14.この不可思議で愛おしい日々
「ご主人様、あ~んしてください」
「自分で食える」
差し出されたスプーンを取りあげると、俺は昼飯のチャーハンを自分の口の中に放り込んだ。
「食べさせてあげたかったのに……」
「あのな、大の男がすることじゃないだろ。普通に恥ずかしい」
結局、ミーシャは俺の家にいる。
そろそろ中学生を通り越して高校生に突入しようというビジュアルになってきた。順調に育っている。
かわいいのは変わらないが、近い将来が不安だ。
「恥ずかしくないですよ、うれしいんです。ほら、試しにご主人様もやってみてください、あ~ん」
目の前に開いた口を眺める。
エサやりか。
思わずスプーンを突っ込んでしまった。
「うふふふふ」
ミーシャは咀嚼しながら幸せそうに頬を染めた。
「やっぱりうれしいですよ」
小さく傾けた首で、赤い首輪がちりんと鳴る。
くそ……こいつ。
ちょっとたまらなく笑顔がかわいいからってつい撫でたくなるもふもふな耳を持ってるからってすごく有能なのにたまに何も分かっていない無防備さを見せたからって献身的な態度の裏に実は黒いものを持ってるところも魅力的だからって俺が懐柔されると思うなよ。
でも。
もうずっと、このままこの部屋の中だけで飼っていたいなんて。
思っちゃってもいいだろうか。
あ、今理性とか常識とか背徳感とか色んな大切なものを捨ててなにかが目覚めた気がする。
「じゃあ抱いてくれますか?」
「人の心をのぞくな」
「なんでダメなんですか?」
「せめて見た目年齢でハタチを超えてくれ」
ミーシャは一瞬黙ったあと、満面の笑顔になって言った。
「はいっ!!!!」
なにかを間違えた気がするけど、もうなるようになれ。
そんな不可思議で愛おしい、俺の平凡な日々――。
というわけで、完・結!
最後まで読んでくださってありがとう!!
なにかしら足跡残していってくださるとうれしいです ♫(ノ゜∇゜)ノ♩♬




