。私も久し振りにすき焼き食べた気がします」

「うん。また作ろうね」

「はい!」

 優ちゃんは元気良く返事をする。

「あ、あと、今度一緒に服を見に行こうよ」

 私は思い切ってデートのお誘いをしてみる。

 優ちゃんは一瞬驚いたような表情をしたけれど、すぐに笑顔になり 「 はい! 是非お願いします」と言ってくれた。

 私と優ちゃんはその後もしばらく雑談をしてからお風呂を出た。


 優ちゃんはちゃっかり着替えも持参してきていた。

「優ちゃん、もしかして最初から泊まる気だったんじゃ……」

「あ、バレました? 実はそうです」

 優ちゃんはテヘッと舌を出して言う。

 可愛すぎる……!


「まあいっか。今日はたくさんお話ししたから疲れたよね。ゆっくり休んで」

「はい。ありがとうございます」

 私は優ちゃんを寝室へ案内する。

「ここが私の部屋だよ」

「わあ!」

 優ちゃんは部屋に入ると嬉しそうに歓声を上げた。

 CDと本ばかりの私の部屋のどこに歓声を上げる要素があったのだろう。私は苦笑する。


「えっと、ベッド使っていいよ。私は布団敷いて寝るから」

「あ、いえいえ! そんな! 私が床で寝ます!」

 優ちゃんは両手を前に出して必死に遠慮する。

「いやいや、お客様にそんなことさせられないよ。大丈夫だから」

「いえいえ、やぶきさんはお客さんというより、もう家族みたいなものなので! 気にしないでください!」

 優ちゃんは真剣な眼差しで言う。

「え、あ、う、うん。分かったよ。じゃあ、一緒に寝ようか」

「はい!」

 優ちゃんは満面の笑みで答える。

 こうして私たちの夜は更けていった。



「…やぶきさん、寝ました?」

 隣の優ちゃんが小さな声で訊いた。

「…起きてるよ」

 私は上を向いたまま答えた。

「起きてたんですね」

「……うん」

「……あの、一つだけ聞いてもいいですか?」

「うん。何?」

「……あたしたち、女同士だから、恋人にはなれませんけど、それでも友達でいてくれますか?」

 私は優ちゃんの質問に驚いてしまった。

 優ちゃんは不安そうな様子で私の返答を待つ。


 私は少し考えてから口を開く。

「……もちろんだよ。私たちはずっと友達。これからも、仲良しでいようね」

 私はそう言って優ちゃんの手を握った。

すると優ちゃんは安心したように微笑んだ。

「…よかった。あたし、あの日の夜、やぶきさんと共に過ごして、引きずっちゃいけないと自分に言い聞かせても、まだすっきりしてなくて……」

 優ちゃんは悲しげに呟く。

 私は黙って優ちゃんの言葉に耳を傾ける。

 そして、優ちゃんは続けた。

 まるで懺悔でもするように。

「新しい恋を見付けようなんて、それらしいことを言っても、どうしてもやぶきさんのことが頭から離れなくて…」

「……」

 私はただ静かに彼女の言葉を聞く。

 優ちゃんは続ける。

 とても苦しそうに。

「この恋を諦めなくちゃと思って、忘れようとしたのに、忘れられなかった。だから、今日やぶきさんに会えて、本当に嬉しかったです。こんな気持ちのまま、やぶきさんに会ってごめんなさい…」

 私はゆっくりと首を横に振る。

「謝らなくてもいいの。だって、私も同じだもん」

 私は優ちゃんの手をギュッと握った。

 彼女はビクッとしてから私を見る。

 私は彼女に向かって言う。

 彼女に届くように、精一杯の想いを込めて。


「私も優ちゃんのことが好き」

 優ちゃんの目が大きく見開かれる。

 私は続けて言う。

 今度は自分の言葉で、はっきりと。

「私は優ちゃんが好き」

 優ちゃんは呆然としている。

 私は構わず話を続ける。

「あの、優ちゃんと結ばれた日のことは、きっと一生忘れないと思う。優ちゃんと過ごした日々は、私の大切な宝物だよ。でもね、私はやっぱり優ちゃんと友達になりたい。それは、私が男だったとしても変わらない」

