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60:ゾディアックエイジ

「ギルドを創ろうと思う」


 ティータイムを終えつつある中、俺は宣言した。


「いいですわね!リヴェン様と私のギルド!夫婦円満ギルドですわね!」


「魔族を導く。

 と言っても現状は俺が直接会った君達しか導けていない。

 一々探して会っていたら、いくら寿命が長くても途方もない時間が掛かる。

 なので道標としてギルドを作って、隠れている魔族達に俺が復活したよってアピールしようかと思うんだけど、どうかな?」


 無、無視?とミストルティアナが涙目になっているのを更に無視しつつ、全員に意見を聞くと。


「困っている人を助けるのは賛成です!」


「わいもさんせーい」


「わてもー」


「わ、私もですわよ!リヴェン様のご意見に反対意見等ありませんわ!」


「私は付き従うだけです。

 ですが、ギルドを作るには国の認可とギルドの認可が必要ですよ。

 少々お金も必要ですが、リヴェンさんをギルドマスターとして作るのは難しいかと」


 誰かを代わりにギルドマスターにしてギルドを作るにも、この中の誰もこの国に定住し、本名を出しても大丈夫な人間がいない。

 そもそも俺の名が広まらないといけないので代わりは意味がない。


「まぁ正規に作ろうとすれば、難しいだろうね」


「非正規ギルドですか・・・目的が目的ですし、そうなりますよね」


 暗殺ギルドのように認可されていない非正規ギルドならば、名声だけで成り立つことが出来る。

 その名声を集めるのが一番大事なのだけども。


「ギルド名決めよ、ギルド名!」


「せやね、名前は大事やね」


「仲良し団にしましょう!」


「イリヤちゃん、流石に擁護してあげられへんわ」


 壊滅的なイリヤのネーミングセンスにはツッコミを入れるのはよしておこう。


「残念ながらギルド名は既に決まっているんだよ」


「さ、先に言ってくださいよ!・・・仲良し団が良かったですけど」


「私はイリヤさんのネーミングセンス好きですよ」


 バンキッシュがイリヤの頭を撫でて慰めていた。


「ギルド名はゾディアックエイジ」


 リーチファルトを偲んで、そしてこれからあいつのおかげで生きてこられた魔族達の為に働くとの願いを込めて。

 そんな意味合いの名前。


「魔王の時代。ええやん!ええやん!かっこええ!」


「ブラザーの威厳溢れてるわ!」


 しかしウィンとウォンには違う意味合いで取られてしまった。

 俺もゾディアック姓を名乗っているから、そう取られる可能性もあるのか。

 まぁどちらに取られても、魔王が復活したと伝わればいいか。


「では私が一筆窘めますわ」


 珍しく静かにしていたと思ったら、ミストルティアナはどこからか紙と筆と墨を取り出して、ジャージの袖を捲って、魔族の文字でゾディアックエイジと書き始めた。

 これがまた達筆であり、全員が見守っていた。


 ギルドを創るに当たってギルド名と、そのギルドの設立時の加入者の名前記入は必須事項である。 非正規ギルドだから別に要らないっちゃいらないけど、非正規だからこそ、形はちゃんとしておこう。とのミストルティアナの生真面目さであろう。


「出来ましたわ。

 後はここに皆さんの名前を書いて完成ですわね。

 はいリヴェン様」


 ミストルティアナに筆を渡されて、ミストルティアナ程ではないが、平均的な字で自分の名前を書く。


「イリヤは書ける?」


「こう見えても、魔族さんの文字は勉強しているんです」


 と言って俺から筆を受け取って、スラスラと三文字記入する。

 次にバンキッシュに渡して、どうしてかバンキッシュも書き連ねた。


「魔族になってから、文字が読めたり、書けたりするんですよね。

 記憶にはないんですけども」


 書き終えてからそう捕捉してから、ウィンへと渡す。


 ウィンはサインのような崩した筆記体で書いて、ウォンへと渡した。

 ウォンもまた兄と同じ崩した字で書いた。


「これで私が書いて・・・と」


「ちょっと貸してね」


 ミストルティアナが書き終わった筆を取り上げるように借りて、モンドの名前も記入する。


 モンドの身に何事もなければ、あの洞窟にまで帰ってくるのに一週間程、このツィグバーツカ家に俺達がいることを伝えておかないとな。


「これを玄関に掲げて来ますわね!」


 またどこから用意したのか金の額縁の中に紙を入れて、張り切ってにょろにょろと玄関まで行ってしまった。


「リヴェンさん、創ったのはいいんですけど、どうやってギルドの名を世に知らしめるんです?

 悪い事をする気ですか?」


「それもありかもね」


「駄目ですよ!悪いことするなら私は手伝いませんからね」


「冗談だよ。最初は気楽に人助けとかするつもり」


 その方がイリヤの心象がいいだろう。

 既に悪目立ちしているのだ、暗殺ギルドを壊滅に追い込んだり、中央遺物協会に破壊工作をしても構わない。

 まだ実際に魔族が魔遺物にされる瞬間を見ていないから、どうも現実感がない。

 ヨーグジャを見学しようにも、俺の監視員不足で入れてくれないし。

 どこか見学させてくれと頃を探さないとな。


「でもでも皆さん、大々的に活動できるんです?」


 イリヤの意見は最もであった。

 俺はお尋ね者で、バンキッシュは死人で、モンドもまたお尋ね者で、ヴィーゼル兄弟は有名人、ミストルティアナに至っては魔族であり、誤魔化しが聞きにくい。

 イリヤは護られる対象。


「モンドやバンキッシュのように変装できればいいけど、素材もないし作れないよね?」


「えぇ、あの仮面は貰い物でして」


「わいらの皮も人殺して奪った訳ちゃうしな」


 ヴィーゼル兄弟の皮は、ヴィーゼル兄弟の住まう里が自殺の名所であり、そこで自殺した人間達の皮で作っているらしい。

 それもそれで生々しい話ではある。


「でしたら買いに行けばよろしくては?」


 玄関に掲げ終わったのか汗もかかずに帰ってきたミストルティアナが言う。


「買いに行くってミスティ、外出たことあんの?」


「馬鹿にしないでくださいまし、今でも贔屓にしていた店からは手紙が届きましてよ。

 証拠として、これを提出しますわ」


 そう言って出したのは一枚の葉書であった。

 葉書には店舗名ストレガと書かれており、読むとエルゴンに店舗を置く仮面屋であった。


「このお店は魔族がやっているの?」


「えぇ、リーチファルト様の時代から、人間達の中で身を潜めて生きている魔族は少なくないですよ。

 ここの店主は崩御直前に生まれたらしいので、リヴェン様はご存じないかもしれません。

 ガスト=ガイスト=ストレイガと言うのですが、ご存じでしょうか?」


 ガイストって事は幽霊レイスか、何度かであったことはあるけど、知り合いにはいないな。


「いや、知らない。

 とにかく彼に会えば、変装道具が買えると思えばいんだね?」


「そうですわね。

 私も宅配でしか頼んだことがないので、お店自体には行ったことがありませんが、十分な腕は保証できますわ」


 宅配とか葉書とかのコミュニティが残っているなら、それを利用してもいいけど、仮面を創るんだったら、ちゃんと測定して貰った方がいいだろう。


「ありがとう、ミストルティアナ。

 じゃあ目的も決まった事だし、二日後に出発しようか」


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