表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/202

48:ユララちゃん☆ワ~ルド

 ボコボコとサマティッシの顔が泡立つように膨らんでいく。

 顔、首、胴と全身がぶくぶくと膨らんで全長が俺の三倍にもなった。

 皮膚の表面は凸凹で顔は肉に覆われ、爽やかイケメンの見る影もない。

 腕と脚が成人男性の胴回りよりも太く、体長五メートルはある。巨人族の子供程の大きさ。


 巨人族。あの傲慢無知な偏屈で限界集落に住む魔族。

 身体の大きさだけで強さを判断し、他の魔族や人間を小者と言う蔑称で呼ぶ、差別主義者である。

 あいつの統治下では矢面に出てこなかったが、はぐれの巨人族が勇者と戦ったとの情報は耳にしていた。


「あーてすてす。

 聞こえているかな?ユララちゃん☆は君の事バッチリ見えているよ。

 見て聞こえていたら返事をしてほしいなぁ」


 ユララの声はサマティッシであったモノが付けていた腕輪から聞こえていた。


「聞こえている。待っているんじゃなかったの?」


「うーん。待つつもりだったんだけどねぇ、王様×がねぇ。こっちにも事情があるんだよね。

 だから貴方の為に特別にプレゼントがしたくて急ピッチで創ったんだよ。

 どうどう?喜んでもらえているかな?ユララちゃん☆からのプレゼントなんて滅多にないんだよ。 ファンの皆には内緒ね」


 怪物のような姿になったサマティッシが俺への対してのプレゼントか。

 この女の性格と特徴は最初に出会った時に感じた通りである。

 マッドサイエンティストでありサディスティック。加虐者であり支配者だ。

 自分の快楽だけを求める下種。


 人間の最も悪性な部分を沢山固めたような人間だ。


「気に入らないね。俺は命を弄ぶ人間が一番嫌いだ」


「そう・・・なんだ・・・」


 ガッカリと肩を落としたような声を出す。


「じゃあ気に入ってもらえる為に、ちゃんと遊んでもらうね」


 サマティッシの腕が降り上がり、俺を押しつぶす様に叩きつけた。

 左腕でそれを受け止めると、ユララは楽しそうに話し始めた。


「いやぁサマティッシ君△はねぇ、病気の妹さんの為にお金が必要だったの。

 それでぇ、治験兵としてユララちゃん☆の部隊に入ってくれたの。

 それでそれでぇ、ユララちゃん☆一応医者でもあるから、サマティッシ君△から貰ったお金で妹さんは治したの」


 受け止めた腕を握りつぶすサマティッシ。

 パキパキと肉団子のように俺の腕は丸められて潰される。

 単純な力は受け止められるけど、握力勝負では体格差で負けてしまうか。


「妹さんの病気はね、皮肉病なの。

 難病なんだよ~ユララちゃん☆は天っ才だからパパッと治しちゃったの」


「それでサマティッシに皮肉病を移したわけだ」


 皮肉病とは皮肉を言う訳ではなく、角質として排出される老廃物が肉として残り、皮膚の上に段々と肉がついていく病である。

 そうなれば身体機能に色々と支障が出てくる。

 その肉は熱した刃物で取り除くしか除去方法が無く、切り取る痛みで常人は精神に異常を及ぼす事が多い。


「皮肉病を知っているんだ。物知りだね。

 サマティッシ君△はね皮肉病を増大させる魔遺物と合体させたの。

 どうどう?物知りの魔王さん。

 ユララちゃん☆巨人族みたことないから、文献から参考にしたんだけどぉ、当時と同じかな?」

 

 巨人族であった者の魔遺物と皮肉病を掛け合わせて、ここまで肥大化してしまったのか。


 どうにかしてサマティッシを助けられないだろうか。

 彼のような好青年をこの女の毒牙にかかったままにしていては可愛そうだ。


 皮肉病と同じように肉を切り取ってみるか。


 復活させた腕で紅蓮刃を起動させてサマティッシの腕の肉を切り取ると、痛がる素振りも見せずに切り取っていない方の手で俺へと拳をぶつけてきた。

 またもや片腕で受け止めると、切り取った部分が復活している事に気付いた。


 どうやら従来の医療対処では意味が無いらしい。


「君の目的は魔族の復活かい?だとすれば役不足だよ」


「うふふ、ユララちゃん☆はぁ、魔族の復活なんてどーでもいいの。

 幸せそうな人間が絶望に浸ってくれたら、それだけでいいの。

 サマティッシ君△はただ貴方へのプレゼント。対等な戦いじゃなきゃ楽しくないでしょ?」


「俺は戦闘を好まないよ。好きなのは話し合いだ」


「ダ~ウト。魔族の本質は暴力。

 貴方は暴力の化身。

 ユララちゃん☆には解るよ。同族だもん。

 だからぁ、ほらぁ、早く早く早く、サマティッシ君△を壊しちゃってよ」


 ユララの声に反応してサマティッシの攻撃が激しくなる。

 右腕左腕の殴打、右足左足地団駄。それを両腕で耐え凌いでみせる。


「ねぇ、バンキッシュちゃんと戦った時みたいに激しいのをやってよぉ。

 ユララちゃん☆それを見る為に今回の作戦に参加して色々と根回しをしたんだよぉ。

 こんなの休日の昼間のようにつまらないよ」


「残念だけど、ハクザ・ウォーカーと戦った後だからね」


「あぁ。そう。

 そう言う事言っちゃうんだ。

 じゃあサマティッシ君に本気出してもらおっかな。

 解放せよ、進化せよ、我は汝の契約者なり、王魔顕現」


 ユララの詠唱でサマティッシの巨体の変化が始まる。

 右腕だけが肥大化し、今の胴体くらいの多きへと変わる。

 右腕を直撃して身体が潰れるのは不味いと判断して、後方へと避ける。

 避けられる程の速さの攻撃だったのが幸運であった。

 サマティッシの攻撃が命中した部分は肉が促しているのか木々や土は腐敗し、ドロドロと溶けていた。

 

「サマティッシ君△に与えた魔遺物は巨人族の進化魔遺物なの。

 これから彼の肥大化は巨人族の王にまで匹敵する程に巨大化するよ。

 サマティッシ君△を破壊するか、サマティッシ君△がこの森を破壊し尽くすか。

 大切なのは一回きり会っただけの青年の命?

 貴方の仲間の命?

 さぁ、選択の時間だよ。

 選んで」


感想、評価等々お待ちしております。生きる糧になります。

ブックマークして頂けると励みになります。

何卒宜しくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