 私は優ちゃんの顔を見て言う。

「優ちゃんが女の子だからとか、そういうことじゃないの。私は、優ちゃんと、相田優と、本当の意味で親友になりたいの」

「やぶきさ……」

「優ちゃんが男の子だったとしたら、私は優ちゃんに告白して振られてたかもしれない。でも、優ちゃんが女の子だったから、私は勇気を出して好きになったの」

 私は優ちゃんの言葉を遮るように話す。

「ねえ、優ちゃん、私は今でも優ちゃんのことが大好き。これは私にとって、紛れもない事実なの」

 私は真っ直ぐに優ちゃんの瞳を見つめる。

優ちゃんの頬を涙が伝う。

「優ちゃん、今は私も苦しい! 出来ることなら感情のまま優ちゃんを押し倒してしまいたい!」

 私は力強く叫ぶ。

優ちゃんは目を大きく見開いて私を見ている。

 私は優ちゃんの目をじっと見据えて言う。

これが今の私に言える精一杯。

「でも、そうしてしまったら、きっとこの先前に進んで行けないと思うの。優ちゃんも、私も……」

 優ちゃんは涙を流しながら小さくコクりと肯く。

「だから、私は我慢するよ! いつか、優ちゃんが心の底から幸せになれる日まで」

 私はそう言って、優ちゃんの頭を優しく撫でる。


「……やぶきさん」

「私だって今は辛いよ? だけど、耐えてみせるよ。優ちゃんのことを想えば、これくらい平気だよ」

 そう言って私は笑顔を作る。

「……ありがとうございます」

 優ちゃんは泣き笑いのような表情で言った。

「いえいえ、どういたしまして」

 私はそう言って微笑む。

「納得は出来ないだろうけど、今はまだ時間が必要なんだと思う…私にも、優ちゃんにも…」

 優ちゃんはコクリと肯く。

 私は優ちゃんの頭をもう一度ポンポンと叩く。

「私の嫌な過去も、時間と優ちゃんが柔らかく包んでくれたように、優ちゃんの悩みも時間が解決してくれるよ。優ちゃんは優しい子なんだから、大丈夫」

 私はそう言って優ちゃんを抱き締めた。

「無理せず一緒に頑張ろう! 私の最愛の親友!」

 私はそう言って、優ちゃんから離れた。

 

 それから、私たち二人は無言のまま暫く見詰め合う。私の目にも彼女の目にも、涙の跡がまだ薄っすらと残っている。

 やがて、どちらからともなく左手を差し出し合って握手を交わした。

 そして、お互いの健闘を称え合うように強く握り合った。

 手首の音符が揺れ合い、カチャリ…と一つ音を立てた。

 輝かしい未来への扉を開く、鍵の音のように。




  ⑤【トレインアゲイン】


 通勤と通学で段々と混み合ってくる車内、やぶきは座り文庫本を読んでいる。次の駅で乗り込んでくるだろう優を待ちながら。

(今日も元気かな?)

 やぶきはそんな事を考えながら読んでいた本を閉じた。

(朝交わしたメールだと変わりなさそうだったけど)

