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194:最低最悪の魔王

「これで、お前とオレの一対一だな。

 見ろ、お前が守りたかった魔族と、元々の種族である人間の死骸だらけだ。

 最高だな。フィナーレに相応しい舞台だな」


 白龍が地に降りて、オーレが胡座をかきながら、目の前でこと切れたシークォと、さっきまでそこにいたリーチファルトを憶っていた俺に語りかけた。


 ゲーム。


 信仰心をかけたゲームは最終章、最後の段落に入った。

 ワタ=シィという介添神は受肉した肉体を失い、駒である織田信長は死んだ。

 そして駒ではなく、恐らく介添神だったシークォも死んだ。


 残るは駒であろうオーレと介添神である俺、そして置いてきた駒であるボォク。


「ははっ、あーっはっはっはっは!」


 俺は信長と身を削りあっていた時よりも高笑いする。


「支えを失って壊れたか…哀れなものだな意志を持った生物というやつは。今、決着をつけてやる」


 オーレは白龍から降りて、俺を殺せる間合いに入った。

 そして、ようやく自分が立たされている状況に気がついた。


 周りには魔法使いになり、同志を葬られたハクザ率いる魔術教会。

 王都を、故郷を破壊されて怒りのぶつけ場所を探しているキュレイズ率いる王国軍。

 目の前で建国者と、世継ぎが殺され、致命傷にさせられて、団結力が高まった信定率いる日出軍。 頭と重鎮を失ったが、若き筆頭が後を継ぎ、より強力になったギルド商会。

 天畔教は捕らえられて、ルドウィン教は行く末を見守っていた。


「ふーっ、あー心の底から笑った。

 こんなに笑ったのは久しぶりだよ。

 オーレ、君は一対一だと言ったね。君は、まだゲームをしているつもりかい?」


「あぁ、オレは続けているつもりだ。そして俺の天下となる」


「ゲームね。

 だから神様は嫌いだよ。人様の事を見下している。信仰に値しない。

 人間の人生はゲームなんかじゃない。

 人生は、人生だ。

 なんの言葉にも置き換えれない。お前はそこを理解していない。理解できない。だからこそ、これが俺の最後の一手だ」


 全員の敵となる。

 人類の、世界の敵となった。この世で最悪の存在になってみせた。


「一対一対世界だよ。

 さぁ、怨敵はここにいる。終わらせよう!この醜悪なゲームを!」


 全員の敵意を受け入れる。

 俺とオーレは世界の怒りの受け皿。

 この理不尽なゲームに巻き込まれた人々の感情の受け皿となる。

 これが最後の盤面へ突き刺す一手。

 これで終わり。


「オレにはスキルがある。そのスキルが発動すれば、こんな状況なんてことはない」


「不幸スキル」


「な…に……」


「耳が遠いのはおいておこう。

 俺はスキルを蓄えてから転生転移の経緯を聞くためにハジメと会っている。

 その時点ではハジメがどんなスキルを持っているかは分からなかったが、お前がハジメを乗っ取ってから、記憶が頭に流れ込んできた。

 丁度未来予見と重なってたから埋もれちゃうとこだったけど、見逃しはしなかった。

 自分に不幸を引きつけ、それを相手も巻き込む。いいスキルだ。

 だけども、君は一人同じようなスキルを持っている人間を忘れていないかい?」


「イリヤ•グラベル•メラディシアンだろう

 。確かに、相殺はできるだろうな、だが俺のスキルは幸運よりも上に行った。誰も俺を止められない」


「あ、そう」


 不幸スキルが進化しているのは、ちょっと予想外だった。

 だからここまでの人数と、勇者一行並みに力がある人物たちに囲まれても余裕だったのか。


 まぁ、でも。


「オレの腕など掴んで何をするつもりだ?お前のスキルはもう無いだろう」


 どうとでもなると油断しているオーレの腕を掴んで、最後のスキルを使用する。


「あげるよ、魔力」


「そんなことしても無意味だ……待て、あげる?だと?」


「オーレ。最後に教えてあげるよ。悪は最後は負けるんだよ。それが普通で、普遍的なストーリーだ」


「っ!貴様!」


 オーレは俺が何をするのかを気がついた。だが、もう遅い。


 俺は信長の心臓を食べて、信長のスキルを所持し、リーチファルトを間接的に殺した。

 だからこそできる。魔力吸収ではなく、魔力放出。


 リーチファルトの分け与える力。


 別の神の力を別の神へと分け与える。


 それが神を殺す方法。


 そして。


「放せ!放せええええええ!」


「グランべ!」


 高らかに少女の声が響いた。


 待っていた。ジャストタイミングだ。

 流石は俺が見込んだ勇者だ。そして俺を起動してくれた最高の友だ。


 駄目押しにもう一つ、オーレ自身が作り出した力を放ってもらう。

 オーレの力が増幅する一方で、俺の力も受け渡され、強大な崩壊が始まる。


「ライザー!!!!!!!」


 気高き光が眼前へと迫り来る。

 全ての魔力をオーレに流した俺は最後の力でオーレを押さえ込んで、光の奥で涙を流す少女にいつものように笑いかけてやった。


 その光はオーレと俺を消し去った。

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