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190:魔法使い

「ははは、こんなの、こんな事になるの想像していた?」


「オレはこうなる為に、あいつらをこの世界には君臨させない為にこの場を作った。想定通りだ」


「だよね、だよね、だーよーねー。私も想定通り。

 まだ私には牙を向ける奴はいないし、オーレも力を温存している。

 それでいいし、それが普通。下の地獄は異常なんかじゃない。あれがこの世界本来の普遍。闘争、戦争、抗争。生き物は戦う事が生来の生き様。だから、だから、戦い抜いた者が美しい!」


「そうだな。それが欠けてしまった大衆認知だ。倫理。道徳。習ったのではく倣っているだけだ。人間よ倣うな、習え。そして並べ、列べ、行軍しろ。己が意志で戦え。

 そら、見ろシークォ、また歴史に消えた普遍が復活したぞ」


「あはは、もう私以外喰べてんじゃないの?」




 

「ハクザ師範!魔力が持ちません!」


「魔力の無いものはバイギンドルと合流なさい!ラリリン!いますか!」


「います!生きてます!何か!」


「魔力が尽きそうなものの護衛を頼みます。貴女が一番適任です!」


「今、認められても嬉しくないですぅ!ハクザ先輩は大丈夫なんですか!?」


「手こずりますが、私てなければ、これを止められません」


 亡者といっても生前と変わらぬシンクロウの剣捌きに場慣れしたスキルの使い方に師範に及ぶ魔術の才能。

 亡者の波の対処を対子ダブルに任せているせいでハクザとしての戦力は半減。


 魔術師如きでは辿り着く事さえも叶わない。

 ハクザはリヴェンが言わんとしたかった言葉を痛感する。


 ハクザがシンクロウに致命的な一撃を与える為に攻撃をし、攻撃をいなしながら模索していた。


 それは一瞬の出来事だった。


 その一瞬で魔術教会全体は危機に陥った。


「皆さん、こっちです。こちらです。……あれは?えっ?」


 紫煙魔術でバイギンドルの方へと向かっていたペコリソの身体の半分が消えた。


 ペコリソはバイギンドルがいた上空に何者かが現れたのを確認した。

 確認した瞬間に身体が半分消えていた。紫煙魔術を捕らえる魔術はない。あるのは魔法。

 そう理解した時には目が上を向いて、意識は無くなった。


「ラリリンちゃん!」


 キヤナが落ちて来るラリリンを受け止める。

 上空にいる者を中心として魔力球のようなものが発生し、残存していた魔術教会員の半分を消炭にしてしまった。


 魔法。

 しかも尋常じゃないほどに洗礼され、解法された魔法。あんなものが、あんな者がいてたまるか。ラリリンの亡骸を抱えながらキヤナは震える。


 ラリリンの目蓋を閉じてから、ラリリンの身体に残った魔力を吸収する。


 いたのだ。


 魔法使いはいたのだ。


 本で読んだ知識ではなく、実在した。

 あれからハクザを師として稽古をつけてもらい、自分の才能に気がつかせてもらった。

 ハクザは今、手が離せない。

 現れた亡者の魔法使い。魔王軍四天王の魔法使いベリオルは自分しか対処できない。


 キヤナが魔力を練って型を構えると、ベリオルの眼鏡に適った。

 相対する敵と認識された。それは不幸といってもいい。


 魔術を発動したが、師範二人の魔力を持ってもベリオルの魔法には到底及ばない。

 一対一ではキヤナが勝てる要素は万に一つもない。


「アウトバーン!」


 下方を爆発させて亡者の波から抜け出して分身体の方を向わせるも、確実に間に合わない。


 不死鬼と恐れられた魔法使い。

 祖母と相討ちになった魔法使いが、復活し、我が弟子達を殺し、愛弟子の命を奪おうとしている。


 これが人間か?


 これが自分が求めた人間なのか?

 足掻くだけで何も成すことが出来ないのが人間なのか?


 否!


 人間とは魔術を極め、極限に至れる生き物である。

 諦念なぞ、今この場では必要ない。

 間に合わないならば、間に合わせる。

 勝てないのならば勝てば良い。


 人間は破綻した生き物だ。


 私がそう決めた。


 私がそう極めた。


 分身体の爆発の中から更に爆発が発生し、光の尾を作り上げて超高速でベリオルとキヤナの間へと移動する。


 ベリオルが発動した魔法を爆破で受け止める。


 魔法は魔法でしか対処できない。


 ハクザ•ウォーカーが魔法使いに至った瞬間である。


「我が祖母の心残し、ベリオル!貴様を屠る!」


「魔法使い。お前は私に値する。力が封印された私と同等である」


 ベリオルに意思はない。

 喋っているのは同じ魔力を持つハクザのことをライトエヴァ•グリスティンが目の前にいると勘違いしているだけ。三百年前の戦いの投影。


「祖母は立派だった。

 祖母は最も人間であった。

 だからこそ私は人間である!人が悪魔を!亡者を祓う!その為の魔法だ!」


 魔法使いに至ったことで新たに魔術の境地を体得したハクザは対子の上の魔術、四暗刻フォースを発動する。

 一人だけの分身を作って魔術を使うのが限界であったが、本体を抜いて四人の分身体を作り上げる。これはシークォのスキルのように力が分散する訳ではなく、全員が魔法を使え、精度に欠けない存在である。

 であるからして、三体でベリオルと対峙して、本体は続けてシンクロウと、亡者の進行を止めていた。


 ベリオルのマントが翻った。

 攻撃の合図を見逃さなかったハクザは構える。

 速度ではベリオルの方が上、攻撃する場合は後手に回る。それでいい。それが崩してこなかった自分の闘い方。カウンター型の魔術。


 魔法で魔法を打ち消して、肉弾戦に持ち込む。

 魔術師の基本は魔術でなく体術。身体を作ってから魔術を作るのだ。


 ベリオルの右腕のなぎ払いは、いなせる威力ではなかった。

 あのリヴェン並みの怪力。亡者共はリヴェンを通して魔鬼の特性も付与されているのであった。


 なぎ払われる前に腕を五体を使って掴む。


 掴んだとしても、ハクザの重さを物ともせずに、手首を返して伸びた爪が空中に文字を描く。


「!」


 ベリオルの魔法が発動する前に、もう一人のハクザが魔力を抑えてベリオルの頭を両手で抑える。


 爆烈魔法。


 ハクザの掌に込められた爆烈魔法の威力は街一つを軽く消し去れる威力。過去にベリオルが解き放った魔法と同じ威力である。


 それを一点だけに集中させ、周りに被害を被らないように改善した。

 独特の才能。天武の才能がなし得る技。


 ハクザは魔法使いがなんなのかを理解していた。

 魔法使いとは審判者だ。法を作り、法を行使し、法に殉ずる。

 自分の法が正しくあり、正しくあることが法である。


 誰も裁けないのならば、自分が裁けばいい。


 究極の自己肯定。


「国士無双」


 十三色の光が空中に出来上がり、遅れて爆発音と、余波が一部を除いて辺り一帯を支配した。

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