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13日目

私は夢の中で幸せな未来を想像していた。

それは温かい陽だまりの下で手を繋いで笑顔で話していること。

そんな幸せを夢見て私は愛について模索した。


目覚めた。人の温もりと押入れの湿気を感じながら。

「ぅわ!」

小声ではあるけど心臓に手を当てながら驚いて飛び起きた。

陽さんはまだ寝息を立てていて、私はそおっと押入れの扉を開けた。

昨日は特にバレることもなかったのか今こうして生きていて、一階からも音はしなかった。

どうやらあのヤンキーたちは帰った、もしくは一時退散したのかもしれない。

私は胸を撫で下ろし、陽さんを起こすことにした。

「陽さん…?」

肩をトントンとしてみた。今まででも近くに行ったことはあるが真正面から寝顔を見たのは初かもしれない。

この前のは横顔だったから。

陽さんは目をギュッとしてからあくびをして

「おはよう」

と言ってきた。本当に心臓に悪い。何度でも恋に落ちれる。

「お、おはよう」

自分でやった事とはいえ、まだ緊張する。

「そういえば、一階は大丈夫になったか?」

「声はしないからいなくなったのかも?」

「そうだな、でも一応俺が下に行ってみてくるよ」

頼もしい。かっこいい。

「わかった」

しばらく待っていると、

「夏世!降りてきていいよ!」

明るい声が階段を伝って聞こえてきた。

私は転ばなように落ち着いて、でも私たちの楽園が返ってきて嬉しくなって笑顔で降りていった。

別に我が家ではないがもう何日もここにいる、そのせいか少しボロなこのリビングが落ち着いた。

「なんか自分ん家じゃないけど落ち着くね」

「たしかに」

私たちは平穏を取り戻し安心したように笑い合った。

「あ、質問思いついた」

「お?なんだ?」

「陽さんがこの世で怖いものって何?私は蜘蛛」

「この怖い思いをした後でよく聞けるなぁ。なんだろうな…ちょっと考えるわ」

数十秒後

「多分だけど熊かな」

「熊?」

「そう、昔山に行った時に目の前に突然現れて襲われそうになったんだ。まぁ今こうして健康ということは助かっているって事なんだけどさ」

「それは怖かったね」

「それから熊は怖いね。トラウマかな?」

熊だけど、と冗談まじりに言った。

陽さんの過去をまた一つ知れた。怖い体験だったけど私は知れて嬉しい。

「多分そうなのかもね」

「そういえばなんで蜘蛛が怖いの?」

「だって足がいっぱいでざわざわ動いて怖いじゃん!」

怖いというより気持ち悪さもはいっているが。

「確かにね、可愛いじゃん」

はははと陽さんは笑った。

今、陽さんは可愛いと言ったのか?それは何に対して?

「何に対して可愛いの?」

ちょっと冗談めかしたように言ってみた。すると陽さんは手の甲で口を隠しながら、

「ノーコメント」

と言った。

「そう…」

私は気にしないふりをした。本当は気になってしょうがないけど。だって問い詰めたら嫌われそうじゃん。

仕方ないので寝っ転がった。

「おやすみ」

「おやすみ」

特にその後聞くこともなく私は夢の中に逃げるように入っていった。

この頃はまだ気づく由もなかった。

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