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79:リヴェン包囲網

 ガストから謝罪の言葉を貰って全員の顔の寸法を終え、制作作業に取り掛かかったので、全員に自由行動を与えるとエルゴンの街を楽しむためにイリヤはバンキッシュを連れて、ウィンとウォンは機材を調整するための道具を買いに出て行った。


 俺は無理して立ち上がる事さえできないミストルティアナの介抱をしているネロと共に作業場とは違うガストが普段使っている私室にいた。


「うぅ勝つと豪語し、スキルを無理して使った挙句ネロちゃまに介抱されるなんて惨めですわ」


 簡易ベッドの上で目に蒸しタオルを当てられながら口をへの字にして悔しがるミストルティアナ。


「次は相手の動向を見てから仕掛けましょう」


「はひ」


 責められていると思ってしまい声を震わせながら返事をするミストルティアナを見かねて頭を撫でながら慰めの言葉をかけておく。


「ミストルティアナはよく働いてくれたよ。

 あの頑張りが無かったらイリヤまで繋げられなかったからね」


「・・・きゅう」


 慰めても返事はそんな喉を絞めた音であった。

 タオルを取ってみると目を回して気絶していたので、そっとタオルを戻して寝かしておいてあげよう。


「ではご主人、私も休眠状態になります」


「ご苦労様。また何かあったら起こすね」


「・・・」


 そうは言うもののネロは休眠状態に入らずに俺の事をじっと見つめる。

 何か聞きたそうなので、俺が問う。


「どうしたの?」


「ご主人は人と話す時と、心の中で私と話す時とは口調が違うのは何故ですか?」


 なんだその質問・・・。

 ネロの主人としては答えておかないといけないのか?はぐらかしたい気持ちが大きいが、真摯に答えておこう。


「かく言う俺は転生前はこんな人の顔色を窺うような喋り方じゃなかったんだよ。

 ネロと話していた時のような話し方でね。

 こちらの世界に来てから、環境のせいか話し方がこんなのになっちゃったんだよね」


「ご主人の心の中は丸裸と言えますね・・・では失礼いたします」


「はい、おやすみ」


 ネロはミストルティアナの横で休眠状態に入った。


 ネロの発言は正鵠を射ている。

 こうやって再起動する前はスキルで精神妨害の魔術やスキルを防いでいたが、今は己の胆力だけで防ぐしか手立てがない。

 そういった魔遺物があるのなら購入するべきだろう。


「立ち聞きは趣味が悪いよ」


 二人が寝た事で私室の扉の横に隠れていたガストに声をかけると姿を現した。


「聞く気は一切ございませんでしたよ」


「分かりやすい嘘をどうも。もう作れたの?」


「いえ、全員分の完成となると一週間は時間を頂きますね。

 とりあえずリヴェン様のは構想が整ったので急いで作りますが」


「へぇその為にギャンブル勝負した訳だ」


「そうですね。

 半分は趣味ですが、もう半分は相手の趣味意向を知る為でもありますね。

 仮面とは姿を偽る為の代物であり、被る人物の内面を表現した物なのです。

 なので私はお客様の内面を知る必要があるのですよ」


 道理には適っているが、趣味が半分と言のは嘘だろう。八割程が趣味であろう。

 仕事の為に半分も力を出すような人物とは思えない。


「・・・私はガイストでありますから、誰かの生まれ変わりなのですよ。

 普通は前世の記憶は一切合切忘れるのでしょうが、私は靄が掛かっていますが、思い出すことができるのです」


「え・・・何、いきなり」


「私は平等が好きなだけです」


「うわ、今日一番の嘘だ」


 どうやら立ち聞きしたのを快く思っていなかったようで、身の上話をしてくれたようだった。

 俺の事を嫌っている割には、そういうところは律義なのか。


 カランカランと私室の中にあった仮面が音を立てた。

 店の中に人の気配があるので誰かが入ってきたのだろう。


「今日は珍しい日ですね」


 そう言ってガストは店内へと戻っていく、俺もこっそりと後ろをついて行き、こんな古びた奇妙な店に、どんな客が来るのか気になったので顔を覗かせる。


「おやタカラダ様ではありませんか。今日はどういった御用事で?」


 そこにいたのは中年太りをしたギルド商会メラディシアン支部に属している魔窟調査員の宝田肇であった。

 その後ろには見た事もない人物が一人。

 頭にニット帽をかぶって、ネックウォーマーを鼻先まで伸ばしてスクエア眼鏡をかけ、肌着のような袖の長い黒い服と黒タイツの男だ。


「きょ、今日は・・・あ・・・れ?」


 後ろの男からは見えない位置でハジメと目が合ったので軽く手を振ってやる。

 しかし何故かハジメの顔は蒼白になっていき冷や汗か脂汗か分からない液体を分泌させ始めて、後ろにいる男を気にしだした。


 その挙動を見てガストも俺もハジメが厄介事を持ってきたのを理解した。

 ガストに関しては後ろにいる俺が関係しているとも把握しただろう。


「どうしたんだ!めっちゃ汗かいてるぞ!

 もしかしてあそこの仮面の男がリヴェン・ゾディアックなのか!そうなのか!」


 ハジメは汗を飛ばしながら大きく首を振る。

 どうやら後ろの男は俺を求めていらしい。

 この感じだと俺はギルド商会からも指名手配されていると見よう。でもハジメはそれに抗っているな。第二勢力か?


「私の名前はガスト。この仮面屋の主をしております。貴方はハジメさんの同僚ですか?」


 うまいことガストが情報を聞き出す質問をしてくれる。


「おれぇ?俺はベップ・ドール。

 同僚とは違うけど、まぁ同業だな!ほらギルドカードだ」


 ベップがガストに見せているギルドカードを見ると、バルディリス連邦支部所属と書かれていた。


 バルディリス連邦となると中央遺物協会か。

 ドズが本部へ連絡しているはずだから、ようやく動き出したってことか。それもギルドを使って。


「私をそのリヴェンなんちゃらさんと勘違いなさられぬよう、後ろの営業証明書をご覧ください」

 

 俺の頭上に掛けれれている王国とギルドからの営業許可証明書をデップは読んで、ガスト・ストレイガだと認識した。

 ガスト・ストレイガが人類の中で暮らす時の名前のようだ。


「じゃあどうしたのハジメちゃん!病気!?病気なの!?」


「は、はい。気分が優れないので」


「じゃあ奥で休ませてもらおう!ね!いいですよね!」


「奥は作業場となっていますので、療養所へ行かれた方がよろしいかと。タカラダ様歩けますよね?」


 ハジメは何度も頷いてからヨタヨタと身体ふらつかせながら店を後にする。

 ベップもハジメに肩を貸して療養所へと向かって行った。


「リヴェン様、貴方は疫病神ですか?」


 二人が出て言ってから、心底鬱陶しいそうにガストは言う。

 

「この世界には疫病神なんていないよ」


「・・・はぁ、どうするんですか?仮の仮面で外へ出ますか?」


「そうだね。イリヤ達に知らせないとね。ガストは通信系の魔遺物持ってないの?」


「あれは軍務であり、それなりの上級の階級でないと持てない代物ですよ。

 バンキッシュ様に訊いてないのですか?」


「君ならくすねていないかなって思ってね」


「貴方の私の捉え方を理解しました。これをどうぞ」


 ガストから仮のひょっとこの仮面を渡されて、それをしぶしぶ受け取る。

 今の問答の仕返しだろう。顔が隠せるのであったら問題ない。


「じゃあ二人の事は任せたから」


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