 やぶきはそう思いながら、開いた乗車ドアの方に視線を向ける。

 すると……そこから乗ってきたのは紛れもなく、やぶきの待ち人。優だ。

 優は満員電車の中、吊革に掴まりながら立っている。そして、優はやぶきを見つけると笑顔になり小さく手を振った。

 やぶきは優に会えた嬉しさから頬を赤く染める。それから、やぶきは微笑んで軽く手を振り返した。


 それから数分後、やぶきが降りる駅に着く。優も同じく降りてくる。

 二人がようやくそこで挨拶を交わす。

「おはようございます、やぶきさん!」

「おはよう、優ちゃん」

 二人は互いに笑顔になった。


「いやー、今朝は電車混んでたね」

 やぶきは苦笑いしながら言った。

「四月ですし、新入生や新入社員の人も増えたんじゃないですか?」

 優は落ち着いた感じで答える。

二人はそのまま歩き出す。


「今日は平日なのに、わざわざありがとう優ちゃん」

 やぶきは申し訳無さそうに言う。

「いえ、講義は友達に後でノート写させてと頼んできたので大丈夫です!」

 優は明るい声で答えた。

「土日は混んでて中々予約取れなくてさ。下見だけでこんなに大変なのに、本番当日はどうなることやら…」

 やぶきは少し大袈裟に肩を落としてみせる。


 そうこうしてる内に、二人は目的地に辿り着いた。

「着きましたね」

 優が感慨深げに呟く。

 そこは都内にある結婚式場だった。

 やぶきも式場を見上げて

「着いちゃいましたね」

と、少し誇らしげな表情を浮かべていた。


 優は今年で大学二年生になっていた。

 やぶきは今年で二十九歳になる社会人。

「月日が過ぎるのは早いねえ…」

 やぶきは染み染みと呟く。

 優はクスッと笑った。


 二人の目の前には、大きく開かれた入り口があり、やぶき達は入ってすぐの所の受け付けに声を掛ける。

「あの、本日衣装合わせで予約をさせて頂きました早乙女です」

 やぶきが名乗ると、受付の女性は少々お待ち下さいと言って電話を取り、誰かと話をし始めた。

 それからすぐに、別の女性が出てきて、こちらへどうぞと二人を案内する。

 女性に連れられ、やぶき達は衣装室に向かった。


 部屋に入ると、そこには数人のスタッフらしき人達がいた。

 部屋の奥の方では、ドレスを着たマネキンが何体か飾られていた。

 女性はやぶき達に頭を下げてから ご説明しますと言い、やぶき達を連れて部屋の奥へと進む。

 そして、一着のウェディングドレスの前で立ち止まった。

 そのウェディングドレスを見た瞬間、やぶきの心臓が大きく跳ね上がる。


「こちらがご試着の予約を頂きましたドレスになります」

 そう言って、女性はやぶきにドレスを見せるように一歩後ろに下がった。

 すると、やぶきは目を大きく見開いて固まる。

 優はその様子に気付き、穏やかな顔をしながらやぶきの隣に立つ。

 優は目の前のドレスを見て、やぶきに

「…素敵なドレスですね。やぶきさんによく似合いそう」

 と優しく声をかけた。

 しかし、やぶきからの返事はない。

 優は、やぶきを見るとその瞳から一筋の涙が溢れるのを見た。

「……やぶきさん? どうしました?」

 優の声掛けでようやく我に返ったのか、やぶきは慌てて言葉を返す。

「あ、ううん! 何でもないよ! ちょっと感動しちゃって」

「……そうなんですね」

 優はそんなやぶきの様子を見て、少し目を細め、それ以上は何も聞かなかった。


「それじゃ、早速着替えましょうか!」

 先程のスタッフの女性がそう言うと、女性はやぶきの手を引いて更衣室のカーテンの中に消えていった。

 数分後、やぶきは純白のウエディングドレスを着て出てきた。

 それを見た優は息を呑んだ。


「…やぶきさんの花嫁姿、綺麗ですよ……」

 優は感動で一瞬言葉を失ったが、なんとかそう言いながら拍手をする。

 やぶきは頬を赤らめて照れくさそうにしている。

「……ありがとう、優ちゃん。でも、本当に良いのかな……。私なんかがこんな素敵なドレス着ちゃって……」

 やぶきはそう言いながら、遠慮がちに微笑む。

「何言ってるんですか! やぶきさんだからこそ着れるんですよ!」

 優はやぶきの言葉に被せて言う。

「幸せいっぱいな、やぶきさんだからこそ…似合うし、こんなにも、素敵なんです」

 優は真剣な眼差しで言った。

「そっかぁ。ありがとう、優ちゃん」

 やぶきは嬉しさで頬を緩ませている。


 ドレスの細かい採寸調整、コルセット選択、髪型、などなど、こんなにも沢山決めなくてはならないことがあり、やぶきは正直不安だったが、同行してくれた優のおかげで安心して準備を進めることができた。


