お帰り
姉上と義兄上が帰ってきた。今日、午後からアイマリクト伯爵家に訪ねてくる。
僕は今日の仕事は午前中のみとして屋敷に帰ってきた。
この頃は王宮にも慣れて来て、廊下を歩いているといろいろな人に話しかけられる。
今日は特によく話しかけられた。義兄上が帰ってきたことを聞いた人達が義兄上の事を話題にするからだ。
皆さんも義兄上がいなくて寂しかったんだろうか。
廊下では…
「ユリウス様が戻られたそうだ」
「書類に不備が無いか確認を」
「遅れている物はないか」
「「「「すぐに確認しろぉぉぉ」」」」
文官達が大騒ぎだった。
応接室のソファにに義兄上、姉上
「お帰りなさい」
「ただいま。良い子にしていたか」
「義兄上、僕はもう14歳です。小さな子供ではありません」
「そうだな。すまないな。ハハハ」
義兄上は笑って僕の頭を撫でる。『だから14歳なんだって』
「クロード」
「はい、姉上」
「王宮の仕事を頑張っているのは聞いたわ。えらいわ」
「姉上、ありがとうございます」
その後、スロイサーナ領の事や湯治場の事などを話した。お爺様、お婆様、叔父様は湯治場に興味深々だ。是非行って欲しい。
夕方、義兄上と姉上は公爵家に戻られた。
次の日義兄上と王宮に行くが、なんだか雰囲気が違うように思う。静謐、機敏、なんて言うか皆んながとてもやる気に満ちているみたい。
「おはよう、クロード。あわっ」
いつも書類を持ってくる文官のタルカさんが挨拶をしてくれたんだけれど義兄上を見て固まってしまった。
タルカさんはいつも挨拶の時に僕の頭を撫でるから手が 僕の頭の上にあったけれど、もちろん急いで下ろしていたよ。
「おはようタルカ」
義兄上がタルカさんに微笑んで挨拶をする。
初めて王宮にきて義兄上の態度に驚いた。氷の貴公子なんて二つ名は義兄上に似合わないと思っていたけれど、義兄上は家族以外には表情を変えない。殿下やコントラン様相手でもそうだったので本当に驚いた。
一度義兄上に聞いたら
「必要ないからね」
と微笑んだ。そう、僕には普通に笑いかけてくれる。
今のタルカさんに対する微笑みは怒っている微笑みだ。タルカさんは
「おはようございます。ユリウス様」
と挨拶してすぐに踵を返して行ってしまった。
『義兄上は怖くなんてないのに』
いつも義兄上に対する皆さんの態度を見ると思ってしまう。
義兄上は執務室に入ると挨拶もそこそこに仕事を始めた。
殿下やコントラン様、文官さん相手に指示を出し確認しているのを見ると休んでいたとは思えないほど仕事が進む。
『義兄上はやっぱり凄い』
もう定番となった昼休憩。今日の食事の野菜とスモークチキンサンドを食べていると
「クロード、後10日で学園だ。いつまで手伝える?」
義兄上に聞かれた。
「後2日でしょうか。義兄上も戻られましたし、準備もあります」
「そうか。何か心配はあるかな」
「そうですね。知り合いが誰もいないので少し不安はあります。でも、なんとかなるんじゃあないかなあと思っています」
僕は王都に来て早々に義兄上の手伝いをしていたので王宮での知り合いしかいない。皆さん学園は随分前に卒業された方々だ。
「私の妹も今年入学ですよ」
コントラン様が言うと
「「あぁ」」
殿下と義兄上の声が重なる。
コントラン様には二人妹がおり一人はエリシア姉上と同じ歳でもう一人は僕と同じ歳らしい。
「僕の様な男爵家の者が侯爵家の御令嬢とはあまり話す機会が無いと思います」
「あ、ごめんクロード。妹はシャーリンと言うんだが、シャーリンにクロードの話をしているから話しかけるかもしれない」
「お前、シャーリンにクロードの話をしたのか」
殿下がコントラン様を睨んでいる。
高位貴族の令嬢だから知り合いなのだろうか。
「シャーリン嬢はな、殿下が好きなんだよ。だから殿下の近くにいるクロードが気になるんだろう。コントラン、シャーリン嬢がクロードに危害を加えるような事は無いよな」
「わかっている。シャーリンにはよく言い聞かせる。すまない。クロード」
「いいえ。お会いしてみないとわからないですから」
令嬢なのに何かするの?
「シャーリンにクロードを虐めるなと手紙でも書くか」
殿下、さらっと怖いです。虐めって。
「そんなクロードを庇うような事をすると余計ダメだろう」
コントラン様も御自分の妹なのに虐めに同意してる。
「僕、学園が始まるからもう王宮には行かないって言います」
「「「それは、ダメだ」」」
僕が凄く良い提案をしたのに、殿下、コントラン様、義兄上に反対される。
「とにかく妹には良く言い聞かせるから」
食事時間も終わり仕事にもどる。
学園に行くのが少し憂鬱になってしまった。




