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87:リヴェン包囲網Ⅶ

 イリヤを連れてストレガへと戻ってくると、ウィンの曲がかかっていて雰囲気のある店になっていた。

 店内にはガストと騒ぎを聞きつけてウォンが戻って来ていた。


「ブラザー、その後ろの子は誰や?」


 サモエドの姿でも俺だと知っているウォンがイリヤとは違う人間の事を指して言っている。


 振り向くとそこには俺とイリヤが開け放った扉が閉まらない様に持ち手を持っている織田信千代がいた。


「ど、どうして信千代さんが!」


「謝礼をしようとしたのですがモンド殿は何か切迫した様子でありましたので、モンド殿の主であるリヴェン殿に付いて行けば、また出会えるかと思いまして、あ・・・付いてきては駄目でございましたか?」


 ガストがまた厄介事を持ち込んでくれたなと仮面の奥で語っている気がするけど気のせいである。顔が見えないしね。


 織田信千代は気配を遮断するスキルを持っているに違いない。じゃなければ影が薄いだけ。

 それで片付けられるレベルで気が付かないのだけれども。


「駄目って訳じゃ・・・ないですけど」


 俺から降りたイリヤが助けを求める目で見てくる。


「それにしてもリヴェン殿は変化が出来るのですね!

 我が兄上様も変化ができるのですが、リヴェン殿みたいに愛くるしい見た目ではないのでありますよ。もっとこう、ごわごわしているでありますね」


「変化・・・?

 え?信千代さんのお兄さんはリヴェンさんみたいにワンちゃんになれるんです?」


「でありますよ。

 あれ?こちらの国では普通ではありませんでしたか?」


 サモエドへ変身しているところまでバッチリ見られているならば隠す必要もないか。

 何かこちらに都合の良い勘違いをしてくれていることだし元の姿に戻るか。


「普通ではないね。

 この国ではどこを見渡しても人から動物になるのはいないよ」


「そうでありましたか!

 ではリヴェン殿が特別な力をお持ちという事でありますね!」


「そうそう俺が特別なだけ。

 君も知っているだろうけど俺達はアマネを助けに行かないといけないんだ。

 俺達の事情に君を巻き込めないんだよ」


 邪魔だからどこかへ行ってくれと優しさを混ぜ込んで言うと、信千代は笑顔を作って。


「大丈夫でありますよ!

 アマネ殿には新たな食の文化を学ばせてもらった恩義がありまする!

 更にはモンド殿にも一宿一飯以上の恩義がありまする。

 受けた義を蔑ろにする教育は受けておりませんでありますよ!

 この織田信千代、助太刀いたしまする!」


「助太刀って言われてもねぇ。

 君は一国の領主なんでしょう?

 その君が他の国の出来事に干渉してもいいの?

 相手はバルディリス連邦で、ここはメラディシアン王国だよ?」


「そこも含めて大丈夫でありますよ。

 戦争になればそれはそれで兄上様達が躍起になるだけでありますから、それに我が日出国に戦争をしかけるなんて国はありませんよ。

 せいぜい賠償金くらいであります。その場合は私のポケットマネーでなんとかできるでありますよ――なので再三言いますが、大丈夫でありますよ」


 美少年の顔で暴君理論をかましてくる信千代に一同が引き気味になる。

 こうまで言われると断れる理由もなくなってくる。

 邪魔をせずに手伝ってくれると言うならば、人手の少ない俺達には有難いことだが、後から集られるのだけは避けたいところ。


「分かった。じゃあ信千代、君にも手伝ってもらうよ。

 改めて自己紹介をしよう。俺はギルドゾディアックエイジのを統括するリヴェン。

 こっちの可愛さ無限大の少女がイリヤ。

 そこの長身で辮髪の彼がウォン。

 仮面をつけているのはほぼ無関係なこの店の店主のガスト。

 奥にもお嬢様のミストルティアナと世間知らずのネロがいるけど顔合わせはまた今度かな」


「織田信千代でありまする!ギルド・・・ギルドでありますか・・・」


「何か問題があった?」


「いえいえ、私事でありまするよ。さぁどうやって助けに行きまするか?」


 と、信千代が言った時にイリヤが持っていた惑星儀型の魔遺物が振動する。

 イリヤは慌てて右にずらして通話を開始する。

 惑星儀の天頂部から青光りした光が出てモンドが映し出される。近未来的!


