13.君を迎えに
「なにこれどういう状況?」
「ご主人様!」
ミーシャが突然消えて。部屋中を捜したけれど見つからなくて。
ポチがやたらワンワンいうところに手を伸ばしてみたら、光の中に吸い込まれたのだが。なんだここは。
目の前に転がる大量の兵士と、くたびれた白猫。あと、武将。
例の侍もいた。
ポチに顔をなめられて、硬直したまま死んでる。
いや、かろうじて息はありそう。
「ご主人様……私を助けに来てくださったんですね……!」
「そうなるのか?」
「おかげさまで命拾いしました。二度も命を救ってくださるなんて、ミーシャは感激です!」
「助けたのポチだけどな」
ポチが「わんっ!」と鳴いたところで侍の首がかくんと倒れた。
安らかに眠れ。
「ミーシャ、その方はどなたじゃな」
「お父様、実はかくかくしかじかで将来を誓った仲なんです」
「誓ってない」
なぜだかミーシャの思い込みとか危ない言動に拍車がかかってる気がする。
「ミーシャの婚約者どの……危機を救ってくださり感謝する!」
「親子揃って人の話聞かない」
このお父さんもすぐ泣く系とみた。
「娘をよろしく……!」
「話聞けって」
それにしてもミーシャは本当に王女なんだな。
だったら俺みたいな庶民がご主人様なんておかしいだろう。
危険に追われることがなくなったのなら、家族の元に帰ったほうがいいんじゃ。
そう提案してみたが、ミーシャは目に涙をためて首を振った。
かわいい。いや、あざとかわいい。
「私には老衰で床に伏したご主人様を看取るという使命があるんです……」
「平均寿命で考えて半世紀以上後になるだろうことに関しての覚悟今必要?」
「育ったら抱いてやるって言ったじゃないですか」
「言ってない」
「もう1ヶ月も経てば食べ頃ですよ?」
「君が口走ったことで俺が社会的に抹殺される可能性があるって分かってる?」
だって君は猫だし。
猫耳の美少女だけど、やっぱ猫だし。
育っても、俺にとってはかわいい猫だよ。
「猫でも×××に問題ありません」
「人の心の中勝手にのぞかないで。あと伏せ字使えばなに言っても許されると思わないで」
ミーシャのお父さん(武将)は、大きな声で笑うと俺の背中をバシバシ叩いた。
「問題ない! ミーシャを幸せにしてやってくれ!!」
「娘の将来、猫の子やる的なノリで決めていいんですか?」
「問題ない!」
こっちは大アリなんだが。
主に世間様の目が。
「そもそも、ミーシャは王女なんでしょ? 俺なんかのところにいたら国が困るんじゃないですか」
「問題ない! あと35匹ほどいるからな!!」
「ご主人様、私36番目の末っ子王女なんです」
「36番目」
まさかの大量生産だった。
「まだまだ現役じゃ!」
「いっそ隠居してください」
俺以外がお祭り騒ぎみたいになったカオスな空間を見回して、ため息を吐いた。
「ポチ、帰ろうか」
あと1話でおしまいです。
本日どっかのタイミングで更新します!




