2.そういえば拾った
猫耳の美少女……もとい美幼女メイドに見送られて、いつものように家を出た。
バスに揺られて考える。
いつ覚めるんだ、この夢。
「あ」
バス停で降りて、会社に向かおうとしたところで思い出した。
「そういえば、ここで拾ったな」
道路のすみに不法投棄された、電子レンジ。
昨日の夜までこの影にいたのは三毛の子猫だ。
雨に濡れて、一匹で、小さな声で鳴いていた。
動物を飼っちゃいけない賃貸住まい。
素通りしようと思った。
俺じゃなくても誰かが拾うだろう。
でももうすぐ終バスが出る。
こんな時間に本当に誰か通りかかるか?
そいつが猫好きじゃなかったら?
あんなに濡れて、明日の朝まであいつは生きてられるのか。
「……あー、くそ」
だめだ、見過ごせない。
きびすを返して三毛猫を抱え上げると、懐に入れた。
エサに牛乳を買って帰ろうかとコンビニに寄ったら、事情を知った店員が
「ちゃんと猫用がありますよ!」と、なんと猫用ミルクを出してくれた。
コンビニってなんでもあるんだな。
家に帰って、濡れた体を乾かしてやって、猫用ミルクとやらをやって、毛布にくるむと寝てしまった。かわいい。
だがどうしよう、というのが本音。
でもあそこで放って帰ってくるより良かったよな。
偽善だとしても。自己満足だとしても。
「なんで忘れてたかなぁ……」
目覚めの猫耳幼女がインパクト強すぎたな。
で、あの子猫。
今朝部屋にいなかった気がするんだが。
夢だからなのか、それとも……