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再:転生魔王は勇者に敗北して、三百年後の世界で再起動します

「どうなった!オレは!」


 飛び起きるように覚醒したら、そこは光に包まれた暖かい世界であった。

 まず最初に思ったのは、帰ってきてしまったか、と落胆することだった。


「見てたよ見てたよ。惜しかったねー。そして見誤ったねー」


 横には先に帰ってきていたワタ=シィが小馬鹿にしながら笑っていた。


 リヴェン•ゾディアックが身を滅ぼしてまで、オレと相打ちになってまでも、ボォクの為に勝ちをもぎ取ろうとする信奉者だとは思ってもいなかった。

 見誤ったのはそこだけだ。それまでは順調だった。


 六百年前からシークォにリーチファルトの最後を見せて奴をこちら側につけた。

 勇者グランベルとシークォの両人で先にボォクの信仰を地に落とし、ダメ押しにボォクを信仰させないように魔遺物を作る理を作った。


 なのにも関わらず、オレは敗北した。ワタ=シィも準備をしていたのに、先に敗北していた。


「まっ、お主の負けだけではないがの」


「なぜお前がここにいる。ボォク」


 小馬鹿にするワタ=シィの後ろからボォクが顔を覗かせた。


「なぜ?ここが我等の帰る場所であろう?いて何が悪い?」


「お前はリヴェン•ゾディアックの駒だろう。ならば下界にいなければ勝敗が……まさか、お前…」


「ぬははは!余は誰ぞ?魔神ボォクぞ?余の信仰心が消えることはない!」


「ボォク。もうその話し方止めれば?気持ち悪いよ?」


「そう?箔が付いてそうで良さそうと思ったんだけどな。ワタ=シィがそう言うなら元に戻そうか」


 ボォクは元々の喋り方に戻った。

 そもそも下界した時の喋り方は魔神としてのキャラ作り。天界にいるボォクの考え方は神というよりも、人間に近しい。


「お前がここにいる理由。リヴェン•ゾディアックと挿げ変わったな」


「正解。流石はオーレだね。

 彼にはボクの変わりに魔神…魔王神になってもらった。

 互いに魔を司る神だし、勝ち残ったなら、彼に信仰が移るようにした。

 そしてゲームは終わり、彼は神となり、新たな理の礎となった。ちなみにボクはリヴェンが礎となった後に自害したよ。

 これで彼の思惑通り、ゲームに勝利し、魔族を復活させ、ボクの望みを叶えた。最後のは彼とっては瑣末なことかもしれないけどね」


「そうそうオーレの理はオーレとリヴェンの神の性質をモロに受けて壊れちゃったよ」


 オレが作った理だからリヴェンの性質が混ざり合ったオレの性質を受けて壊れたか。

 最後にイリヤが放つと理解していないとできないことだが……。


「新たな理は魔族の復活か。なんとも愚かなことだ。もう一度同じことが起こるまでよ」


 理で魔族を復活させたとしても、三百年前の焼き直しになるだけ。

 リヴェン•ゾディアックがそれを予想もできない男だとは思わないが、流石に目的の前では盲目になるのか。それも人間か。


「違うんだなぁ、これが。オーレ、リヴェン❤の事分かってないよ」


「リヴェンは魔族を復活させた。

 抜け殻であった人工魔族に理を破壊して放浪していた魂を入れてね」


「…神になったからできる技か」


「そうだよ。彼は一度自分で経験している。

 彼は最終決戦前にボクと初めて出会った時の記憶を思い出した。

 だからこそ、ギリギリのところでこの結末に至れた。オーレの思っている通り、転生させたのさ。 今度の理は天命を全うしなければ空いた身体に転生する理。まぁそんなことはオーレの作った理があってこそ為せる理だ。

 それに復活したからってハッピーエンドじゃない。種族間の問題、国土の問題、食糧問題。問題だらけさ」


「リーチファルト•ゾディアックの魂や四天王の魂はここにいるな。

 そうなると統率者もいなければ、乱世の再来だな」


「そう。そうなるはずだったよ。見てみなよ」


 下界を見下ろせる場所へ行くと、王都が見えた。

 そこでは多種多様な人種に魔族が笑顔で当たり前に暮らしていた。隠れた確執もあるようだが、戦闘をしている様子ではなかった。


「リヴェンは生き残った者達に、仲間に使命を与えた。

 それは再起動時から目的としていた魔族の復活、そして人間との共存。

 これを成し得たのは英雄イリヤ•グランベルと魔族の仲間がいたからこそだよ。

 最初は確かに苦難だったけど、転生体である魔族達はリヴェンの中で見ていたから、リヴェンの魔力の中にイリヤへの好意が入っていたために、基本的にイリヤに友好的だったのさ。