 式当日に着るドレスも決まり、今日の打ち合わせも終わりが見えてきた。

「早乙女様、お疲れ様でした。これで本日の衣装合わせは終了となります」

 女性がそう言うと、やぶきはホッとした表情で椅子の背もたれに寄りかかる。

「ありがとうございます! 今日は色々と相談に乗ってもらって、助かりました!」

「いえいえ、また何かありましたら、いつでもお越しください」

 女性はそう言うと、部屋の外に出て行こうとしたところ、やぶきは

「あ、あの! 着替える前に写真を撮って頂いてもいいですか?」

 と声を掛けた。



 ここは屋内撮影用の礼拝堂。

 本日は予約が入っていないので、折角ならと女性は気を利かせて撮影場所に通してくれた。

「ありがとう御座います。ちょっと写真を撮ってもらうだけのつもりが、こんな所にまで通して頂いて」

 やぶきが申し訳無さそうに頭を下げる。

「いいえ、気にしないで下さい。せっかくですので、お客様のお好きなアングルで撮影できるように致しますね」

 女性はそう言ってやぶきが渡したスマホを構え、やぶきを撮影する。

 やぶきは笑顔でピースサインをしてポーズを取る。

 その様子を見ていた優はクスッと笑った。


 優はやぶきの撮影を邪魔しないように、静かにその場で見ていた。

 その顔は感慨深く、まるで我が子を見ているような優しい目をしている。

 そんな時

「優ちゃん! 何してるの? 早くこっちおいでよ!」

 やぶきからそう声が掛かる。

 優はやぶきの声にハッとして我に返る。

 そして白いバージンロードを通り、十字架の下にいるやぶきのもとへ駆け寄る。


 やぶきのドレス姿を近くで見ると、改めて綺麗だと実感する。

 純白のドレスに負けないほどに、やぶきの顔色は白く輝いている。

 優は、やぶきに見惚れていた。

 そして、やぶきと目が合う。

「…どうかな?」

 やぶきは優の反応が気になるのか、チラリと目を見つめて優の様子を伺いながら聞いてきた。

「あ、ごめんなさい。あまりに綺麗だったもので……」

 優は照れたように笑いながら答える。

「やだ、恥ずかしい」

 やぶきは頬を染めながら、両手で顔を隠すように覆う。

 その仕草がとても可愛らしく、優は思わず見入ってしまう。

「……やぶきさん。本当に素敵ですよ。本当に、綺麗です」

 優の瞳が潤む。やぶきが優の手を優しく握る。

 やぶきはそっと優しく言葉を紡いだ。


挿絵(By みてみん)


「……優ちゃん。私ね、優ちゃんに会えて本当に良かったと思っているの。優ちゃんがいなければ、私はきっと今も後ろ向きに生きていたと思うから…」

 やぶきはそう言いながら、優の瞳を真っ直ぐに見つめる。

 優はやぶきの瞳に吸い込まれるかのように魅入る。

 やぶきは優の手を握ったまま、優しい声で言葉を紡ぎ続ける。

 やぶきはいつも優に対して、真摯な姿勢で接していた。

 それは、やぶきにとって特別な存在の証でもあった。

 やぶきは今までの人生を振り返りながら、言葉にする。


 やぶきは優と出会ってからの日々を思い出す。

 優はやぶきのことをずっと応援してくれていた。

 辛い時は傍に居てくれた。

寂しい時には、手を握ってくれた。

 悲しいときには、一緒に泣いてくれて、励ましてくれて、慰めてくれた。

 嬉しいときは、自分事のように喜んでくれて、祝福してくれた。

 楽しいときは、自分のことの様に楽しんでくれて、喜んでくれる。

 どんな時でも変わらずに、傍に寄り添ってくれた。

 やぶきにとって、それがどれだけ救いになったことか。


 やぶきは、優に心の底から感謝している。

だからこそ、この気持ちを伝えたかった。

「ありがとう。こんなにも素敵な時間を過ごせて、私は幸せだよ」

 やぶきはそう言いながら、涙を流す。

 やぶきの言葉を聞いた優は、思わずやぶきを抱きしめた。

「……優ちゃん?」

 やぶきは突然の出来事に驚きながらも、優しい表情をしている。

「私こそ、ありがとうございます。やぶきさんのことが大好きです。今までも、これからも…」

 優はそう言うと、やぶきを力強く抱き締める。

「優ちゃん、苦しいよ」

 やぶきはそう言いながらも、優の腕の中で嬉しそうにしている。

「す、すみません…」

 優は慌ててやぶきから離れる。

「もう、せっかくいい雰囲気だったのに台無しじゃない!」

 やぶきは口を尖らせながら冗談混じりに言う。

「ふふっ、そうですね。これ以上折角のメイクを崩したくないですし」

 優は微笑みながら相槌を打つ。


「さぁ、写真撮ろう! お姉さんお願いします」

「あら! もう既に何枚か撮ってしまいましたわ! でも、はい、ふふっ。かしこまりました。では改めまして…」

 女性はそう言うと、やぶきと優にカメラを向ける。

「では撮りますね。3、2、1っ!」

ここまで読んで頂きありがとう御座いました。

本編のおまけ【砂糖入り】はこれにて終了になります。


二人にとって、コーヒーを飲む時、砂糖は不要なものでしたが、この物語にはもう少し“砂糖”が必要かなと思いまして、今回追記という形をとり、これにて完結とさせて頂きました。


二人と読者様を取り巻くこれからの人生に、どうか幸せな未来を。

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