12.ピンチでドン ♡ミーシャ視点
大臣の杖の先に、強大な魔力が集まる。
ミーシャってば、絶体絶命のピンチじゃない。
ああ、私ここで死ぬのかしら。
どうせ死んじゃうなら、ご主人様に抵抗されてもあんなことやこんなことやそんなことまでしておくんだった。
「死ねぇっ!!」
覚悟を決めたとき、足元の魔法陣がまばゆい光を放った。
「っ曲者ぉーーーーーーーーーーーー!!!!」
怒号とともに、魔法陣から鎧姿の兵士たちが飛び出した。
どんどん、どんどん溢れて、大臣と侍に突っ込んでいく。
鎧の胸当てに光る、猫缶マーク。
王国の兵士たちだ。
「ミーシャァーーーー! 無事かぁーーーーーーーー!!!!」
「お父様!」
最後に飛び出てきたのは、なぜか武将姿のお父様。
「お父様、どうしてここが」
「そこの阿呆な魔法使いが馬鹿のひとつ覚えで使う亜空間に先ほどどでかい通り道が出来てな! こら怪しいというわけでそこをくぐってワシ自らやってきたのじゃ!!」
「なぜ武将姿に」
「イメチェンじゃ! 今人間界では武士が流行りじゃと聞いてな!」
「流行ってません」
「国王陛下!」
大臣を拘束した兵士がお父様を呼んだ。
「こいつらはどうしましょう。捕縛したまま連れ帰りますか、それともこの場で……」
「ううむ。どうしたらよいかな、ミーシャ」
「殺してしまうのはさすがにかわいそうですわ」
縛り上げられたふたりを見下ろして、私は天使の微笑みを浮かべた。
「自ら死を選択したいと思うような考え得る限りの残虐な方法で拷問しながら永遠の苦しみを味わわせましょう」
「決定」
「待ってあなた本当に王女様?」
「そこのあなた、ギロチン用意してくださる」
「それ即死なヤツね」
そのとき、プルプルと震えていた侍が我に返った。
「我思う故に、我あり……!」
「唐突に悟ったわね」
「このまま死んでたまるか! くらえーーーー!!!!」
侍を中心に嵐が吹き荒れた。
兵士たちはなぎ倒され、私もお父様もその場にひざをついた。
「くっ……」
「はーはっはっはっはっはっ!! 残念だったな国王! 王家の人間は皆殺しだ! この大臣もろとも亡きものにし、私が新たな国王となってすべてのちゅ~るを独占してやる……!!」
「この謀反の発端となったちゅ~るを……?!」
「なんと恐ろしい……!」
「やめろ! あれは国民にとってなによりも大切なちゅ~るなんだぞ!!」
兵士たちの叫びもむなしく、侍は杖、もとい刀を構えた。
最大の攻撃が、くる。
誰もが身構えたそのとき。
「ワン」
「いぬーーーーーーーーーーー!!」
山田さんちのポチが、魔法陣からのっそりと姿を現した。