 好意までも操るなんてなんてヤツだ。人でなしだね」


 ボォクはくすくすと笑う。笑えない冗談だが、つまらなさ過ぎて鼻で笑ってしまう。


「今のリヴェン❤が下界でなんて言われてるか知ってる?転生魔王だよ。自分で名乗った魔王神じゃないの、世知辛いよね!」


 ワタ=シィも腹を抱えて涙目で大笑いする。


 ここはつまらん。闘争すらない世界。

 普遍的なことは一切なく。日々目まぐるしく変わる。


 下に見える者どもを見つめる。


 今の下界も日々目まぐるしく変わるつまらない世界であった。


「あぁ、次のゲームが楽しみだね」


「そうだな」


「まぁ次のゲームはリヴェンが礎の役目を終えてからだけどね」


 ボォクの言葉が信じられずに訊き返してしまう。


「……蘇るのか?」


「彼は最終決戦の未来が確定した時に保険で三人に自分の魔力を分け与えてから去ったんだよ。その三人が彼に同じように分け与えれば……ね。さてさて、どうなるか見物だね」


 オレとボォクとワタ=シィはまた退屈な天界での一時を過ごすのであった。



   _________________________________________________________



 歩く。木々から少し伸びた枝をかき分け、踏み鳴らされ整備された道を革靴で踏みしめる。

 途中で知り合いの魔族に声をかけられて手を振って笑顔で応対する。

 ゆっくりと日の光を浴びながら歩んでいく。


 森にある泉の畔。


 そこには元々あった洞窟をベースにして丁寧に作られた祠があった。

 目的地である祠の中へと入ると自動で電気が付いた。足元に気をつけながら直線上に歩いて祠の奥にある開けた空間へと辿り着く。

 

 祠のどんづまりには何も無かった。ただ広い空間があるだけ。


 石で作られた長椅子に腰を落として、何もない空間をただ見つめる。


 何もないのに見ているだけで悲壮感が刺激されて涙が出そうになる。何もないのに、確かにそこには何がいるような妙な感じだった。


 老女はいつものように額に握りこぶしを置いて祈りを捧げた。


 すると、ようやく祈りが通じたのか何もない空間に亀裂が入った。

 しわがれた頬に熱く、次第に冷たくなる水が流れた。みっともなく鼻水を啜った。無作法にそれらを服で拭ってから、目を閉じて大きく深呼吸した。



  _________________________________________________________

 


  

 声が聞こえる。


「私………最後にお返し………」


 ノイズがかかって何を言っているのかは分からない。


 潤った何かが滲みたような気がした。


 声は聞こえなくなった。


 今度は違う声だった。


「ここに……皆さんいなく……イリヤさ……私………」


 これもまた聞き取り辛かった。


 暖かい何かに触れらて包まれた気がした。


 また声は聞こえなくなった。


 気配があった。


 いつも決まった日の決まった時間にやってきて、ずっと無言で、暫くすると消える気配。


 その気配は懐かしく、心地良く。ずっとここにいたいと思ってしまう。


 だけど今日はその気配が濃く、更にははっきりと声が聞えた。


「起きてください。いつまで待たせるんですか?」


 寝ぼけた思考が稼働する。


 うるさいな。今起きるよ。


 瞼を開けて、ようやく俺は自分の意思で再起動した。


「おはようございます。また会えましたね。転生魔王さん」


 歳に見合わない子供のような無邪気な笑顔は、懐かしくて、やはり心地良く。自然と笑みを溢してしまう。


「初対面だよ……なんてね。おはよう、俺の大切な勇者さん」



 おわり

約一年間の末、完結致しました。

綺麗に終わった・・・のかな?自分自身も抜け忘れている部分があるかもしれません……もしもあればご愛嬌ということでお願いします。直せたら直します。

幼稚なストーリー構成に稚拙な文章でしたが、少しでも楽しい時間になっていたら幸いです。


評価にブックマークありがとうございました!

生きる糧とやる気になって続けられました!

お手間でしょうが、感想もお待ちしております!

それではまた会いましょう。


続きです→ https://ncode.syosetu.com/n4840gz/

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