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94:恩赦

 それからの話。


 結果から言うと、ガストの賭けは成功した。

 ギャンブル並みの賭けで勝利をした。

 イリヤのスキルなのか、アマネの手際なのか、ガストの運命操作で掴んだ勝利なのか、はたまたそれらが全て折り重なった結果なのかは神さえも分からないだろう。


 パミュラが落ち着いた後に、あれだけ派手に暴れたおかげでギルド商会に見つかって包囲されたので、俺が投降する代わりに他の全員を見逃すように伝えるも、どのギルド商会員も耳をかさなかった。


 一触即発の雰囲気の中エノンとワワが遅れてやってきて、同じように伝えると条件を飲んでくれた。

 それでこの場が収まるのかと思ったけど、思ったよりもエノンの発言力は大きいようだった。


 そして俺は一人離れた寂しい懲罰独房に投獄されて、エノンに聴取されたりして、あれから五日後の現在、ギルド商会メラディシアン支部の支部長室へと呼び出されていた。


 支部長室に来るまでの間に稀有な目で見られたりしたが、それどころじゃない様子の人間が多く見受けられた。


 支部長室は私物が殆どなく、壁には時計と表彰状や権利許可証やらが飾られている。

 本棚の中には歴史書や書類ファイルが束ねられているだけで、背表紙を見る限り私物の本などは無い。


 支部長が使っているだろう机には山積みになった書類とハンコと吸い殻のせいで黒に染まりかけている灰皿。

 窓につけられているカーテンや高級そうな絨毯にまで煙草の臭いが染みついている部屋だ。


 一つだけ。

 一つだけ私物と思われる写真たてがあったので、エノンの目を盗んで、手錠をされた手で持って覗き込むと、沢山の笑顔の子供達と共に写っている幸せそうな笑顔のシスターが写った写真であった。


「待たせたね。リヴェン・ゾディアック。

 私がメラディシアン支部の支部長キュプレイナ・ワイナイナだ。

 誰かが倉庫街を破壊したおかげで忙しくてね」


「悪い奴もいたもんだね。これは君?」


 嫌な顔をされるかと思ったけど、特に何知らぬ動作で椅子に座る。


「いたもんさね。吸っても大丈夫か?」


「お構いなく」


 犯罪者なのに気遣いをされてしまう。

 犯罪者も何も関係ないってことだろうな。


「それは私の師匠に当たる人だよ」


「へぇ、じゃあこの可愛らしいのが君だ」


「今は可愛くないって?」


「今は綺麗だよ。ね、エノンちゃん」


「そうですね」


「うわ、素っ気ないな。聴衆の時はあれだけ強引だったのに」


「仕事ですからね」


「まぁまぁ雑談も程々にして本題へと行こうじゃないか。

 リヴェン・ゾディアック、貴殿の扱いについてだ。

 我々メラディシアン支部は、貴殿を犯罪者とは認めない。

 貴殿は我々の仲間、ワワ・ゲイザー、ジュリ・カンロヅキ、タカラダハジメを助けた。

 今回のバルディリス連邦が持ち込んだ一件に関しても、貴殿は被害を押さえる為に尽力したと裏が取れた。

 よって我々は貴殿を咎めない。今日までの五日間の無礼を許してくれ」


 キュプレイナが指をさすと俺に着けられていた手枷が消えた。

 この手枷実はいつでも外せたけど外したら面倒な事になるので外さないでおいた。

 普通の手枷ではなくスキルでできたもので、大方キュプレイナのものだ。


「我々は・・・ね。

 でも君達が味方してくれて有難いよ。

 拠り所であった場所が中央遺物協会と関りがあったからね。

 バルディリス連邦と構えてしまった今、そこへは帰れないだろうからね」


「そこに関しても我々の庇護下に入ってもらうが、よろしいか?」


「よろしいよろしい。

 でもメラディシアン王都で結構やらかして俺は指名手配されているんだけど、そこのところは大丈夫なの?」


 と、言うと場の空気が停滞する。何か悪いことを聞いてしまったみたいだ。


 キュプレイナは煙草の煙を吐いて言った。


「貴殿の指名手配は取り消された。

 ・・・貴殿は檻の中だったから情報が回って来ていないが、貴殿を捕まえた日にドレイズ王は逝去なされた。

 それに伴い王位継承が始まったのだ」


 あぁ。そう。そう言うことね。


「イリヤのおかげ?」


「そう。

 第十七王女であるイリヤ・グラベル・メラディシアンによる恩赦で貴殿の指名手配は取り消しになった。

 我々ギルド商会メラディシアン支部は第八王女であるイリヤ様の王位継承に助力することになった。

 貴殿は、どうされるか?」


 イリヤは王族だと聞いていた、どこのどの王族かは聞かされていなかったが、まさかメラディシアンの王族だったとはな。


 そのイリヤが恩赦を発令させているという事は、既にエルゴンにはいないのだろう。


 また時代に置いて行かれた気がするな。


「俺はイリヤの友達だし、イリヤが望むなら俺達はイリヤの力になるさ」


「・・・そうか、ではこれからは良き仲間として付き合っていこう」


 俺は差し出された手を、笑顔を作って握る。


 こうして俺は正式に王国に認められた存在となった。

 第二の課題が終わったが、もっと厄介な課題が増えたのであった。


感想、評価等々お待ちしております。生きる糧になります。

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