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55:暗殺ギルド

 肉人を倒した俺達はユララの追撃の警戒とサマティッシの療養の為に砦へと戻った。


 空いている客室にサマティッシを寝かし治療してから、会議室へと向かう。

 サマティッシの側にはマルコが付いてくれている。 


「いやぁ、大変だったね。

 まだユララが何かしてくるなら気を抜けないけど、一般兵士くらいなら俺だけでも何とか出来るしね」


 ハクザも真面に戦える状態じゃないから再び挑んでくることはないとは思うけど用心はしておこう。


 会議室にはヴィーゼル兄弟を含めワワとドズ以外が机に突っ伏していたり、椅子の背もたれに背を大きく預けていた。

 魔窟探索からの戦闘戦闘の連続だったので、気が抜けてしまったのであろう。


「ラインハルトは退いたようだぞ。

 危機は一応去ったと言っていいだろう。

 残る問題はバビンスキーとエリンコの事だ」


「はぁ~?

 だからそれはあの暗殺者がやったって言ってんじゃん。

 耳ついてんの?こっちだってクルル殺されてんのよ」


 椅子に身体を預けていたジュリが目を三角にさせながら言う。


 この話はヴァルファーレが殺したと言わない限り責任追及され続けるだろう。


 俺は自分で勝手に作った紅茶を飲み干してから椅子から立ち上がって会議室から出て行こうとする。


「どこへ行く?」


「トイレ」


 排泄機能は一切無いので嘘なのだけど。


 外へと出ると、全員の帰宅に気付いたのか酷く落ち込んだハジメとイリヤが会議室の前まで来ていた。


「終わったんですよね?」


「終わりも終わりだよ。

 イリヤ、ヴィッシュの言う事をちゃんと聞いてね」


「どこか行くんです?」


「トイレだよ。トイレ」


「・・・そ、ですか」


 イリヤには見透かされているが、トイレと偽りつつ、二人に見送られて客室の方へと向かう。


「首尾はどう?」


 壁や天井に気配がないのでネロの手入れをしていたバンキッシュに問う。


「見つけましたよ。これでよろしいですか?」


 バンキッシュが取り出すは契約書の現物。

 ドズがこの砦から出た際に見つけ出して貰っていた。


「うんうん。

 それは持っておいて、交渉材料になるから。

 そういえばヴェルファーレは?」


「申し訳ございません。

 ハジメさんを見張りにおいておいた時に逃げられました。

 私の不注意です・・・」


 ハジメが落ち込んでいたのはそういう事か。


「逃げた者は仕方ないよし、追わなくていいよ。

 暗殺に失敗した暗殺者なんて恐れるに足らずだよ。

 あれならバンキッシュでも勝てるしね」


「私を買いかぶりすぎです。

 先程からの言い回しですと、どこかへ行かれるんですか?」


 二人共察しが良いな。


「魔窟へね」


 _________________________________________________________



「ぷふー、感動のフィナーレは見れたけど消化不良だよね~。

 カイ君▽さえ来なけりゃなぁ。

 彼もまた頭おかしい人間だからなぁ。

 君はそのへんはどう思う?」


 カイとの戦闘を痛み分けで終わらせて、設営されたテントの中で裂傷ができた二の腕をチクチクと針で縫いながら、隣で不服そうにしているヴェルファーレに質問する。


「知らないね。

 オレは仕事果たした、報酬だけもらうね」


「連れないなぁ。

 いいよいいよ。はい、報酬」


 金貨が何枚も入った袋を投げ捨てるとヴェルファーレは袋を掴んで中身を確認する。


「なにこれ、少ないね」


「依頼内容はリヴェン・ゾディアックの殺害、または赤髪の少女の殺害だよ。

 ヨーグジャの隠者を二人殺しただけじゃあ本報酬は払えないよね~。

 でも面白かったからお心付けしてあげているんだよ?感謝してよね~」


 間接的にリヴェンとイリヤを殺害する為にヴェルファーレに依頼したのはユララであった。

 ヴェルファーレが依頼通りリヴェンかイリヤを殺せば、リヴェンがユララの眼鏡に適わなかっただけであったが、負けることは無いだろうと踏んでいた。


 つまり、失敗すると分かっていて依頼したのである。

 ヴェルファーレを嗾けた理由としては面白そうだったからであり、リヴェンの性格を見抜くためでもあった。


 自ら魔王姓を名乗る遺物人間を遥かに凌駕する男。

 平和で暇で仕方が無かった日常に現れた刺激物。

 そんな男と遊べるのであればユララは何にでも手を染める。

 善行だろうが、悪行だろうが関係ない。ユララ・マックス・ドゥ・ラインハルトにはそこら辺のボーダーラインは無い。


「事前情報と違うね。あいつ心臓刺しても潰してもしななかたよ」


「人智を超えてるって言ったじゃん」


「あれは人も魔族も超えてるね。御伽噺の魔王よ」


「さもありなん」


「なんね、その言葉」


「信長語だよ~。スヴェンダ大陸に行ったら使ってみて、笑われるから」


「あんたのその博識だけは信頼してるね。

 じゃあオレは暫く身を隠すね」


「ユララちゃん☆も何とかしてあげたいんだけどね~

 今回ばかりはユララちゃん☆は王国寄りだから助けてあげられないよ」


「別にあんたの助けはいらないね。

 他のやつらにも余計な世話するなていておくね」


「世話焼きは一人くらいだけど、一応通達はしておいてあげるよ。

 うん。今回はありがとう。また頼むね。ヴェル○」


 ユララ・マックス・ドゥ・ラインハルトのもう一つの顔は暗殺ギルド、ミュスティカの副ギルド長である。

 肩書としては王国騎士団特別隊隊長であり、遺物協会協会員であり、医者であり、暗殺ギルドの副ギルド長であり、アイドルと長い肩書を持つ。


 ヴェルファーレがユララの前から姿を消せば、テントの中にはユララ一人だけになってしまった。


 今回は近場にいたヴェルファーレだけであった。毒を使う接近戦の戦闘においては右に出る者はいないヴェルファーレ。それが手も足も出ずにやられたとなれば、かなりの戦闘力があるユララでも勝つ事は厳しいであろう。ならば全て搦め手で嫌がらせをして、心を摘んでいこう。それがユララの最も得意とする戦い方であった。


 さぁて今度は誰を嗾けようかな、と、戦いの余韻を楽しむかのように股間に手を当てながら企むのであった。


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