6.刺客(侍)が来た
「貴様か! 王女を助けた人間は!!」
デスクに座った俺を指さして叫んだのは、時代劇に出てきそうな侍だった。
色んな意味で場違い感がハンパない。
会社の人間は自席に座ったまま、目を丸くして侍を見ている。
俺も意外だ。
王女っていうからには、刺客は騎士っぽい見た目のほうがしっくりくるんじゃないか。
なんで侍。
しかもちょっと落ち武者っぽいヤツ。いや、浪人か?
「就業後にしてもらえませんか。会社にも迷惑なので」
不審者を相手にしているヒマはない。
ミーシャの関係者には違いないだろうけど。
一体誰なんだ。
「ふふふふ……捜したぞ……貴様の名を聞かせてもらおうだが人に名を聞くからにはまず自分から名乗るのが礼儀だな。私の名はキャッツアイランド王国第68代目国王に仕える大臣ニャートリア様の右腕、大魔法使いのミゲール!!」
聞いてないけど名乗った。
「魔法使いなのになんで侍なの」
「『刺客』で検索したらこの姿が出た」
ググったのか。
「というわけで、王女の居場所を教えろ!」
侍が振り上げた刀が、俺のデスクの角にガツッと食い込んだ。
俺生身の人間なんですけど。
それでなくとも喧嘩とか無理なんですけど。
「器物損壊罪と傷害罪で警察呼びますよ」
「あ、もう呼びました」
経理の坂田さん、ナイスアシスト。
「お知り合いですか」
「いえ、初対面です」
「刀のサビにしてくれる!」
「魔法使いなんだよね?」
そのとき、コンコンとオフィスの扉がノックされた。
1階営業部の真島さんが、ひょこりと顔を覗かせた。
「どうも、お疲れ様です」
「お疲れ様です。なにかご用ですか?」
「不審者がいるって通報しましたか?」
「ああ、はい。しました」
俺は侍を指さした。
真島さんはすっと扉の向こうに消えて、すぐにまたガッチリした警察官と一緒に入ってきた。
「たまたま近くにいたお巡りさんが、警察犬と一緒に来てくださったんですが」
「いぬーーーーーーーーーーー!!」
侍が叫んだ。
でかいシェパードがぬうっと部屋の中に入ってきて、侍の臭いを嗅ぐ。
侍は青ざめて死んだ魚のような目になった。
「ひ……卑怯者め……! だが私はあきらめんぞ……また必ずここへ戻ってくる……それまで首を洗って待っていろ! 愚かな人間共よ……!!」
ヘイトをまき散らしながら逃げていった。
一部始終を見ていた部長が言った。
「しばらく警備に犬を配置しよう。坂田さん、心当たり探しといて」
「分かりました」
部長、ナイスアシスト。