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#01

炎を見て体が動かなかったのは炎の怖さを私が知っていたからだ。この世界で14年生きてきたのに以前からこの世界を知っていると思った私の感は当たりだったようだ。


「逃げるぞ!」


近くにいた男性の声でやっと体が動く。男性は私の手を引いて走り出し、私はやっとの思いで息を吐き走った。後ろを振り向くと大人達が手をかざし魔法で火を消している。


手に力を込めれば炎が煌めいている。赤く時折青く。熱いけど私を燃やすものではない。助けてくれた男性が驚いていたが気にしない。



齢14歳。ここはゲームの世界だ。
















私がやっていたゲーム『姫君の祝福』は魔法の国、名前をアルステラ王国という。5つの魔法の力で国を統治し発展した国という設定だ。他の国との交流はあるが姫君の祝福は続編が出なかったので他の国のことは今の私には分からない。


この国は上流・中流・下流に地区が分かれ、階級ごとに住む地区が変わる。

階級の高い王族、貴族は立地も上の上流地区に住み裕福な生活を送る。

一転、下流地区に住む人間は衣食住もままならず犯罪をしてなんとか生活をなりたたせる、そんな貧しい生活を送る者が多い。


『姫君の祝福』は略して『姫祝』と呼ばれ高校生から30代の女性に人気のあった王道恋愛ファンタジーゲームだ。『姫祝』の主人公は中流階級の子爵家の子どもで魔法の力の中でも貴重な光の属性だったこと、魔法の力が強かったことから15歳で上流地区にしかない魔法学校に特待生として入学し、その学校に通う王子様や騎士達と出会い恋愛をしながら悪と立ち向かうといった内容だ。


私もこのゲームが大好きで何度もやったことを思い出す。残業して週1日ある休みをこのゲームに費やした。今思えばまともに恋愛もしない女だった気がする。それでも仕事から帰ってこのゲームをするのが生きがいだったのよね。

まず何が良かったかというとイラストレーター万歳と言わせるほどの画力。ヒロインも金髪サラサラ髪で目は薄い青色かかったくりくり二重の目。可愛いし、優しい天使だったのと、自分の好みが見つかると言わざる負えない攻略キャラ達もすごく格好いいし可愛いしで愛らしかった。

そしてゲームをやったほとんどの人に「シナリオライター神!」と言わしめたのが、恋愛に発展する過程が長く、丁寧に書かれていること。1人プレイするのに数日要し、2週目にはセリフも変わる部分が多く、1度で2度美味しいものだった。その為ゲームの値段は下がらず同じ時期に出た乙女ゲームの値段が下がっても姫祝の値段は下がらなかったものだ。自分が主人公になったかのようにゲームを楽しむことができ、私も主人公のアリスとして恋愛に励んでいたものだ。


ただ、このゲーム残念な所がある。それは私の好きなキャラクターが隠しルートの敵キャラという美味しいキャラクター設定なのだが、隠しルートなのにバッドエンド以外ルートがないというものだ。

メインヒーローと主人公の邪魔をする敵キャラなのでハッピーエンドが難しいのは分かるけど、犯罪も平気でする人だから。主人公が恋に落ちる過程は書いてあったのに、何故ハッピーエンドだけ書けなかった。全部のエンドをバットにしなくても良くないか?1個ぐらい省いて書いてくれれば良かったのに。

私は恋愛じゃなくていいから彼が生きているエンドが見たかったのに!と全攻略キャラをクリア後にしか出現しないルートを見て思った。

どのルートも攻略キャラや主人公のアリスと戦って死ぬエンド。争いを回避しても病死でなくなるルート。アリスを守る為に自ら自害するルートなんか辛すぎて仕事が出来ず先輩に今までで一番と言っていいほど怒られ、残業時間は酷いことになったのを思い出した。


ここで話は戻るが、この国で使われる主な5つの魔法というのが火・水・風・土・雷である。他の国には違う属性もあることや滅多に生まれることがないのが光と闇の属性持ちである。主人公のアリスは最も珍しい光属性を持って生まれたとされている。


それに対してメインヒーローの王子様が火属性、敵対する私の推しキャラが闇属性で光属性の主人公が倒す相手というわけだ。

また、魔法の力が強いとその属性の色に目や髪が染まるのだ。魔法の力が少ない者は基本髪の毛は茶色で目は黒に近い茶色になるのに対し、私の好きな彼名前を「リュウ」というんだけど、リュウの魔法は強く闇属性ということで闇を表す漆黒の髪、漆黒の瞳が特徴。

見た目もメインヒーローに負けない格好良さ。切れ長の二重の目と編みこみをした長髪の髪が妖艶で綺麗だ。スチルをスマートフォンの待ち受けにしていたのをふと同僚に見られたこともあったけ。同僚の目は今でも忘れない。うん。忘れよう。




ある程度頭の整理ができ、ベッドから起き上がる。昨日の火事を目の当たりにしずっと倒れたまま回想なんかしていたからだ。


「今何時だろう。」


窓を見るとまぶしいくらいに光が差し込んでいる。


ドアが開く音がし、その音の方向を見るとレオがこちらにやってきた。


「リリアやっと起きたか!ずっと起きないから昨日の火事でどうかしちまったのかと心配したんだぞ。どこか痛むか?大丈夫か?」

「レオは心配しすぎだよ。なんで泣くのよ。私元気だから。」


そう言ってもレオは涙を筋肉のついた腕でぬぐっている。



「しょうがねえだろ。お前が火事に巻き込まれそうになったの、俺が買い出しなんか頼んじまったのが原因だしよ。助けてくれる人がいなかったら今頃どうなっていたかと思うと。」


大きな体のわりに涙もろいのがレオである。



「大の男がそんな泣かないでよ。レオのせいで火事に巻き込まれたわけじゃないから。ね?私元気だからご飯食べよ!作るから待ってて。」



ベッドから降りてキッチンに向かう。慌てた様子のレオは放っておくことにした。


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