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5日目

私は恋に落ちた。本当の意味で。


「今日はやけに静かだな。調子でも悪いのか?」

まただ。

「なんでもないです。少しほっといてください…」

「ほっとけるわけないだろ。一応ここにいさせているのは俺だから…責任はある。」

ほらまた。

「少しだけ1人にする時間をください。」

「お、おう。わかった、部屋はあるからな。」

私はリビングを離れ、1人になれる部屋を見つけた。そしてやっと呼吸をした。

優しい。私を心配してくれる。胸に温かみがふわっと広がる。

昨日私は陽さんに頭をポンっとされた。少しの同情でそうしてくれたのかもしれない、でもそれが私の中にスッと落ちてきてどうにも言葉に表せなくて、あの手の温もりを忘れられなかった。

切ない。

初めてこんな言葉使った。今まで本の中でしか見たことがなかったこの言葉は今の私にぴったりだ。

今までの一目惚れだけの勢い任せの自分が恥ずかしい。恋って片想いってこんなに苦しいのか…。今にも泣きそうになった。

あと何日一緒にいられるんだろうか。本当の意味で「好き」って言っていいのだろうか。

私の心の中は混沌を極めた。

コンコン

「おいお前大丈夫か?」

もはや聞きたくない声、でも不思議と安心する声。苦しくなるからやめてほしい。

「どっか行ってください!…でも…ここに、いて…」

どっちつかずの返答は陽さんを困らせるだろう。私は泣いていた。

「俺はここにずっといるけど?」

確かに。私たちはずっとここに2人きり、誰かに見つかることもできない。

「そこにいて…」

少しの沈黙が私を落ち着けた。陽さんはドアを開けずに越しで話しかけた。

「…俺がなんかしたか?」

した。

「してません…」

「そうか、今日は何だかお前との距離が遠く感じる。いつもはなんかこう、ぐあーってくる感じなのに。」

そういうことを言わないでほしい。

「陽さんだっていつも、ぐあーって感じですよ。」

からかいあいがちょっとだけいつもを取り戻す。

「どういうことだよ…あとはいつも突拍子もないが、今日はもっと突拍子もない。」

「でも質問してもいいって言ったの陽さんですよ。そりゃ突拍子も無くなるでしょ。あとそういう提案をする陽さんも突拍子もないと思います。」

「そうか?ってか何だかんだいつも通りからかう元気あるじゃん。安心した。」

だから…

「だから!そういうとこ!本っ当に突拍子もない!いつもいつも私を落とす!――」

私はつい声を荒げてしまった。一息入れて落ち着いた声で今日は聞きたいことはないと言った。

「じゃあ俺から聞いていいか?」

「…」

「寡黙は肯定ととるからな。好きな食べ物は?」

「…なんで今、またそれを」

「お前がそんな調子だと気が狂うからだよ。答えたやつ買ってきてやる。」

さっきの私の話を聞いていなかったのか?そういうとこだって言ってるのに。

「おととい言ったじゃないですか、唐揚げですよ。もう忘れたんですか?」

今の私は最高に仏頂面だろう。

「おーそういえばそうだったな。じゃあそれ買ってくるからお前は待ってろ。」

ちょっとわざとらしく思い出した陽さんが出かけていく音がした。

私は疲れて泣きながら眠ってしまった。

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