#02
14年アルステラ王国のリリアとして生きてきて、先日の火事でこの国で生を受ける前の世界でやっていたゲームの内容を思い出した。
生まれ変わってこの世界に来れたのだから私にはやりたいことがある。前世で母を守れなかったことは新しい生をもらった私にはどうすることもできない。この世界では私の周りの人達を守るために強くなりたい。
そしてバッドエンドだらけのリュウの結末を変えたい。ここはゲームの世界だけど、私はここで生きているのだから。
ただ、何年後にストーリーが始まるか分からないのが問題だ。この国での私は14歳で主人公は魔法学校に入学してからがストーリーの始まりだとすると今主人公は何歳なのか?
姫祝のゲームで私に似たキャラがいたかというと赤髪のキャラは少なかったので分からないというのが正解だ。メインヒーローのレンの家族である王族は皆、火の魔法の使い手だったから赤髪という話をレンを攻略中に言ってた気がする。たぶん。
可能性があるとするとレンといつも一緒にいた見た目が男か女か分からないサングラスで目を隠したサブキャラクターぐらいしか思い当たらない。
生まれ変わったからと言って必ずメインキャラクターになるわけがないけど。
今の私は赤髪で目は漆黒、前世の顔よりは綺麗な顔をしていて自分で言うのもなんだが好きな顔ではある。たぶんこの顔なら前世ではモテたと思う。それぐらい綺麗なのでこっちの母に感謝である。
リュウが現れるのは主人公が入学してからだ。他国出身のリュウは主人公入学後に下級地区に来る描写が姫祝のプロローグで描かれていた。下級地区に来たリュウが闇の魔法を使って人々を従え国を支配しようとするのを主人公と攻略対象達の力で防いでいくのだ。
その為主人公がいつ入学するのか知らないとリュウに会えるタイミングが掴めない。中流地区から魔法学校に通う者が出たら地区中で噂が飛び出す可能性が高いので、それまでは修行すればいいのではないか。そんな安直な考えしか出てこなかったが全は急げというものだ。
「レオ。魔法をもっと上手に使えるようになりたいの。」
ご飯を食べ終わりレオが席を立つ前に思い気って伝えた。レオは目をぱちくりさせ首をかしげる。
「どうしたいきなり。難しい顔してると思ったが。魔法の素質はあるからゆっくりでいいじゃないか?」
「ゆっくりじゃ駄目なの。」
「なんでまた?」
「強くなってみんなを……レオを守れるようになりたいの。その為には早くから魔法について知りたいの!」
レオを守りたいのは本当。この世界で、私を助けてくれた人で今まで育ててくれた人だから。でも将来的に守りたいのはリュウの未来の出来事。
「そういえば、リリアはこの前の火事で火の魔法が使えるようになったんだっけか?」
「うん。火は怖いけど、怖い理由が分かったから。」
前世の火事が怖いと感じる原因だと知った。次はこの力で守りたい人がいると思うと怖さよりも力が出る気がした。前世のことをレオに言ったらレオに心配されるから詳しくは話していない。
真剣な目で伝えれば特に深く理由も聞かず「分かった。」という返事をくれる当たり、レオは私に弱い気がする。レオが良い男ということか。レオに笑顔でお礼を言い、食器の片付けとレオが仕事から帰ってくるまでにやっておくべきことを聞いて私は忙しく動いていた。
レオの仕事が終わると家の近くの平地につれてこられた。
「知っていると思うが俺の魔法は風を操る。」
そう言ってレオは手のひらを上にあげた。目には見えないが木々や私の服が揺れているので風を使っているのが分かる。
「この国の魔法は5つある。俺が使える風、リリアは火と珍しい闇だ。他に水、雷、土って感じだ。生活魔法程度が使えるのが普通だが、傭兵や国を守る魔法使いになると魔法を使える力も変わってくる。基本生まれ持っての才能ってのが大きいがな。」
レオは髪を指差し
「俺も力はあるほうになるな、髪が緑かかった茶色になっているだろ。これが魔力のある証拠。自分の魔法を使いすぎると色が茶色になることは覚えておくようにな。」
「はーい。」と返事をした。ゲームでは知らなかったことを聞き関心してしまう。私の場合は火の魔法を使いすぎるとこの赤い髪は茶色になるのか。目の色はどうなんだろう。
「魔法は自分がどう使いたいかで具現化する。俺だと風を飛ばしたいと思った時に風を吹き飛ばす勢いをイメージして出す。」
風の勢いで近くにあった木が倒れていく。風の勢いが強く目が開けられない。
風が収まってから良く見ると木は根元から折れていた。
「すごい。」
「まあな。この力があるからできる仕事もある。俺には風の魔法はあっているんだ。」
木を倒し風で運ぶ。レオンの仕事は家を建てる前世でいうと大工である。主に中流地区の家の建築を担当しているが、確かに向いた魔法だと思う。
「そして一番大事なことは魔法で人を殺せるということだ。」
聞きなれない言葉に唾を飲み込んだ。レオは真剣な表情で私を見る。
そうだ、この国では人を殺める描写をゲームで見た。リュウが笑いながら人を殺すスチルがあった。ゲームでは何も感じていなかったが、今この世界が私の現実だ。
ひきつった顔をしていたのかもしれない。レオは「やめるか?」と聞くので力いっぱい首を横に振った。
「それぐらい魔法が怖いものだと知って魔法を使うんだ。人を傷つけれることを知って覚悟を持って使う。精神力ってのは大事だぞ。じゃないといざって時に魔法が使えない。上手くコントロールできないんだ。国の兵隊さんでも適当に魔法を使っている奴はいるからな。あとで自分がどうなるかも知らずにな。」
レオは私を見ず空を見ながら話している。まるで何か知っているかのようだが、今聞いていいのか悩みつつ聞いてしまう。
「何かあったの?」
「いや、まあ昔の話だ。気にするな。さ!始めるぞ!」
あからさまに避けられたのでそれ以上は聞けず仕舞いになった。