「アマネさんを見つけましたよ。

 南の倉庫街の八番倉庫です。

 ここにやってくるまでにギルド商会の人達が緊急配備されていましたから気を付けてください。

 少し中を確認しましたが、金髪の女性の頭が培養液の中に浸かっていました。

 その横にあった甲冑をワイジャック・ヨグ・クリハンと名乗った男とアマネさんが触っていました。恐らく魔遺物だと思われます」


「その頭、映像として見せられますか?」


 後ろから興味無さそうに観察していたガストが最初に質問した。


「えぇっと、新しいお仲間でよろしいんです?」


「よろしいんです」


「分かりました画像として撮ってあるのでどうぞ」


 モンドの顔が映し出している映像の右上に絶世の美貌を持った女性の頭が浸かっている画像が現れる。

 ガストは震えた指で映像にタッチして画像を広げる。

 えぇタッチもできるの?三百年でここまで現代世界に追いつてくるか・・・。


「・・・私も行きましょう」


「は?ガストは関係ないやん?

 今まで隠れていたんやから別に無理して関わらんでも」


「ウォン、ガストは行かなければいけない理由があるんだよ。

 ミストルティアナとネロは一緒に連れて行けないから、ガストの手助けも有難いことだよ。

 言わなくてもいいことだけど、関わるならどうなるかは分かっている訳だよね?」


 ギャンブル勝負でさえも見せなかった声色にガストの本気度が伝わった。

 それにあれがデュラハンであり、魔遺物化していないならばそれを解放するのが俺達の使命そのものだからだ。


「えぇ安寧を捨ててでも私は行かねばなりませんね。

 どちらにせ皆様は八番倉庫までの道程は分かっているのですか?」


 ウォンも旅人で、同様に信千代も他国の人間。

 この中でエルゴンの地形を把握しているのはガストである。


「君の言う通りだ。

 八番倉庫だね。

 モンドは俺達が到着するまで待つこと。

 もし自分の身に危険が迫ったら行動を起こしても構わないよ」


「そうならないように祈りながらお待ちしております、それでは」


 通信が切れて青い光が惑星儀の中へと消えていく。


「では皆様方にこれらの仮面を渡しておきましょう」


 ガストが仮面を配る。

 イリヤにはヴェネツィアマスク、ウォンには馬のマスク、信千代にはへのへのもへじが書かれた仮面。

 何だろうか、選択に悪意があるな。

 でもひょっとこ仮面と合いそうなのを選んできたのかな?


「八番倉庫までの最短ルートで行きますが、着いて来られますかね?」


「そこは心配ご無用さんやで、既にこの店内で兄ちゃんのスローテンポの曲をかけておいてあるし、わてのスキルを付与しとるからな」


「そういえばウィンさんはどこへ?」


「兄ちゃんは方向音痴やから逸れてもうたんや。

 せやから一回ここへ戻ってきたバンキッシュの姐さん探してもろてる。

 書置きしておいたから、遅れてくるんちゃうかな?」


 少しちゃらんぽらんなウィンを制御しているのは弟のウォンだ。

 バンキッシュ程ではないが仕事ができ、気遣いもできるのだ。

 他人に対しては兄より優れた弟である。


「そっか、じゃあ安心だね。

 ちょっとネロと接続してくるよ。そうしたら直ぐにでも行こう」


 奥へと行ってまだ寝ているミストルティアナの額を撫でながらスキルを更新した後に八番倉庫へと向かうのであった。

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